表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/30

佐藤宏太と訪問者。

インターホンが鳴った。

僕は部屋の暗い隅で、膝を抱えたまま体を硬くした。

心臓が早鐘のように鳴る。

親はまだ仕事から帰っていない。

この時間に誰が来るというんだ……。

もう一度、インターホンが鳴った。

僕は震える指でリモコンを握り、玄関カメラの映像をモニターに映した。

……担任の先生だった。

僕は深呼吸を何度も繰り返し、

ようやく立ち上がって玄関に向かった。

ドアを開ける気にはどうしてもなれず、

ドアチェーンだけかけて、細い隙間から外を覗いた。

先生

「佐藤くん? 担任の黒川です。

少しお話してもいいかしら?」

声が震えそうになるのを必死に抑えて、僕は答えた。

佐藤

「……どうぞ。」

先生は穏やかな笑顔のまま、

ドアの外に立ったまま話し始めた。

先生

「突然ごめんなさいね。

親御さんには事前に連絡は入れていたんだけど……

今日は佐藤くん一人で大丈夫かしら?」

僕はドアの隙間から、うつむいたまま小さく頷いた。

先生は少し間を置いてから、静かに切り出した。

先生

「最近、クラスに変化があってね。

大地君が復学してから毎日来るようになって、

鈴木君は元々出席していたけど……

二人が一緒にいる姿がすっかり日常になってきたの。

髙橋さんや他の子たちと、

とても楽しそうに話しているのよ。」

僕は黙って聞いていた。

楽しそう……という言葉が、遠い世界の話のように聞こえる。

先生

「男子生徒が二人もいて、

自然に会話している姿を見ていると……

なんだか、教室全体が明るくなった気がするの。

佐藤くんも……学校に来てみないかしら?

無理にとは言わないけど、

少しだけでも、顔を出してみるだけでもいいと思うの。」

胸がざわついた。

興味……ないわけじゃない。

でも、同時に恐怖も蘇る。

小学校の頃——

休み時間に、同じくらいの年の女子数人に囲まれ

ズボンを無理やり下ろされ、股間を触られたこと。

双方まだ幼かったせいで、

事件は「厳重注意」で終わった。

誰も僕を守ってくれなかった。

それ以来、外に出るのが怖くなった。

学校に行くのも、友達を作るのも、全部怖くなった。

先生は、僕の沈黙を優しく受け止めてくれた。

先生

「焦らなくていいからね。

考えてみてくれれば、それだけで十分よ。

いつでも、先生は待っているから。」

僕はようやく、小さな声で答えた。

佐藤

「……考えてみます。」

先生は穏やかに微笑んで、

「ありがとう。それだけでも嬉しいわ」と言って

静かに立ち去った。

ドアを閉め、鍵をかけ、チェーンを外す。

僕はその場に座り込んで、膝を抱えた。

(……本当に、行けるのかな……?)

部屋の中は静かだった。

でも、先生の言葉が、

胸の奥に小さな灯りをともしたような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ