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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
森の精と嘆きの巫女 フラリア王国編

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ユリーシャとコロ

「強制契約の上書き?」

「そ、上書き。」


 上書き?

 契約って変えれるの?


 キュリアの手が光り、ユリーシャに繋いだ鎖を駆け巡る。

 それに答えて、魔方陣も光り出す。


「どういう事だ?」

「言葉通り、聖獣との繋がりをこの子に移す。」

「そんな事、出来るのか?」

「無理だよん。普通はね。でも、あれは普通じゃないからね。」


 なるほど、無理矢理だから綻びみたいなのがあるんだね。


 相手の契約は強制的な物だ。

 正しい手順を踏んでいない。

 だから、弄ろうと思えば弄れるという事だ。


「でも、厄介な事に心が繋ぎ合ってるからね。ちと、大変。」

「大変って、駄目じゃないか。」

「うん。だからこそ、この子が必要なんだよ。繋がりが深ければ誘導できるからね。」


 心という物は、強い絆に引かれ合うものだ。

 だから、強い絆で引っ張りだす事が出来る。

 それが出来るのは、共に過ごしたユリーシャだけだ。


「私はどうすれば。」

「祈るんだよ。そうすれば、より強く誘導できる。」

「は、はい。祈るなら得意です。」


 両手を重ねて祈るように胸に当てる。

 祈るのは巫女の仕事だ。

 いつも通りにすればいい。


「頑張れ、ユリーシャ。それで、私は何をすればいい?」


 何でもするよ。


「んーと。無い!」

「えっ。」


 えっ。

 まさかの肩透かし?


「だって、本来なら君たちは異質な存在なんだよ? だから、計画に入ってないの。」

「でも、出来る事ぐらいあるだろう。」

「ん、じゃあ。鎖に聖火でも灯しといて。繋がりやすくなるかもだし。」

「なんか、扱いが適当だなっ!」


 それでもと、フィーが鎖を持つ。

 そして、聖火を流し込む。

 すると、鎖が紫の火に染まる。


「暖かいです。」

「巫女の力と同質な存在だからね。君の体に馴染むはずだよ。」


 聖火と巫女の力は似た物どうし。

 なので、体が聖火を受け入れるのだ。

 しかし、森の王は別だ。


「ぐぬう。体が焼けるわい。」

「じゃあ、とっとと離れてよ。そうしたら楽に書き替えれるのに。」

「断る! ここまで来るのに、どれほど苦労したと思っている!」

「私はそこまで苦労してないかなぁ。」

「貴様の事ではない! くそう、こうなればっ!」


 森の王が結界を作り出す。

 それが鎖を挟んで、紫の聖火の流れを防ぐ。

 もちろん、防ぐのは繋がりも同じだ。


「ぐっ。やってくれるねぇ。」

「どうしたっ、大丈夫かっ!」

「ちょっち、やばめだね。繋がりが薄れた。」

「ふっ。諦めたら苦労はせぬぞ? ほっほっ。」


 森の王は苦しみながらも抗っている。

 それほど手放したくは無いようだ。


「もうちょっとなのにっ。ねぇ。あれ、壊して。」

「了解した。」


 フィーが鎖から手を離して剣を構える。

 すると、光の鎖が細くなる。


「あっ。聖火を止めないで。君の力が無いと切れちゃう。」

「ちょっ。さっきと言ってる事が違うぞ!」

「まさか、聖火がここまで凄いとはね。興味深い。」

「言ってる場合かっ!」


 言ってる場合かっ!

 どうすればいいのさ。


 慌ててフィーが、鎖に聖火を走らせる。

 すると、鎖もまた太くなる。


「で、どうすればいい。」

「聖火でこじ開けれない?」

「ふぅ、やってみよう。」


 紫の聖火が膨れ上がる。

 そして、鎖の周りの結界をこじ開ける。

 しかし、それは一瞬の事だ。


「無駄じゃ! それしきの聖火でっ。」

「くそっ、無理か。」

「うーん、だよねぇ。出来るんなら、こんな回りくどい事してないし。」


 森の王の力は、そうとう減ったはずだ。

 それでも、元の力は凄まじいものだ。

 どうにか出来るのなら、力押しでやっている。


「まったく。私達がいなければどうするつもりだったんだ?」

「全面戦争してたかな? そんで、手足をもいで無理矢理にね。その代わり、この辺の地形が無くなるけど。今からしても良いよ?」

「ぐっ。却下だ、却下。このまま続投だ!」

「あのう。物騒な話をされると集中が・・・。」


 村の安全を脅かされる話をしているのだ。

 村人のユリーシャには、気になってしまう話だろう。


「大丈夫、大丈夫。ほら、集中。」

「誰のせいだと。しかし、手がないのは事実か。方法を考えねばな。」


 膠着状態なのには変わらない。

 しかも、いつまでも鎖が持つとも限らない。

 このままではいかないだろう。


 仕方ないなぁ。

 フィー、気づけっ。


 ガタガタお面を揺らす。

 すると、フィーがお面に触れる。


「何かあるのか?」


 あるよ。


 再び揺れて返事する。

 すると、通じたのかフィーが後ろを向く。


「おい。置けた穴を固定できるか?」

「んー。少しなら?」

「なら、頼む。」

「よく分かんないけど。出てきて、影姫。」


 直後、答えるようにキュリアの影が膨れ上がる。

 そして、それに顔のような物が出来上がる。

 更に、枝のような物が複数伸びていく。

 そうして出来上がったのは、悲鳴をあげているような顔が付いた不気味な黒い樹だ。

 枝にはドクロのような実が付いている。


 なにあれっ。

 ホラー過ぎるよ!


「良いよ。やっちゃって。」

「分かった、行くぞ!」


 再び聖火を注ぎ込む。

 すると、結界の穴を作って広げる。


「ぐぬおっ。負けるかっ!」

「ぐっ。頼むっ!」

「はいよっ。」


 後ろの木から実が消えた。

 そして、樹にある顔が咀嚼した後に、ヘドロのようなものを吐き出した。

 それが結界にまとわりつくと、氷に変化して結界の穴を固定する。


 こっちのがよく分かんないけど充分。

 後は、俺の出番だ!


「また揺れた。あれで良いんだな。じゃあ。」


 伝わったのか、フィーが鎖を離してお面を掴む。

 そして、お面を取って振りかぶる。


「任せたっ!」


 そう言って、開けた穴へとお面を投げる。

 それを抜けると、元の姿に戻る。

 それと同時に、火の玉を作る。

 聖火を作れるのは、お面の時だけらしい。


「何をっ。そんなもんじゃ、ワシには効かぬぞ!」


 知ってるよっ。

 だから、圧縮、だよねっ!


 ありったけを火の玉に込める。

 そして、小さくまとめていく。

 森の王がしていたように。


「馬鹿なっ。」


 そんじゃ、行くよっ!


 勢いのまま、森の王へと飛び込む。

 相手は、鎖で逃げれない。


 そして、火の玉を相手の顔へと叩き込む。


 すると、火の玉が相手の顔に当たって爆発する。


「がはっ。」


 その威力に、森の王が気絶する。

 そして、口から煙を吐きながら倒れてしまう。

 すると、鎧から光が飛び出した。


「捕らえた! 完全にっ!」


 鎖が強く光り出す。

 そして、鎧から飛び出た何かを引っ張りあげる。


「さぁ。祈って!」

「コロ、コロっ。」


 ユリーシャが祈る。

 すると、昔の思い出が浮かび上がる。


『あなたは誰?』


ワン。


 村の空き地でコロと出会った。

 丁度、舞いの練習が上手くいかなかった時だ。


『魔物? 誰かに見つかったら大変。』


 捕まえようとした時、コロが倒れた。


『あなたっ、どうしたのっ!?』


 そうする事も出来ずに、私が見る事になった。

 それから、家の食べ物を黙って持ち出しては与える。

 そんな毎日だった。

 幸いにも、ここの広場に人はこない。

 だから、元気になるまで見続けた。


『あれ、もういいの?』


ワン。


 そのお陰か、その子は元気になった。

 楽しそうに、私の周りを駆け回る。

 そして、私に向かって飛び込んできた。


『きゃっ。もう、元気にもほどがあるよ。』


ワン。


 それでも、笑顔が溢れた。

 元気なこの子が微笑ましい。

 しかし、次の日からいなくなってしまった。


『どこに行ったの?』


 探してもどこにもいない。

 そうして、諦めてから次の年にその子はいた。


『あっ、久し振り!』


 それから、空いた時間に広場に行くようになった。


『今日はなにして遊ぶ?』


 すると、その子が走ってこちらを見た。


ワン。


『かけっこね。負けないよ。』


 それから、ずっと毎日遊び続けた。

 疲れた時には、あの子を膝の上に寝かしてあげる。

 そうして過ごしているとまたいなくなる。

 それでも、次の年にはやってくる。


『また来たの? 君、って、名前が無いと不便。そうだ。』


 その子を担いで目を合わせる。


『あなたはコロ。よろしくね。』


ワン。


 嬉しそうに吠えて尻尾を振る。

 言葉は分からない。

 でも、気に入ってくれたように私は思う。


『じゃあ、コロ遊ぼう?』


ワン。


 そうしてまた、一緒の毎日を過ごした。

 短い間の時間だけ。

 それでも、人生で一番充実した時間だった。

 でも、ある年を境に来なくなってしまった。


『コロ。どこに行ったの? 私の事が嫌いになったの?』


 返事はない。

 もうコロはいない。

 それでも私はこの時期になると探し続けた。

 それでもコロは現れない。


 直後、辺りが真っ白に染まる。


「ここは? フィーさん? にゃんすけさん?」


 意識ははっきりしない。

 そんな空間に立っていた。


「どこ? みんなっ!」


 不安から駆け出した。

 真っ白な世界をただ走っていく。


「誰かいる。」


 目の前に大きな魔物が現れた。

 体から緑の炎が漏れだしている。


「コロ、だよね?」


 姿は違う。

 それでも分かる。

 この子はコロだ。


「元気だった?」


 コロは答えない。

 ただ、こちらを見ている。


「ずっと不安だったの。嫌われたんじゃないかって。もう会えないんじゃないかって。」


 ユリーシャが俯いた。

 そして、涙を溢す。


「名前嫌だった? 私と遊ぶの嫌だった? 友達だったのは私だけなの?」


 嫌なら嫌といって欲しい。

 そうやって、自分に言い聞かせていた。


「もしそうなら諦める。でも、直接聞きたい。だから、ずっと探してたの。」


 すると、コロがユリーシャに近づいた。

 そして、顔を擦り付ける。

 慰めるように。


「でも、やっぱり無理。また会いたい。また、遊びたい。」


 ずっと我慢してた。

 独りよがりに付き合わせたくなくて。

 だから、ずっと言い訳をしてた。

 でも、もう隠すのは限界だ。


「コロ! 帰ってきて! また、あなたとっ! 一緒にいたい!」


 心からの叫びだ。

 コロに伝わるように。

 しかし、辺りの景色がぶれだした。

 

「コロっ!」


 コロが消えていく。

 私から離れていくように。


「やっぱり嫌だったの?」


 嫌だから、消えようとしている。

 しかし、後ろからの声が否定する。


「邪魔が入っただけだよ。でも、しっかり繋いだから大丈夫。もっと呼びかけて。」


 その言葉に意識をはっきりさせる。

 いつの間にか現実に戻って来ていた。


「ほらっ。呼び掛けて。」

「はいっ。コロっ!」


 鎧から飛び出た光りが獣の姿に変わっている。

 そこから伸びた鎖をフィーと俺が引っ張っている。


「ほらっ。しっかり引っ張って。」

「やってるだろ! これでも怪我人だぞ!」

「もう少し何だよ。ほら、しっかり。」

「うおおっ!」


 だんだんと、飛び出た光りが増えていく。

 そうして、魔物の形に変わっていく。


「あと、もう一押し!」

「ぐっ。引っ張るより押すのが早い! にゃんすけ!」


にゃっ!


 任せてっ!


 要するに、強い力があればいいのだ。

 フィーが構えた剣の点へと飛ぶ。


「合わせろ!」


にゃ!


 剣から鎖へのポイントダッシュ。

 フィーの力も加わった一撃で鎖を蹴る。


「コローーー!」


 ユリーシャの声に光が反応した。

 光自身も動き、引っ張られる鎖に協力する。

 すると、すべての光が飛び出した。


「コロっ!」


 ユリーシャが駆け出した。

 そして、光りもまたユリーシャに向かう。


ワン。


 光が声を放つ。

 そして、小さい姿になってユリーシャに飛び込んだ。


「コロ良かった。良かった。」


 抱きついたコロに涙が落ちる。

 それに対して、コロが顔をユリーシャに擦り付ける。

 その姿を、俺達が見守る。

 感動の再会の姿に心を温めながら

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