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2つの生放送。

家に帰って、

俺はリビングのソファに寝転がった。

スマホを取り出し、水樹主将に勧められた配信『moon』を検索して開く。

ちょうど生放送中だった。

画面には柔らかい照明の部屋。

声だけの配信でカメラは固定。

アバターイラストを添えた画面だ。

moonの声は穏やかで優しく、

少し甘えたようなトーンだ。

moon

「今日も学校で見たんだけど、

運動神経抜群の爽やかな男子がいてね……

みんなを引っ張って笑わせてる姿、

かっこいいなって思っちゃった。

あと、眼鏡の奥の瞳が優しい男子も。

いつも静かに本を読んでいるけど、

誰かが困ってたらそっと助けてくれるの。

守ってあげたい系のかわいい男子もいて……

髪がサラサラで綺麗で、

笑うとすっごく癒されるんだよね。」

いろんな男子の話を嬉々として語る。

俺は画面を見つめながら、

少し首を傾げた。

(そんな男子がいるんだな……俺たちなんて「熱血バカ」「冷徹メガネ」「ゆるふわオタク」なんて呼ばれてるらしいのに。)

コメント欄は眼鏡男子への憧れと幻想で埋め尽くされていた。

【やさしい眼鏡男子尊い……】

【こんな男子がクラスにいたら毎日幸せすぎる】

【私も眼鏡男子に優しくされたい……】

【第二婦人希望】

【現実で出会えたら一生の宝物だわ】

俺は鈴木を思い浮かべた。

冷徹メガネ。

クラスで友達と楽しそうに笑ってる?

いや、鈴木は側からは楽しそうに見えないだろ。

俺でもやっと感じ取れるくらいだから。

静か?最近はガミガミうるさい気がする。

うん、

鈴木じゃないな。

そんな彼女のコメント欄は、

眼鏡男子に対する憧れと幻想でいっぱいだった。

俺は男子禁制の空気を感じ、

そっと配信を閉じた。

また水樹主将に感想伝えよう。


その夜、

リビングでテレビをザッピングしていた。

一つの報道番組が目に入った。

妊娠促進委員会長の会見生放送。

会長(女性、40代後半)は、

落ち着いた声で語っていた。

会長

「本日、

出産後の社会復帰支援の制定と、

育児政策の予算増加を決定いたしました。

時短勤務や休暇取得率調査、

実験としてとある商業ビルに大きめの年齢まで預けられる託児施設の建設依頼も行います。

そこで育児後の復職率の変化データをとり、

世間的運用に踏み出す予定です。」

俺はリモコンを握ったまま固まった。

なんだろう。

俺たちが先月、自習室で話していた内容に酷似してる気がする。

会長は最後にこう締めくくった。

会長

「本件は、

ある一通の嘆願書を契機として動き出したものであります。

当該嘆願書では、

一つの学校に在籍する教師が、

男子生徒たちの将来に対する憂慮について言及しておりました。

具体的には、

孤児の増加という社会課題、

ならびに精子提供の意義が改めて問われる状況を踏まえ、

我々としても看過できない問題であると判断し、

対応に着手した次第です。

現在、本取り組みにご協力いただいている男性の方々に対しては、

そのご尽力に報いるべく、

最大限の努力を重ねてまいります。

また、このような問題意識を持ち行動を起こした男子生徒たちが本国に存在していることを、

我々は大変誇りに感じております。」

まさか俺たちのことじゃないよな?

そうもいながらもチャンネルを変える手は止まり、

ニュースの生放送に見入っていた。

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