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10話 佐藤宏太と訪問者。

‥こんにちは。‥佐藤です。

…僕視点です。


….。

インターホンが鳴った。

僕は部屋の暗い隅で、膝を抱えたまま体を硬くした。

心臓が早鐘のように鳴る。

親はまだ仕事から帰っていない。

この時間に誰が来るというんだ……。

もう一度、インターホンが鳴った。

僕は震える指でリモコンを握り、玄関カメラの映像をモニターに映した。

……担任の先生だった。

僕は深呼吸を何度も繰り返し、

ようやく立ち上がって玄関に向かった。

ドアを開ける気にはどうしてもなれず、

ドアチェーンだけかけて、細い隙間から外を覗いた。

先生

「佐藤くん? 担任の黒川です。

少しお話してもいいかしら?」

声が震えそうになるのを必死に抑えて、僕は答えた。

佐藤

「……どうぞ。」

先生は穏やかな笑顔のまま、

ドアの外に立ったまま話し始めた。

先生

「突然ごめんなさいね。

親御さんには事前に連絡は入れていたんだけど……

今日は佐藤くん一人で大丈夫かしら?」

僕はドアの隙間から、うつむいたまま小さく頷いた。

先生は少し間を置いてから、静かに切り出した。

先生

「最近、クラスに変化があってね。

大地君が復学してから毎日来るようになって、

鈴木君は元々出席していたけど……

二人が一緒にいる姿がすっかり日常になってきたの。

髙橋さんや他の子たちと、

とても楽しそうに話しているのよ。」

僕は黙って聞いていた。

楽しそう……という言葉が、遠い世界の話のように聞こえる。

先生

「男子生徒が二人もいて、

自然に会話している姿を見ていると……

なんだか、教室全体が明るくなった気がするの。

佐藤くんも……学校に来てみないかしら?

無理にとは言わないけど、

少しだけでも、顔を出してみるだけでもいいと思うの。」

胸がざわついた。

興味……ないわけじゃない。

でも、同時に恐怖も蘇る。

小学校の頃——

休み時間に、同じくらいの年の女子数人に囲まれ

ズボンを無理やり下ろされ、股間を触られたこと。

双方まだ幼かったせいで、

事件は「厳重注意」で終わった。

誰も僕を守ってくれなかった。

それ以来、外に出るのが怖くなった。

学校に行くのも、友達を作るのも、全部怖くなった。

先生は、僕の沈黙を優しく受け止めてくれた。

先生

「焦らなくていいからね。

考えてみてくれれば、それだけで十分よ。

いつでも、先生は待っているから。」

僕はようやく、小さな声で答えた。

佐藤

「……考えてみます。」

先生は穏やかに微笑んで、

「ありがとう。それだけでも嬉しいわ」と言って

静かに立ち去った。

ドアを閉め、鍵をかけ、チェーンを外す。

僕はその場に座り込んで、膝を抱えた。

(……本当に、行けるのかな……?)

部屋の中は静かだった。

でも、先生の言葉が、

胸の奥に小さな灯りをともしたような気がした。

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