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第66回(家=国家=小宇宙の神話以前・その18)

「ま、そこんとこ諸々乗り越え理解して、始めて風ちゃん家の家族なんだよねー」

「ふ、そうかい…いいさ、実地での経験、これからハイパーハイスピード・アンド・ウルトラハイデンシティ、なんなら今日中にでも積み上げてやろうじゃないか…くく」

 実地での経験? ハイパーなんですと? 猫目。

「…で、女神様は何をおやりなんで?」

 風ちゃんが呆れて言うのも無理ないかも知れません、実際ボクらの誰もが声をかけられて始めて気付いたことなのですが、人事不省、ってか生死不明でベッドに転がってたはずの女神様が、いつの間にかお部屋の角っこにちょんと腰を下ろし、半ばまどろんだ様子で頭をふらふらさせてるのです。ほら女神様、そうやって首が抜けて立たないはずなのに無理に起き出したりするから。治るまでかかっても知らないよ? …いやっ!? ちょ、待っ、なに普通の心配させてんの、そうよ女神様あなたは絶対安静でしょうが! 即ベッドへ、いや先ずは首を固定してからか、あーん女神様、人は天へ召されると申しますがじゃあ神様は? 召されると何処へ行っちゃうの??

「う~つつつ…あ~寝違えた。そんな変な格好で寝てたかなぁ…?」

 ところが女神様は慌てふためくボクたちに不思議そうな目を向けただけ、ぼやきながら恐る恐る首筋をマッサージする姿は、まったく言葉通りただちょっと首が痛いだけの人なのです。はぁ、そうですか。その程度だったのですか。

「そんなとこでうたた寝してっと、もっと寝違えるぞ」

「んー、ちょっと温まるつもりがねー。すっごく気持ちいいんだもー」

 体育座りした膝の上、両手いっぱいに抱えた種々様々なメル変っ子に頬ずりして、女神様はふにゅふにゅふにゃふにゃ、夢見心地のご様子で風ちゃんに応じるのです。そういやパジャマ一枚で寒いからって風ちゃんのお布団に潜り込もうとして姐御さんと鉢合わせ、結局無駄に熱的平衡に近付いただけの大騒動を経て今があるんでしたっけ。冷えた体にメル変っ子肌がじんわり優しい、ええ無論お腹だけじゃなく背中だってお尻だってあったかですから女神様ご満悦なんですよ、なんとなればほら、女神様が背中をつけてる壁、お尻をつけてる床をよく見てご覧なさいな、そこにも種々様々・多様性の見本市といった有様でメル変どもがうようよしてるでしょう? 穴っ子や表裏一体っ子といった自分で動き回れる連中とはまた異なる、これらは植物のようにその場に固着して生活する者共です、特に壁と壁とが直角に出会うコーナー部分は窓・ドア・作り付けの棚等々、そのようなものが無いため例えば人手によって環境が乱されやすいとかありませんし、床面もその付近ではあまり踏み荒らされることがありませんから、天井・壁面・床、垂直に固着生活者たちのコロニーが出来やすいのです。コーナー部分に背中からすぽっと嵌まり込むようにして座り込んでいる女神様ですから、体の両脇からも遠メル変線を浴びてきっと暖かい、まぁ言うなれば今女神様は全身熱線浴をしているようなもの、これならば芯まで冷えていたかも知れない体だって直ぐにぽかぽかでしょう。おっと。女神様の頭が眠気でかくんと下がったのですが、その今まで側頭部があった辺りをひゅっ、横合いから何かが目にも留まらぬ速さできわどく掠めていきました。ひゅっ。今度は背後から女神様の右耳の辺りを。ひゅっ。女神様ご自慢のあの淡く輝く金髪が一房、風圧で舞い上がりました。ひゅっ

「うっ」

 風を切る音に反応した訳ではないでしょうが、女神様がひょいと頭をもたげたのです、途端にびっという鋭い音が女神様の左頬から響きました、そして首が弾かれたように鋭く反対側へ、うあうあこれ絶対また痛くするよ、がくっと曲がったのでした。

「うっ」

 今度は後ろ頭の方からびっ、顔は正面、傾きは右へ不自然な感じだった女神様の頭はそのまま首を軸にしてぐるん、ご自分の左隣に居る誰かにねー♪ と同意を求めている時のような仕草になります。

「くはっ」

 わっ、今度は下からだ。床から両膝の間を抜けて何かが打ち込まれたみたいです、ねー♪ とエア隣人に語りかけていた女神様の頭が、またまた鋭い音と共に上へ突き上げられました、やだもう、ねー♪ の格好から無理矢理頭だけをぐいともたげた、なんか名状しがたい変態的な仕草に。両目は何故か三日月状、白目剝いてるし。

「…ありゃあ、なんなんだ?」

 その後も何者かによってびっ、びっ、と鋭く打たれ弄ばれ、そのたんびにうっ、うっ、と呻きはするものの何故かなすがままの女神様なのですが、姐御さんはその様を不審げに眺め、傍らの風ちゃんに説明を求めたのでした。

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