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「リリー、婚約式のドレスの件は進んでいる?母上とヴィヴィアンがやたらと張り切ってると報告があってね、リリーの意見はちゃんと通っている?」


 アークとランチを食べながら、婚約式について話していると、ドレスに話が及んだ。

 婚約式では公爵家の屋敷内で、夜会のように招待客を招き、婚約を発表する。ドレスは3回着替える予定だが、ほとんど公爵夫人ダイアナとヴィヴィアンに任せっきりだった。


 ーーー予算とか、仕来たりとか考えてたら、何を選べば良いか分からなくて。結局、ダイアナ様とヴィーに任せっきりになっちゃったんだよね…


「ーーえぇーっと、アークさん、たくさん生地見本とか、ジュエリーとかあって、どれを選べば正解かよく分からなくてですね…」


 リリアナが分かりやすくしどろもどろで言い訳を始めると、アークは予想通りのリリアナの回答に頭が痛くなり始めた。


「リリー?これは俺達の婚約式であって、母上とヴィヴィアンの物ではないはずだ。主役が遠慮して意見を言わなくてどうする?」


「…申し訳ありません。もうちょっと仕来たりとか、デザインとか、タブーとかももっと勉強して…皆に迷惑かけないようにーー」


 アークは苛立ちを隠せずリリアナにぶつけると、リリアナはアークの怒りに縮こまってしまった。


「ーーはぁ…。ごめん。リリーに最初からもっと、もう少し気を配るべきだった。余計なことは気にしないで、リリーの好きなものを選んで良いんだ。間違ってれば、俺がとめるし。皆リリーを責めたりしない」


「でも、それなら最初からダイアナ様達に選んでもらった方が、やっぱり手間が省けるんじゃ…?きっと、私が選ぶよりもずっと、公爵家に相応しいものになるはずよ」


「俺はリリーとの婚約式を母上とヴィヴィアンの好みで作り上げたくはないんだよ。リリーの好きなデザインで、リリーが幸せを感じられるようなドレスや式にしたい。公爵家の仕来たりや手間なんかどうでもいいから」


 アークがリリアナにそう言い聞かせると、渋々ながらもリリアナは頷いた。


「では、もう一度ドレスを選ぼう。俺も初めだけ参加して、後はリリーに任せっきりになってしまっていたしね。今度は最後まで2人で選んでいこう」


「え?でも、アーク忙しいでしょ?私は大丈夫だからーー」


「リリーの大丈夫は当てにならないからね。また、母上の言いなりになってしまうよ」


 リリアナは自分の意志が弱いために、アークに時間を割かせることを嫌がったが、アークは受け入れなかった。


「リリーはもう少し、自分に自信を持ってくれたら良いんだけど?ーー婚約式の他に、屋敷に来て困ったことはないか?」


「皆良くしてくれるし、困ったことなんてないわ。ーー自由に外出できないくらいかしら?」


 リリアナが公爵家の屋敷に来てから、1歩も外へ出ていないことを思いだし、思い切ってアークに不満をぶつけてみた。


「外出かぁーーそうだね。メイルズ男爵領からこっちに来て、ずっと公爵家の屋敷にリリーを縛っているし、気晴らしに帝都をデートするのも良いかもしれない。少し日にちを調整するから、日程が決まったら伝える」


「ほんとに?外出できるの?!ほんとにほんと?!」


 リリアナは無理を承知で、外出したいと我が儘を言ってみたものの、許可が下りるとは思っていなかった。幼少期にアークと屋敷を抜け出した以来の帝都の散歩に、思わず嬉しすぎて舞い上がってしまう。


「あぁ、だから、今度仕立て屋を屋敷に呼んだら、婚約式のドレスの他に外出用のドレスも一緒に選ぼう」


 結局、更にドレスを買わせる事になってしまったが、リリアナは外出の期待に胸が躍り、そこまで気が回らなかった。

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