第6回(女神様は彼と遊ぶ・その6)
「腕を伸ばしっぱなしじゃ、休憩になんないでしょー」
「だからって人をアームレスト及びヘッドレストにするな」
ふ・う・ちゃ・ん。顔が赤いよね? あたしたちが風ちゃんにすりすりした時は顔色一つ変えないくせに、何故かな? 何故かな?
「んー? 風太君はエレちゃんに萌えてるのかな~?」
女神様は頭を起こすと、ぐっと風ちゃんの首に体重をかけ下から風ちゃんの目を覗き込みました。ちょーっ! 顔近すぎですからっ。息かかりますからちょっと唇突き出せば犯れちゃいますからーっ!
「やれやしねぇ!」
その字じゃなくって!
「ふぅむ。こぉんな美人女神と鼻突き合わせててもまだよそ見する余裕。風ちゃん、異性に性的興味がない疑惑とホモ・サピエンスにしか性的興味がない疑惑、どっちってことにしてもらいたい?」
「後者はそもそも疑わk」
前者! 前者なら全然おっけーですぅ!
「そっちも元から疑わk」
「えー、エレちゃんはどっちも困るな。だって神様だけど女だもん」
そう言って女神様は風ちゃんの首に巻いた両腕に益々力を込め、首をちょっと傾げたその仕草から笑顔まで、それはもう何とも自然な愛らしさを振りまくのです。ぐぅ、風ちゃんの顔が益々赤く。女神様には持って生まれた武器の使用制限を強く要望するー。風ちゃんはメル変っ子みんなのセックスシンボルなんだぞー。
「なーっなんか今致死的な評価を賜っt」
うー。女神様が綺麗なのは、綺麗比べしたら必ず勝利が約束されてるってゆー不可侵的な性質が女神様に具わってるからで、そんなの横暴だーって思うんだけど、でもそうと分かっててもライバルのボクたちだって女神様の美しさにはいっつも見蕩れてばかりで。うー。喩えて言うとね、女神様って“絶対美人”なんだよ。よござんす、説明しまひょ。あのさ、美しいとか綺麗とか、普段みんなは何を見たり聞いたりしてそう思う? 多分人によってまちまちだと思う、そうだよね、ある国や地域で綺麗だねーってもてはやされるものが別の場所ではきしょーいとかってのも普通にあるし、一口に美しいって言っても、それはそれを感じ取る主体が変われば合わせて美をはかる物差しも変わって当然、そういうものだよね。つまり、この世には誰が見ても美人と思って貰える、そんな“絶対美人”の顔・姿は原理的に存在し得ないはずなんだけどところがどっこい、女神様がそれなんです。女神様は過去に存在した・現在存在している・未来に存在し得る全てのヒトに対して、例外なく美人なんだって。それだけじゃないよ、女神様は全くホモ・サピエンスの女性の姿をしているけれど、ホモ・サピエンス以外の他の生きものにも、彼/彼女が美を感じられる存在であるならば、どんな者からも美しいって思って貰えるんだそうです。そ、例えばボクたちからもネ。女神様に、例えばボクたちの誰かから求愛されたらどうするーって前に聞いたことがあるんだけど、真剣に考えるってホント嘘偽りない目をして答えてくれたんだ。あらゆる者を惹きつける女神様だからこそ、きっと誰だろうと大事に出来る心も具わってるんだろうね。だから女神様大好き。あ、もう一つ女神様の好きになれるいいとこを言うとね、女神様に具わった誰からも肯定される美は、いわゆるプラ屯のイデアみたいな何かの絶対性が相対した者を従えるんじゃなくて、美の感じ方にまつわる一人一人の差異を全て許容する、言ってみれば相対性の極みとしての絶対性からきてるんだって。女神様は“絶対美人”だけどちっとも押しつけがましくないの。だから安心していつも一緒にいられるし、一緒にいるといつも楽しいんだー。
「…おまえら、エレ様から幾ら貰った」
あーっ! 心の美しくない人がここに居るよぉ!
「ん、一息ついた。それじゃあ昭和のパフォーマンスを続けるとしますかねぃ」
エレ様エレ様ー。炎上と爆発の演出がなかったから、致死量仕込んどいたー。
「さっきから気になってしょうがなかったんだけど、エレ様の後ろ半分って今どうなってんです?」
「それもこの大脱出が済んだら教えてあげる。風ちゃん、ちょっと後ろへ下がってくれる?」




