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 ーーーん?まだ生きてるの?


 リリアナの虚ろな瞳の焦点が段々と定まってくる。目の前に、いないはずのアークが心配そうに何か呼び掛けているが、頭がぼーっとして理解できない。

 一体、ここは何処だっただろうかーー、重い頭を少し傾けると薄暗い林の中にいることに気がついた。側には、精霊魔法で懸命にリリアナを治療するパトリックがいる。


 ーーーそう…。パトリックと一緒に薬草獲りに来てたんだっけ…


 ーーー夢中になりすぎて林の奥まで入り込んでしまい、ライベルトの花を見つけてーー!そうだ!魔獣ー!!


 リリアナの意識が覚醒し、アークの腕の中から慌てて辺りを見回すと、かつては動物であったであろう残骸がすぐ側に散らばっていた。


「リリー!大丈夫か!?どこか痛いところは!?胸は苦しくはないか!?」


「ーーあーく?何でここに?」


 リリアナの意識がはっきりしたのを感じとり、アークが立て続けにリリアナの体調を聞くが、リリアナは頭の整理がつかない。


「リリー姉さま、先ずは体調が問題ないかをお答えください!」


 パトリックも真剣にリリアナの体を気遣ってくるので、リリアナは自分の体をもぞもぞと確認する。幸いにも、足首に痛みがあるものの、ひどい怪我はなさそうだ。


「ーー、どこもひどい怪我はないみたい。魔獣はーー死んだの?」


「あぁ、こちらに転移したと同時に、急所を魔法で一突きしている。リリーは息苦しくはないか?」


 やはりさっきの残骸は魔獣だったのかーーと思いながら、アークとパトリックの顔を伺う。リリアナが怪我はないと返事をしたのに、2人はまだ心配そうだ。息苦しさについてはなぜ聞くのか。


 ーーー確かに、魔獣が飛び掛かってこようとした時に、息が詰まる感じがあったかもーー


「魔獣の呼気には毒が含まれていることがあるんだ。場合によっては、最悪、人間の心臓が止まってしまい死に至ることもある」


 アークはそう説明しながらも、リリアナが息苦しそうにしていないか確認していた。


「ーー確かに襲われたときは、息が苦しかったけど、今は全く大丈夫」


 魔獣のあの息の臭さは毒だったのかと、リリアナは1人で納得した。


「本当に無事で良かった!」


 ーーー!!痛ー!!


 アークがリリアナの無事を喜ぶように、もう一度抱き締め直すと、足首に負担がかかったのか、鋭い痛みが駆け抜ける。


「リリー?!ーーまさか、怪我を?!足が痛いのか?」


 すぐにリリアナの痛みに気がついたアークは、パトリックに直ぐ目で合図し、リリアナの足首の痛みを和らげるように指示を出した。


「リリー、他に怪我は?我慢せずに教えてくれ。後で悪化したら大変だ」


「アーク心配かけてごめんなさい。怪我は他は大丈夫だと思う。足首も大したことないって最初は思ったんだけど、動かしたら痛くて」


「リリー姉さま、痛みが和らぐまで、後少しだから、動かないで我慢してねーーーそれにしたって、リリー姉さまは、何故こんな林の奥まで入ってきたの?」


 治療を施しながらパトリックに問われて、リリアナは、薬草獲りに夢中になりすぎてしまったこと、林の奥にライベルトの花を見つけたこと、近寄ろうとすると、リリアナのすぐ側に魔獣がいたことを2人に伝えた。


「確かに、不思議な気配はあったんだよね。こんなにも2人して薬草獲りに夢中になるなんて不自然すぎるし。ライベルトの花だってメイルズ男爵領では咲くはずかないーー兄上、リリー姉さまの足の応急措置が終わったよ」


 パトリックが今回の顛末を不思議そうに回想すると、確かに不自然な点がいくつもあることに気がついた。


「そうよ。私がさっき見たライベルトの花、何処かしら?確かに向こうに咲いているのを見たの」


 リリアナが自分の足で立ち上がろうとすると、アークに制されてしまい、その代わりに抱き上げられる。


 ーーーわお!お姫さま抱っこ!!薬草獲りと魔獣で洋服がぐたぐたなのに!!


 リリアナが慌てて、アークの腕から降りようとすると、余計にきつく抱き込めれてしまった。


「リリー?お願いだから、念のため屋敷に戻るまで大人しくしていて?ーー確かに向こうにライベルトが咲いてたの?」


「ー!!えぇ!!あの岩の上に1つ咲いてたわ!」


 アークがリリアナの耳に口を寄せて、アークの腕の中で大人しくするよう言い聞かせてきたため、リリアナの顔は恥ずかしさのあまりに真っ赤になってしまう。

 さっきまでは、魔獣と対峙し死を覚悟していたのに、アークとパトリックに囲まれていると、絶対的な安心感をリリアナは感じていた。


「兄上、少し押さえてくださいーー確かにあの岩からは細工されたような魔力の残り香がします」


 パトリックがアークのリリアナへの執着心に呆れながらそう言うと、岩の上の魔力を調べ始めた。


「恐らく、誰かがリリー1人を林の奥に誘い込み、幻想魔法でライベルトの花があるかのようにリリーに見せたのだろうね。そして、近づくと、魔獣が転移してリリアナが襲われるように仕掛けたーー」


「えぇ、兄上。恐らく間違いないかと」


 最初からリリアナが魔獣に襲われるように仕向けていたーーと、そう断言された。



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