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「ーー!リリアナっ!…幸せすぎて、ぼーっとしているのかしら?」
「念願のユーリスアークライト様とのご婚約ですもの!あの美貌を一生独り占めできるなんて、羨ましすぎるわ!」
「婚約式はやるの?!公爵家のご婚約パーティーって凄そうよね!ーーっ!リリアナ!それまさか、本物のカルラ・ルカじゃない?!」
リリアナの姉達の婚約披露の茶会から数日、リリアナのメイルズ男爵領の温泉目当てに、リリアナの友人3人が屋敷を訪れてきた。どこからか噂を聞き付けてきたようで、アークとリリアナの婚約話で盛り上がる。屋敷のサロンはさながら女子会のような雰囲気になっていた。
ーーー婚約、婚約って、みんなにも婚約者がいるのに
なかなか婚約者が決まっていなかったのはリリアナだけーー本当はアークで既に決定していたようなものーーだったため、突然のリリアナの婚約に友人達は大盛り上がりだ。
「私、本物のカルラ・ルカを初めて見たわ!とてもきれいな紫色なのね!」
ーーきゃ!きゃ!っと興奮気味に話すのは、リリアナと同い年のマリア・ヴィドゥーゼ伯爵令嬢。
「そういえば、ユーリスアークライト様の瞳の色も同じ紫色でしたわよね…。なんだか偶然にしても怖くない?」
ーーとやや失礼ながらもズバズバ意見を言うのは1つ年上のキャロライン・メイローズ伯爵令嬢。
「ユーリスアークライト様はリリアナに首ったけーーとの噂は本当だったのね!本物のカルラ・ルカを贈るなんて!ロマンチック!!」
ーーとリリアナを冷やかしてくるのは同い年のアンナ・サリバローニ子爵令嬢。
「ねぇ、皆。なんで、ペンダントが本物って分かっちゃうの?」
婚約の贈り物としてカルラ・ルカは定番である。ただ、人工のカルラ・ルカが主流なのに、なぜ一目で分かるのだろうーーと、リリアナが不思議そうに答えると、友人達は皆信じられないものを見るかのように驚いた。
「あれだけユーリスアークライト様から、大事に愛情を注がれているリリアナを見てれば、直ぐに分かるわよ。筆頭公爵家だものリリアナのために、それくらい贈っちゃうわよね」
と、キャロラインがズバッと答える。
「そうですわねユーリスアークライト様ったら、いつもリリアナを大切な宝物のように見つめていらっしゃるし。ペンダントにもリリアナを守るために、ものすごい加護がついてそうよね」
と、マリアが顔を赤らめて、ふぅーとため息をつく。
「リリアナのために何でもしそうだしね!もう、今すぐにでも結婚したいんじゃない?」
と、アンナが笑って答える。
「ちょ、ちょっと、それは皆大袈裟よ。」
リリアナは、まさか本物のカルラ・ルカのペンダントが、そんなに注目を浴びるとは思ってもみなかった。この高価なペンダントを奪うために、また誘拐でもされないかと、リリアナはやや不安になってしまう。
「ねぇ。来年度の学園の入学式はすごいことになりそうよね!ユーリスアークライト様の婚約者のリリアナが入学するんだもの!!」
「ちょっと、マリア興奮しすぎよ。でも、例年よりは注目があるわよね。リリアナもそうだし、隣国のルーシャ王女様も留学にくるんでしょう?」
「キャロラインは水を挿すようなことを言うのね!ルーシャ王女様もリリアナとユーリスアークライト様とのラブラブにタジタジになるわよ!ね?リリアナ!」
マリアが興奮して捲し立てるが、リリアナはルーシャ王女が同じ学園に入学するのが怖い。
アークは何としてもルーシャ王女の留学を阻止使用とした。しかし、勉学目的を掲げるルーシャ王女の正当性が認められ、留学を阻止することは叶わなかった。そのため、リリアナと同じタイミングでルーシャ王女が入学するのだ。
アークがルーシャ王女との婚約話を蹴って、リリアナと婚約したのは隣国にも伝わっているはず。アークとルーシャ王女が婚約すると噂を流す程、アークをルーシャ王女が望んでいたとすれば、リリアナは憎い敵のようではないか。
「ーー私は、ルーシャ王女様が怖いな…」
ポツリと、リリアナがこぼすとキャロラインが心配そうに口を開いた。
「リリアナ?大丈夫?ごめんなさい、私達ったらちょっと浮かれすぎていたみたいね。でも、これだけは覚えていてね。ルーシャ王女様が何を仕掛けてきても、私達はリリアナの側を離れないわ!」
「そうよ!マリアも私もリリアナの味方だからね!」
アンナの一言にマリアも強く頷く。リリアナは友人達の気遣いと優しさに胸が一杯になり、泣きそうになった。
「ちょっと、泣かないでね!いろいろからかって悪かったわ。」
「そうそう!リリアナを泣かせたらユーリスアークライト様が移動魔法で飛んできちゃう!」
「あの美貌を間近で見たいけれど、叱られるのはヤバいわ。恐すぎるわよね」
友人達は皆、その後も好き勝手にリリアナをからかい、リリアナとアークとの婚約をとても喜んでくれた。
リリアナの友人達は皆、メイルズ男爵領と隣接または直ぐ近くに領地を構える貴族令嬢である。リリアナの兄姉や親族の令息と令嬢らが、学園での領生活を初めるとリリアナは1人で過ごすことが多くなった。そこで、ご近所の同じ年頃の令嬢達を集めた茶会などで頻繁に会うようになり、今ではすっかり意気投合をしている。引きこもりのリリアナにとっては、唯一の友人達である。
ーーー前世のように、こんなに友達と楽しくおしゃべりができるなんて、とても恵まれているわ
貴族令嬢達は通常、友人であっても少し距離を取った間柄であるらしい。ただメイルズ男爵領のある地域は帝国の端にあり、気候も穏やかで自然ものどかな地域ということがあってか、周りの領地の貴族達も、明るく気さくな人柄の人物が多かった。
「そうだ!リリアナ、聞いたわよ!!橋の上でのプロポーズ!!」
リリアナが考えに耽りそうになったことろ、キャロラインが話題を切り替えた。マリアもアンナも興奮して続く。
「私も聞いたわ!後で、その橋に連れていってよ!」
「私も2人の仲の良さのご利益にあやかりたいわ!!」
ーーーっ!嘘でしょ?!もう耳に入ったの?
リリアナが驚いたのは、アークの橋の上でのプロポーズが、こんなにも早くご近所の貴族令嬢達の知るところになったことである。
事はアークが帝都に帰る前の日に起こったーー
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