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「と、とりあえず、部屋の紹介は後にして。少し休んでも良いかしら?」
このまま、サラの説明を聞いていれば精神的にガリガリ消耗されると感じたリリアナは、早く部屋で1人になって落ち着きたかった。
「ーそうでございますね。私としたことが、リリアナ様をこのお部屋にお迎えすることが出来て、舞い上がってしまいました…リリアナ様のお召し物も、いささか個性的で…汚れていらっしゃいますし、湯浴みをされて、新しいお召し物に着替えましょう」
ーーーいや、1人になりたいんだけど…
リリアナは薬草採りに出掛けた際、侍女から借りた服を着ており、その上、魔獣の襲撃を受けて泥や何やらで汚れていた。お世辞にも、筆頭公爵家の婚約者としてふさわしい装いとは言えなく、サラがリリアナに着替えをまず進めるのもしょうがない。
「ーー湯浴みは1人でしたいの。着替えを出しておいて貰えるかしら?」
何とかして1人の時間を確保したいリリアナは、サラに着替えの準備をお願いする。すると、サラは今回だけならばと、1人で湯浴みと着替えをすることを了承してくれた。
「ーーあちらの扉が、バスルームへ繋がっております。すでに、湯浴みができる準備は整っておりますのでお使いくださいーーー湯浴み後は、お1人でお着替えができそうな簡易ドレスをご用意いたしますね。もしもお着替えが難しいようであればお呼びくださいませ」
ーーー簡易ドレスが、男爵家の盛装くらいの品だったりして
ーーーーーー
バスルームをあけると、どこかのデザイナーズホテルの大浴場かと勘違いするほどお洒落で、ゆったりとした空間が広がっていた。また、浴場にはかすかに落ち着く花の香りも広がっており、高貴なリラクゼーション空間を演出していた。
ーーーメイルズ男爵領内の温泉だってここまで豪華な所はないわ
リリアナは今までも、メイルズ男爵領内の温泉の改善案を父である男爵へ助言してきた。しかし、それを軽く上回る公爵家の浴場の設えに、リリアナは何か言い様のない敗北感を感じ、虚しくなった。
ーーー浴室への自然光の取り入れかたまで、洗練されているのね
天から光が差し込んでいるかのような設計に思わずため息がもれてしまう。
機会があれば、このバスルームを施工した職人を公爵家から男爵家へ紹介して貰おうと、リリアナは気分を持ち直し、体調を考慮して早めにお風呂から上がることにした。
ーーーーーー
ーーー!ドレスってこれ?!
湯上がりのリリアナを待っていたのは、簡易的な作りの白色のドレスで、リリアナ1人でも着替えができるものだった。しかし、ドレスに使われている絹はパッと見ただけで最高級品とわかるものだったし、装飾は金色の糸で繊細な刺繍がされており、たくさんの紫色の宝石が散りばめられていた。準備されていた靴も同様に、1人での着脱は簡単そうだが装飾は宝石が散りばめられており、大変高価なものだとわかる。
リリアナの先程の予想が的中し、男爵家の盛装を軽く上回るドレスが用意されていたのだ。お風呂でリラックスしたはずのリリアナは、その高価なドレスを着こなす精神的負担を考え、苦笑するしかなかった。
ーーーそうだ、カルラ・ルカのペンダントと指輪も着けなくちゃね
リリアナは命を守ってくれるお守りとして、すぐにペンダントを身に付けようとしたが、ペンダントの留め具部分に濡れた髪があたり、つけるのがなかなか難しい。
ーーーほんと、ドライヤーみたいなものが、この世界にあれば便利なのに
いつもはカナに髪を手入れして貰っていたため、自分では茶色の長い髪をまとめられそうにない。魔法で一気に乾かせれたら便利なのにーーとやっとの思いでペンダントを首にかけたリリアナが思うと、突然そのペンダントが金色に輝き出した。
ーーーへ?なに?!
リリアナが驚いて慌てて自分の髪に触れると、既に髪の毛は乾いており、いつもよりしっとりさらさらの手触りになっている。
「ど、どういうこと?!乾いてる!!」
「リリーがペンダントに思いを込めただろう?それを風の精霊が感知したんだろうね」
「ーーー!あ、アーク!」
いきなり乾いた自身の髪の毛にリリアナが驚愕していると、突然後ろからアークの声がした。
「本当だ、すっかり乾いているね」
アークはリリアナの傍にやって来ると、髪を1房手に取り自分の顔に持っていく。
ーーーっわ!髪にチューしてる!!
「な、な、何でここに?!」
「あぁ、突然精霊からリリーが呼んでると聞いてね。転移してきたんだけど、勝手に風の精霊がリリーの髪の毛を乾かしてくれたみたいだね」
風の精霊はリリーの事が好きだからーーと笑いながらリリアナの髪を撫でては耳にかける。リリアナは突然始まったアークのスキンシップに対応できず、アワアワとぎこちない動きをとってしまう。
「あ、アークがいなくても精霊が助けてくれたってこと?」
「ーー簡単に言えばそうかな。同じ屋敷内に俺がいれば、リリアナに少しだけなら力を貸してくれるようだよ」
ーーーっ!なんて便利な!この屋敷ではドライヤー要らずなのね!
リリアナはアークのスキンシップも忘れてアークの方へ振り向くと、アークは笑いながらリリアナのドレスの襟元を直した。
「さぁ、お茶の用意が出来たみたいだよ。今後のことも含めて軽く話をしよう」
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