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 ーーー…眩しい…


 カナによって無理やり急いで身支度を整え、遅ればせながらサロンに到着したリリアナは、部屋のドアを開けて、いの一番にそう感じた。


 サロンでリリアナを待っていたのは、両親の男爵夫妻、兄のハリー、リーフェンシュタール公爵夫人ダイアナ、息子のパトリック、娘のヴィヴィアン、それとユーリスアークライト。父のメイルズ男爵以外は皆、金銀の光輝くような髪色であり、サロンに射す太陽の光で余計にキラキラと輝いてみえた。


 ーーー誰よ。サロンで集合を呼び掛けたのは…


 あまりの輝かしさに、既に逃げ腰になったリリアナだが、カナがドアを塞いでおり、逃げる事は出来そうもない。


「…皆様、遅れまして、大変申し訳ありません」


 リリアナは待つくらいなら早めに起こしてほしかったと思いながら、リーフェンシュタール公爵家の面々に向かって挨拶をした。


「リリアナ、体調はどう?良く休めたかしら?」


「昨日はごめんなさいね。急に驚かせてしまったわ」


 リリアナの母ロザリーが心配そうに問いかけ、ダイアナからは、謝罪を受けた。


「一晩、良く休ませて頂きましたので、大丈夫です。ご心配おかけしました」


 リリアナの体は、精神的ストレスによりダメージを受けると、ところ構わず度々倒れる。幼い頃に受けた誘拐監禁事件により、一種の自己防衛と考えられていた。


 ーーー元日本人の前世がよみがえっても、失神だけは避けられなかったのよね…


 意思とは関係なく、すーっと血の気が引き目の前が暗くなるのは、現在のリリアナをもってしても、治すことが出来ないでいた。


「…茶会では驚かせてすまなかった。パトリックとヴィヴィアンが側にいれば心強いかと思ったんだが」


 ーーーいやいや!無理!!


 いつもより影のある表情をして、疲れを滲ませなから謝ってきたのは、問題の元凶のアーク。憂いを秘めた表情は、元の持っている色彩も相まって、この世のものとは思えない神々しさと艶を帯びていた。


 ーーー絶対、私よりも女性的で美人だわ


 そんなアークでも、リリアナが倒れたと聞いて急ぎ駆けつけた疲労なのか、いつもより顔色が悪く見えた。


「具合は悪くないか?ほら、座って」


 一晩ぐっすり寝て休んだリリアナよりも、アークの方が疲れの色が濃くやつれた表情なのは一目瞭然だったが、よほどリリアナの倒れたことを心配したらしい。

 アークは心配そうにそう言うと、立ち上がってリリアナの手を引き、自身が座っている横にリリアナをそっと座らせた。


 アークが甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのは、いつもの事なので良いのだが、昨日の婚約のうんぬんの後である、リリアナは自分の顔が次第に赤くなっていくのを感じた。


 ーーーちょっ!アーク?距離近いよ!!ってゆーか、くっついてるじゃない??


「まぁ!初々しくて、可愛らしいこと!」


「やっぱり、ユーリお兄さまには、リリーお姉さま以外考えられないわね」


 リリアナがサロンに集まったメンバーからの生暖かい視線を受けて赤面していると、追い討ちをかけるようにダイアナとヴィヴィアンが声をあげた。


 一方、1人眉間にシワを寄せて渋い顔をしているのは、リリアナの父のメイルズ男爵だ。


「ユーリ殿、両家に婚約の話があるとは言え、未婚の男女で少し距離が近いのではないかと思うのだがね?」


 ーーーうぅ!親に注意されるなんて居たたまれない…


 両親と兄に生暖かい目で見られて、リリアナは恥ずかしくて治まった目眩が再発しそうだった。


 反対に動揺しっぱなしのリリアナとは打って代わり、アークは落ち着き払った顔だ。そして、リリアナにとっては驚くような事をリリアナの父メイルズ男爵に告げた。


「メイルズ男爵殿、リリアナ殿との私の婚約の件、急な話となってしまい大変失礼しました。先程ご説明した通り、国内外の状況を鑑み、異例ではありますが、皇帝陛下から婚約の承認はすでに得ております。リリアナ殿の学園の入学前に公に発表し、学園卒業を待って婚姻とさせて頂きます」


 ーーー!!なんだってー!!飛躍過ぎてない?!


「ふふ…。旦那様、悪あがきはよしてくださいな。娘は遅かれ早かれ嫁ぐものですよ」


 メイルズ男爵とアークとのやり取りを見ていたロザリーは呆れながら、将来義理の親子になる2人の冷めきった会話の間に入った。

 リリアナが起きてくる前に、なにやら話がなされ、粗方両家で話がまとまっていたらしい。


「ユーリもリリアナが驚いているわ。リリアナ?大丈夫?少し休んできましょうか?」


 リリアナを気遣いダイアナが声をかけると、隣に座っていたアークもはっとしてリリアナを見つめた。


「リリー?すまない。また驚かせたかな?体調はどう?」


 アークは心配そうにリリアナを覗き込むが、それを見たメイルズ男爵の目が吊り上げっていく。


 ーーーアーク!近いってば!!


「ユーリお兄さま、リリーお姉さまが恥ずかしがっておいでです。リリーお姉さまとようやく婚約となり、嬉しいのは分かりますが、少しセーブしてあげてくださいませ」


「兄上、リリー姉上がまた倒れてしまいます。少し手加減を」


 リーフェンシュタール公爵家のパトリックとヴィヴィアンも苦言を呈するが、内容はリリアナにとってはかなり恥ずかしすぎる。


「リリーには、話が全く見えてこないよね?みんなの前で説明されるのも、ーー精神的にーーまぁ、いろいろ疲れるだろうから、アークと庭でも散歩しながら説明を聞いてきたら?ーーーアーク、良いよね?」


「ハリー殿、ありがとうございます。リリー、体調が良ければ、少し散歩してこようか?」


 頭が混乱しているリリアナを見かねて、兄のハリーが助け舟を出す。リリアナも、家族がいる前でこれ以上婚約の説明を受けるのは、精神的に悪いと思い、アークの誘いにのることにした。



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