真の黒幕?です
「なぜじゃ。なぜ半端な力に押されるのじゃ。」
まだ相手は大丈夫なようだ。
後ろに下がって距離を取っている。
「なぜ、装身にも至らぬ力で完全なる心装が破れるのじゃ。」
確かにそうだね。
思ったより戦えてたね。
「まさか、力を失って?」
最初の威力は、全く出ていなかった。
明らかに弱くなっている。
装身もどきでも戦えるぐらいには。
森の王が鎧を確かめる。
「間違いない。力がいくらか抜けておる。なぜじゃ。」
目を見開いて考えている。
あまりの展開に、驚きを隠せないようだ。
「魔方陣は完璧だったはず。計算通りなら、こんな事は無いはずじゃ。」
自分の作った魔方陣を思い返しているようだ。
何度見ても間違いはない。
ならばと、一つの答えに行き着いた。
「まさか、鏡か?」
「鏡? 鏡がどうしたんだ?」
魔方陣が問題ないのなら、その他に原因がある。
そうなると、鏡しかないのだが・・・。
森の王が鏡に駆け寄った。
「まさか、失敗作か?」
「そうなのか? ユリーシャ。」
「いえ。去年のはちゃんと作動してました。今年は違うなんてありえないです。」
作った者が同じなら、去年と同様のはずだ。
なので、間違いなく完成されたものだろう。
ならば、残る可能性は一つ。
「ならば、一体なぜっ・・・。まさか、偽物か? あの娘、偽物とすり替えたのかっ!」
あの娘とは、キュリアの事だろう。
運んでいるうちに、偽物とすり替えたとしか考えられない。
そのはずだったが。
「残念。それは、間違いなく本物だよ。」
しかし、その場に響く声がそれを否定する。
そちらを見ると、逆さに立つキュリアがいた。
うわっ、出た。
って、何で逆さま?
「おい。邪魔しないんじゃ無かったのか?」
「邪魔しに来たわけじゃないよ? だから気にしないでね。」
手をひらひらと振って、無罪を主張している。
どうやら、森の王のピンチに駆けつけたようではないらしい。
「・・・ちなみに、何で逆さまなんだ?」
「ん? 答えは簡単、普通に立つのに飽きたからさ。」
何を考えているのかよく分からん。
元からだけど。
「そんな事よりっ。なぜ計算が狂っておるんじゃ!」
「当然、私がリミッターをかけたからさ。」
「リミッターじゃと!?」
やっぱり原因があったようだ。
しかも、キュリアが何かをしたようだ。
「うん。一定の力を出したと同時に、鏡の力が反転するっていうね。」
「反転じゃと? 鏡の力は力の収集。まさか。」
「そ、放出だよん。」
収集の逆は放出。
力を使いすぎると、溜めた力を吐き出すようになっていたようだ。
「ふざけるなっ。そんなの命令した覚えがないぞ!」
「だって、試したかったんだもん。普通にやっても成功するって分かってたし。それじゃあ、つまらないよね?」
酷いっ。
いや、敵だから同情しないけどね?
「お陰で、実験だいせーこー! ご協力、ありがとうね。」
もしかして仲間割れ?
キュリアがお腹を抱えて笑っている。
まるで、相手を馬鹿にするように。
「くそっ。くそ、くそ、くそっ! 今すぐ戻すんじゃ!」
「え? やだ。めんどくさいし。」
「ふざっ。約束はどうしたっ!」
「うん。見せてくれるんだよね? 充分堪能したよ。って事で、はい、しゅーりょー。ね?」
ね? って言われても。
納得しないんじゃない?
一方的な通告を受け入れる訳がない。
実際、森の王が悔しそうに地面を強く踏んでいる。
「くそっ。人の実験で遊びやがって!」
「君だって、人で実験してるよね? いや、聖獣か。」
そういう問題?
「どっちでもいい! 人間なんて信じるんじゃなかったわい!」
「悪い魔物を信じる人間がいるとでも? 是非、見てみたいね。」
完全に煽ってるね。
というか、始めから協力する気は無かったんだ。
「一体何が起こってるんだ?」
「さぁ。何が何やらです。」
フィーとユリーシャが、おいてけぼりにあっている。
話の展開に、ついていけて無いようだ。
「ぐうっ。つまり、協力関係を切るって事でいいんじゃな?」
「いいよ。始めから魔方陣の実験にしか興味ないし。それに今は。」
キュリアが影の中に飛び込んだ。
その直後、フィーの前に現れる。
「君達の方が興味あるかな?」
「っ!」
ひっ!
だから怖いんだよ。
こっち見ないで。
「ふふーん。君、やっぱり精霊だったんだね?」
「っ。知ってたのか?」
「うん。言ったよね? 私のと同じ契約精霊だって。」
キュリアは、楽しそうにお面をつついている。
最初から知っていたようだ。
「それと、その子にも言ったよ? どうして契約獣の振りをしてるんだって。」
「ん? そうなのか?」
言ってたけど。
まさか、獣の方を聞いてたなんて。
「ま、聖獣かどうかは分かんなかったけどね。でも良かったよ。私の計画を越えてくれたんだもん。ここまで揃えるのに苦労したからね。」
キュリアが楽しそうに回りだす。
全ての努力が報われた幸せに酔っているのだ。
「計画じゃとっ!? じゃあ、全て貴様が仕組んだとでも言うのかっ!」
「そうだよ。まさか、自分が用意したと思ってるの?」
ぴたりと回転を止めて森の王を見る。
そう、全てはキュリアが仕組んだ事なのだ。
要するに、真の黒幕って事か。
あいつの計画もまた、この人の手のひらの上だったんだね。
「まさか、元凶だったとはな。目的はなんだ?」
「まぁね。元々、この辺りの不穏な空気を調査してたんだ。そしたら、面白そうな事してたから乗っかっちゃった。ついでに、あの爺ちゃんの弱体化も狙ってね。」
「一応は、動いてはいたんだな。」
一応は、なんだね。
「だって、あの爺ちゃん強いし。戦うとなると、あの村まで巻き込んでたかもだしね。だから、被害を抑える方法を考えた末の結論だよ? むしろ、感謝してほしいぐらいだよ。」
だから、スパイのスパイみたいな事をしたのか。
そう思うと、怒るに怒れないね。
「いやぁ、ここまで準備するの大変だったよ。君の力があれば助けれる! なんて演技なんかしちゃったりね。」
「あっ、私に教えてくれた職員の人!」
ユリーシャを呼んだのはキュリアのようだ。
わざわざ変装してまでだ。
「ユリーシャを呼んだのはあんたかっ。なんでこんな所に。」
「そりゃあもう、必要だからだよ。彼女の力がね。」
「私の力? 巫女の力ですか?」
「違うよん。必要なのは、あの聖獣と結んだ絆の方。」
それは、コロと共に過ごした事により芽生えたもの。
そして、友達として過ごす事により強くなったもの。
「そこまでして何を企んでおる!」
「んー。そうだね。そろそろ始めようか。いい感じに力も抜けてるだろうしね。」
キュリアが、どこからか光を取り出した。
例の魔法で隠してたものだ。
「それって、あの光の。おいっ、コロを傷つけるのは許さんぞ!」
「あー。大丈夫、大丈夫。見てて。」
キュリアが光を掴むと、長い棒に変化する。
そして、それを森の王へと投げつける。
「ぐうっ。なんじゃ!」
危険を察してか森の王が逃げ出そうとする。
しかし、自由に体が動かずに倒れてしまう。
「何って、見ればわかるよ。」
光の棒が、倒れた森の王へと突き刺さる。
すると、そこから魔方陣が広がっていく。
そして、そこから鎖が伸びて鎧を包む。
コロを捕まえた魔法のようだ。
「これはっ、ワシの大魔法っ!」
「即席だけどね。弱った君を捕らえるのは充分なはずだよ?」
「ぐっ。離せ! このっ!」
「無駄だよん。それが無理な事ぐらい、君が一番知ってるよね?」
作った本人が詳しいのは当然である。
それでも、逃げようと暴れ続けている。
しかし、鎖は森の王を捕らえて離さない。
そのまま宙へと浮いていく。
「ほいっ。次っ!」
更に、森の王から出てる鎖がキュリアに伸びる。
そして、それを掴み取るとユリーシャに繋げる。
「えっえっ!?」
「落ち着いてね。すぐだから。」
いきなりの事でユリーシャが驚いている。
そんなユリーシャに、落ち着くように言い聞かせる。
「準備完了っと。それじゃ、始めようか。強制契約の上書きをね。」
最後に、ユリーシャの背中に手を当てにやっと笑う。




