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「兄上、リリー姉さまのご友人達の前です。少し落ち着いてください」


 パトリックの声にリリアナがはっとすると、ばらばらと渦巻いていたテントの周りの風が止んだ。テントの端で控えていた侍女達は顔色が悪くなっており、震えている者までいる。

 キャロライン達も何が起きたのか分からないまま、ガタガタと壊れそうなテントの中で、顔を青ざめさせていた。


 どうやら、アークの不機嫌を風が汲み取り少し暴れてしまったようだ。パトリックとリリアナはアークの風の精霊によるものだと、経験により耐性があるが他の者は余程怖かったらしい。


「とりあえず、屋敷の中に移動しましょう。キャロライン達は晩餐も滞在も出来る?学園の準備の話とかまだし足りないし」


「そうね。ご迷惑でなければお世話になるわ」


 リリアナが提案すると、キャロラインが恐怖から回復したらしく、滞在の旨を伝えた。アンナとマリアも、こくこくと無言で頷いている。


 ーーー良かった…ここで怖いから帰るだなんて言われたら悲しすぎる


 アークの精霊魔法は怖いが公爵家のお誘いも断りにくいのもあるかもしれない。


 ーーーおもてなしを張り切って、今の状況を挽回しなくっちゃ!


 友人がいなくなっては堪らないと、リリアナは心配になった。


 ーーーーーー


 ダイニングルームには、リーフェンシュタール公爵家のアーク、パトリック、ヴィヴィアンと婚約者のリリアナ、リリアナの友人達3人が揃った。

 せっかくの晩餐なので、ドレスを着替える友人達にリリアナの衣装ルームから各々にドレスを選んでもらって着替えている。

 テーブルには、公爵家に長年仕えるシェフの自慢の料理が並んでいる。来客がいると言うことから今日は一段と豪華に感じるメニューだ。


「皆様のお口に合うと良いのたが。飲み物も好みがあらば用意しよう」


 アークが友人達に問いかけると、アンナとマリアは喜んで好みの果実水について伝えている。

 どうやら、晩餐の前までに気分が持ち直してくれたようで、リリアナはほっとした。


「キャロラインも何が好みがあれば教えてね」


「料理がどれも美味しくて。素晴らしいわーーーリリアナは毎日こんなに美味しいものを頂いているのね」


 リリアナが静かなキャロラインを気にかけて声をかけると、キャロラインは少し笑ってこたえた。


「そうね、メイルズ男爵家ならば、毎日がお祝いのような感じよ」


「リリーお姉さまったら、ご冗談をーーーそろそろ、デザートのケーキですが、皆様お好きなものをいくつか選んでお召し上がりくださいませ」


 リリアナが公爵家の晩餐について真面目に答えたのに、ヴィヴィアンは笑って軽く流した。


 友人達は皆、お腹が一杯のようだったが、ヴィヴィアンのデザートのケーキという言葉を聞いてアンナとマリアは目が輝きだした。


「リーフェンシュタール公爵家のデザートのケーキだなんて、ものすごく楽しみ!」


「さっきまでお腹が一杯だったのに、いくつでも食べれそう」


 アンナとマリアが喜んでケーキが乗ったワゴンを眺めると、キャロラインが友人2人の浮かれっぷりに苦笑した。


「キャロライン嬢も、お気に召す物があればいかがですか?」


 パトリックがケーキを選ばないキャロラインに声をかけると、お腹が一杯で食べれそうにないと言う。


「では、明日の朝にもデザートを多めにご用意しましょう」


 パトリックがキャロラインに気を使いそう言うと、キャロラインは嬉しそうに感謝を伝える。


 ーーー2人って本当に良い雰囲気なんだけどな…


 残念ながらキャロラインには婚約者がいる、貴族って本当に窮屈だとリリアナが感じていると、横の席から手が延びてきた。アークがリリアナの手を握り、冷えてはいないか確認する。


「リリー?どうかしたのか?好きなケーキに手をつけないなんて」


 どうやらケーキを食べずに友人達を眺めているリリアナに、アークが食欲がないと心配したらしい。


 ーーー晩餐もこんなに食べたのに、ケーキなんて食べきれないよ


 日頃から少食気味のリリアナは、いつもより量の多い晩餐にお腹が一杯だとアークに伝えると、アークは執事のセバスチャンにリリアナの好きな紅茶を用意するように伝えた。


「リリー、疲れてはいないか?いつもより静かだが」


 今日は友人達を迎えた晩餐だったため、リリアナはその様子に気を配っていたつもりだったのだが、アークには疲れていたように見えたらしい。リリアナの顔を心配そうに見つめている。


「大丈夫よ。友達と晩餐なんてとても暫くぶりだから、楽しくって」


「そう?でも無理は禁物だからね。リリーがお茶を飲み終わったら、一緒に部屋に戻ろう」


 アークの心配性が発生したとリリアナがリーフェンシュタールしてると、周りから生暖かい視線を感じる。


「ユーリお兄様ったら、お客様がいらっしゃるのにリリーお姉さまばかり構うのね」


 ヴィヴィアンが笑ってそう言うと、友人達も興味深々でこちらを見ている。


「大切な愛しい婚約者に気を配るのは当たり前だろう?」


 ーーーうわ!アーク!!


 何を当然のことをーーという風にアークが答えたので、リリアナはぼん!と音が鳴るくらい顔が真っ赤になる。


「ちょ!アーク!恥ずかしいから止めてよ…」


 友人達がくすくす笑いながらこちらを眺めているので、きっと後日酷く揶揄されるなとリリアナは恥ずかしくなった。


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