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「ーーはぁー。ほんと驚いたわ…」


 リリアナは寝室に入るやいなや、ベットにダイブし、ごろごろと転がった。カナは死んだ目のようになり、リリアナに行儀が悪いと叱った上で、恋愛には鈍過ぎるリリアナの会話に付き合うことにした。


「オスカー様のこと?!リリーったら、ユーリ様、ユーリ様って、周りの殿方なんて目に入っていないものね。まぁ、あれだけの美貌の婚約者がいれば、しょうがないのかもしれないけれど」


「っ!そ、そんなことないわよ!ーーまさか、カナまで、オスカーの気持ちに気がついてたの?」


「もちろん、気がついてたわよ。あれだけリリーへの恋焦がれる視線を受けても、流石はリリーね。全くって言うほど、オスカー様の想いにスルーなんだもの」


「うそ!気づいていたなら、教えてくれたって良いじゃない!」


「それはオスカー様があまりにもお気の毒よ。恋した相手のメイドが、自分の想いを代わりに想い人に伝えるのよ?ちょっと悲しくない?」


「うーん。そうなのかな…?」


「今回だって、私がオスカー様をお茶に促さなかったら、リリーに告白できなかったわよ?」


「っ!そうそう!なんでオスカーをお茶に誘ったのよ!」


「ほんとに鈍いんだからーー」


 そうカナはため息をつくと、恋愛に鈍すぎるリリアナに今回の婚約の件についても説明を始めた。


 昨日の茶会の前にも何回か、メイルズ男爵家にシュタインブリュック侯爵家からリリアナとオスカーの婚約の打診がきていたらしい。

 メイルズ男爵はリリアナの気持ちが幼い頃よりアークにあると気がついていたため、リーフェンシュタール公爵家に相談した。もちろん、公爵家からはリリアナはアークと婚約させるとの回答が直ぐにあったため、メイルズ男爵はオスカーとの婚約話を断ったらしい。

 すると、今度は昨日の茶会でオスカーが直接リリアナに求婚するのではないかとの情報を、公爵家の影ーー間者が掴んだ。公の場での求婚の流石に断り辛いーーと慌てたアークがドレスとカルラ・ルカのペンダントを用意し、妹のヴィヴィアンと母のダイアナに託したそうだ。


「リリーがカルラ・ルカをヴィヴィアン様から素直に受け取っていれば、ユーリ様の風の精霊の力が及び易くなって、皆、安心して茶会に臨めたのに。リリーったら断ってしまうんだもの。」


「ーー仕方がないじゃない!アークの気持ちにも、オスカーの気持ちに気がついていなかったんだもの!」


「そうね。そこは鈍いリリーですものね。ーー茶会では、ヴィヴィアン様もダイアナ様も大変慌てたそうよ。ふと茶会の端を見てみれば、オスカー様とリリーが2人でいるんだもの。急いでリリーに駆けつけたってわけ」


「ーーまじか…」


「それで、オスカー様より早く、その場で公爵夫人であるダイアナ様がユーリ様とリリーとの婚約を公にしたの。そうすれば、格下の侯爵家のオスカー様は、もう公でリリーにプロポーズできないでしょ」


「そんなことが、裏であったのね…」


「オスカー様もそれで諦めてくれたら良かったんたけど。未練たらたらで、リリーの部屋まで来るんだもの!同じお屋敷にユーリ様がいらっしゃるから、精霊がリリーの側にいるとは思ったけど。流石に2人で自室に居るのはビックリしたわよ」


 今度からは気を付けてね!ーーと釘を挿される。オスカーの気持ちに、リリアナがあまりにも気がついていないのは、このままだとあまりにも危険と判断したカナは、オスカーの気持ちをリリアナに分からせることにしたらしい。


「オスカー様がイライラするほどリリーに想いを告げないからストレスが溜まっちゃった。まぁ、オスカー様がストレートに想いを告げるタイプであれば、リリーとユーリ様の婚約もひと騒動あったのかもね」


 これで、少しは危機感を持ったでしょ?ーーとカナはイタズラが成功したように笑った。


 ーーーこっちは寿命が縮む思いをしたわ!


 リリアナがむっとして頬を膨らますと、カナはお姉さんぶってリリアナの頭を撫でた。


「その分だと、これっぽっちも気がついてなかったのね。本当にリリーらしいわ…さぁさ、話はなんとなく掴めたでしょ。晩餐まで時間があるから、休んでちょうだいな」


「はーい…」


 カナはそういうと、リリアナのドレスを脱がせて、リリアナをベットに促した。リリアナはふと東屋での会話を思い出す。


 ーーー私の水の加護をアークの精霊の力で使えるんじゃない?もし、使えるなら疲労回復の効果もあったりして?


「ねぇ、カナ?カルラ・ルカのペンダントはある?つけて寝ても良いかな?」


「えぇ、もちろんよ」


 くすっとカナは笑うと、リリアナにペンダントを渡した。リリアナがペンダントをつけると、体が軽くなるような感覚があり、目蓋が重たくなってくる。


 ーーーやっぱり、水の加護が作用するのね


 リリアナの予想通り、アークの精霊の力を通してリリアナの水の加護が働いたらしい。体から疲れが退いていき、心地よい眠気に包まれる。


 ーーーこれは、晩餐まで起きれないかも…


 深い眠りにつきそうだーーとリリアナは思ったが、その直後、ぷつんと意識が途切れる。

 その後、晩餐まで起きてこないリリアナを家族は心配したが、アークが贈ったペンダントの風の精霊の報告で、リリアナ自身の水の加護による体の回復機能が作用していると説明があったらしい。

 結局、リリアナは晩餐を寝過ごし、翌日に目を覚ますことになった。




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