第23話 温かな掌、静かな感謝
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「セレフィーナ様のお肌、本当にお綺麗ですね」
わたくしは、ベッドにうつ伏せになりながら、ふわりと溶けるような感覚に包まれていた。
――最初に服を脱いで、あの薄いぺらぺらとした紙の下着一枚だけになるように言われたときは、一体どうなることかと思いましたけれど……今はもう、どうでもよろしくてよ。
ルーナさんの手が背に触れるたび、ほどけていく。指先が肩甲骨のきわにやわらかく圧を置き、なぞる。固まっていた筋が、音もなく解けていく。
「まずは、しっかりほぐしていきましょうね。圧は痛くありませんか?」
「ええ、とても心地よいですわ」
温かな布と、ゆるやかなリズム。わたくしの呼吸に合わせて、押す、待つ、ほどく。胸の奥の小さな結び目が、ひとつずつ解けていく。
「……ふぅ……」
思わず漏れた溜息。それはただの息ではなく、心の奥底から出てきた解放感そのものだった。背中にかけられる絶妙な圧力と、彼女の手の温もりに、身体中が反応する。まるで、わたくしの身体が彼女の手を待っていたかのように感じられた。
ルーナさんはわたくしの背中を丁寧に解しながら、時折柔らかな声で語りかけてくる。それはまるで、身体だけでなく、わたくしの心にも浸透していくような響きだ。
その声は、まるで魔法の呪文のように心地よく、耳に心地よく溶け込んでいく。そして、その言葉通り、わたくしの身体は少しずつ、彼女の手によって解かれていく。背中に乗せられた手が、じんわりと太ももの裏へと移動するたびに、わたくしの身体はそれに逆らうことなく、素直に反応していく。力が入らない。
いや、力を入れる必要なんてどこにもない。むしろ、これまで気づかなかった自分の緊張が、彼女の手によって解かれていくのが心地良い。
太ももの裏に触れられた瞬間、微かな緊張があったものの、それもすぐに溶けて消えてしまう。ルーナさんの指が紙下着越しにそっと押し込まれ、少しずつ動いていくたびに、わたくしの意識はさらに遠くへと漂っていく。背中から太ももにかけて、体全体が溶けていくかのように軽くなっていくのだ。
「結構凝っていらっしゃいますね。これは解し甲斐がありそうです」
ルーナさんが再び声をかけてくる。その声も、彼女の手の動きと同じくらいに心地よく、わたくしの全身を包み込んでいく。わたくしは答えようとするけれど、その必要もない。ただ静かに、深く息を吐き出し、さらなる心地よさに身を任せた。
――そう、気持ち良い。心も、体も、すべてがこの瞬間に満たされている。
ルーナさんの手は再び背中へと戻り、絶妙なリズムでわたくしをほぐし続けている。彼女の指先は魔法のようで、どんな疲れも、不安も、すべて消し去ってしまうかのようだ。まるでこのベッドに溶け込んでいくように、わたくしの体は軽く、そして柔らかくなっていく。背中から、太ももから、全身がほぐれ、柔らかく、幸せな感覚が広がっていく。
わたくしは、完全にリラックスしていた。
「……とても、心地よい、ですわ――」
「よかった。……セレフィーナ様、南部を安全な場所にしてくださって、本当にありがとうございます。わたしたちのような種族が安心して暮らせる土地は、そう多くありませんから」
言葉はそっと添えるだけで、手は止まらない。背骨の脇を流れる温かな掌に、胸の奥の小さなこわばりまでほどけていく。
「勇者様がご勝利なさってから、陸の上の魔族たちは特に大変でした。居場所を失ったり、疑いの目で見られたり……。でも南部が落ち着いて、活気が戻って、みんなが笑っていて。『まるで魔王様がいたころみたいだ』って」
「身に余るお言葉ですわ。多くの方々が力を尽くしてくださいましたもの」
わたくしが答えると、猫の簪がかすかに触れ合う音がして、ルーナさんが小さく笑った。
ここまで心も体もほぐされていくと、もう頭の中は空っぽで、何も考えられない。すべての思考は、ルーナさんの手の動きに溶け込んでいき、心地よさだけが体全体に広がっている。さっきまで服を脱いで、あの薄い紙の下着一枚になるように言われた時は、正直どうなることかと少し身構えたけれど、今ではその羞恥心すらも、この柔らかな空間に吸い込まれて消えた。
彼女の指が肩甲骨を優しく押し流すたびに、疲労が一つ一つ消えていくのがわかる。その手が温かく、わたくしの体は抵抗することなく、その手にすべてを委ねている。
「随分とほぐれてきましたね。どうですか? からだがポカポカしてきませんか?」
「はぃ……すごく、いいです……わ」
普段なら、こんなふわふわした返事をする自分が信じられない。でも今は、そんなこともどうでもいい。ただこの気持ちよさに浸りたい。ルーナさんの手が、さらに深くわたくしの体に触れていくたびに、わたくしはますますその手に溶け込んでいく。
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あとがき。
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次話は明日19:10頃に投稿致します。ぜひご覧下さい。
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