44
「兄上からもうひとつ伝言、ヴィヴィアンは自分のドレスも作って良いってさ」
「本当?!素敵!!リリーお姉さまと一緒にドレスを選べるなんて、しばらくぶりじゃない?とても楽しみだわ!」
パトリックから自身のドレスも作って貰えると聞いたヴィヴィアンは、最近のドレスの流行はどうだったかしらと、侍女に確認し始めた。
「ヴィヴィアンは、リリー姉さまが薬草取りに1人で行かせなかった褒美だって。だからって、張り切りすぎないこと。あくまでメインはリリー姉さまだからね!」
パトリックは、はしゃぐヴィヴィアンを見て呆れて忠告するが、ヴィヴィアンは軽く聞き流している。
「それと明日は兄上もドレスの打ち合わせに同席するって。最高のドレスでリリー姉さまを着飾りたいんだってさ」
本当にリリー姉さまに夢中だよねーーとリリアナに笑いながら伝えた。リリアナはダイアナのいる前で、何て事を言うんだ!ーーと恥ずかしくなるが、ダイアナは気にも止めていない。
「そうね!婚約式に間に合うように進めなくては!次期公爵夫人に最高級ドレスの準備をいたしましょう!!」
ダイアナもパトリックの言葉で復活したらしい。妙に気合いを入れて、ドレスはどういったデザインにするか、早くもヴィヴィアンと話し合いだした。
ーーー最高級って。そんなに頑張んなくても良いのに…
自己評価の低いリリアナは、常日頃からドレスにこだわりをもっていなかった。明日はドレスの仕立てに頭が痛くなりそうだと、リリアナは早くも疲れ始めてしまった。
ーーーーーー
「今日は母上とヴィヴィアンと温室でお茶をしていたんだって?」
夜になり、執務室から戻ったアークがリリアナの部屋を訪ねてきた。昨日の予定にはない外出と魔獣事件の対応のために忙しく、アークは夕食もダイニングルームに来ていなかった。
ちなみに、アークの父であるリーフェンシュタール公爵も、今日も登城し夜遅くまで帰宅できないらしく夕食は不在だった。
「えぇ。でも、私の話し方が至らなくてダイアナ様を怒らせてしまったの。明日は、ダイアナ様の意を汲んで上手く話せるかな…」
どうもダイアナ様を前にすると緊張するのよねーーと、リリアナがアークに溢すと、パトリックから昼間の様子を聞いていたアークはため息をつきたくなった。
「リリーは気にしないでそのままで。リーフェンシュタール公爵家にゆっくりと慣れてくれれば良いから。母上はせっかちだからね、公爵夫人という立場もあるから口調もきつい。リリーが気に病むなら、俺から母上に一言言っておこうか?」
ーーーっ!それはまずい!
そんなことをしては、旦那に義母の悪口をこぼした悪妻みたいではないかとリリアナは焦った。
「大丈夫!きっと慣れるしーーほら、幼い時はリーフェンシュタール家に遊びにくるとダイアナ様はいつも忙しくて不在だったでしょ?だから、ちょっと距離が掴めなくて。そのうち慣れると思うから!」
リリアナがどうにかアークを止めようと必死になって説明すると、アークは困ったような顔になった。
「リリーは遠慮し過ぎ。これからリーフェンシュタール家はリリーの家族になる。俺はリリーが思った事をどんどん言っても構わないよ」
ーーー私は構うんです!!
男爵令嬢が公爵家の皆さんに強く出るなど、以ての外だということに何故気がついてくれないのか、リリアナは困ってしまう。
「とにかく、明日は上手くするから大丈夫。アークも忙しかったら、同席しなくても良いんだからね」
「急ぎの仕事は今日中に処理したから、明日はドレスの打ち合わせに参加させてもらうよ。リリーのドレスを決めて、俺の服も決めなくてはいけないこら」
「そう?でも、あんまり高い服とか勧めないでね!ダイアナ様とヴィーがドレスの準備に張りきっていて金額が物凄いことになりそうで、怖いの…」
リリアナが今日の温室での2人の様子を簡単に説明すると、アークは笑って、最高級でももちろん良いよーー一生に1度の婚約式だからねーーーと言うので、まるで浪費のストッパーにならないとリリアナは頭が痛くなった。
「さぁ、明日は忙しくなるから、もうそろそろ寝ようか?リリーはここで寝る?それとも俺の部屋で寝る?俺としてはどちらでも良いんだけど?」
明日の仕立て屋の打ち合わせの事だけでも思い出すだけで疲れるのに、アークのこのからかいにはリリアナは構っていられない。
「こっちで1人で寝ます!!」
リリアナははっきり宣言すると、ベッドに向かい布団を巻き付けるようにして、アークから防御の姿勢をとった。
「リリーは本当に面白いよ…お休み、何かあれば直ぐに来て良いからね」
「行かないし、大丈夫だから!!お休みなさい!」
リリアナがそう叫ぶと、アークは少し笑って私室へと戻っていった。




