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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
幻影染める月と二つの戦の国<後編> リラリアハル王国編

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会談です

 城の前で待つ事しばらく。

 遠くから車輪の音が聞こえてくる。

 すると、複数の馬車が近づいてくる。

 それらの馬車が、玄関の前で停車すると…。 


「着きました。どうぞ。」


 従者の一人が、馬車の扉を開ける。

 すると、中から見慣れた剣を携えた男が降りてきた。

 その直後、促されるように王や王女が降りてくる。


「すまんな。」

「ご苦労様です。」


 従者の方を労りながらも、馬車を降りて城を見る。

 そんな二人を招くように、イルラートが駆け寄る。


「お父様、お母様。無事に来られる事が出来たのですね。」

「おぉ、イルラートか。うむ。案外すんなりとな。」

「えぇ。これも、皆様が頑張って下さったお陰でしょうね。」


 二つの国の間にいた魔物や兵達はもういない。

 全ては、元凶の魔族がいなくなったからだ。

 ならば、道中が安全なのも当然だ。

 そんな話をしていると、こちらの国の王と王女が近づいてくる。

 その後ろには、二人の王女と剣聖が控える。

 そんな王族達の前にイオフィが出る。


「ハンターギルドの者です。王のお願いにて、仲介させていただきます。」

「おうそうか。では、そちらの方が?」

「はい。現国王と女王となります。」


 隣国の王へと紹介するイオフィ。

 すると、こちらの王が気まずそうにしながらも前に出る。

 そうしながらも、自身の胸に手をあて敬意を示す。


「よく来て下さった。本来なら、こちらから赴かなくてはならないのですが。」

「いえ、話は聞いていますよ。一連の事件で怪我を負っているのでしょう? こちらとしても、無理をさせるつもりはありませんから。」

「万全に会談を行う為にも、必要な事ですからね。」


 事件を起こしたこちらの王族が出向くべきだとの判断だろう。

 しかし、会談を万全に行う為にも両者が健康でなくてはならない。

 その為にもと、怪我のない隣国が合わせた形だ。

 それを聞いたこちらの王が頭を下げる。


「そうですか。その心遣い、痛み入る。ならば、せめて歓迎させて頂きたい。どうぞ中へ。」


 王に導かれるように、隣国の王族や従者達が城の中へと入っていく。

 その様子を、横から俺達が眺める。


「思ったより、順調そうじゃねぇか。」

「険悪な感じもなさそうだな。」

「うん。これならきっと上手く行くよね。」


 だと良いよね。


 事のなり行きを見守る俺達。

 出だしは好調だ。

 心配する事はないだろう。

 しかしと、タリックが呟く。


「でも、こっから先は結果待ちなんだよねー。」

「ですね。私達では立ち入る事は難しいでしょう。」

「そうなんだよな。もどかしいぜ。」


 これから行われるのは、国の王族同士の会談だ。

 関係のない俺達では、立ち入る事すら出来ない。

 と、思われていた時だった。


「では、一緒に来られますか?」

「ん?」


 突然の声に、聞こえた方を見る俺達。

 そこには、イルラートが立っていた。


「気になるのなら、一緒に聞けば良いんですよ。」

「でも良いのか? 部外者なんだぜ?」

「いえいえ。立役者達をのけ者にする程お恩知らずではありませんよ。さ、行きましょう?」

「お、おう。」


 本当に良いのかな?


 戸惑いながらも、イルラートに着いていく俺達。

 豪華な装飾がされた扉へと案内される。

 その際、部屋を見張る騎士と目が合うもお辞儀をされるだけだ。

 そうして、従者が開いた扉へと俺達は入っていく。

 その部屋の中を、イルラートが見渡すと…。


「それでは…えーと、取りあえず皆さんの分の椅子を用意して貰って良いですか?」

「承りました。」


 イルラートの指示で、部屋の隅に椅子が用意されていく。

 それを、イルラートが確認すると…。


「では、椅子に座って待ってて下さいね。すぐに始まると思いますから。」

「おう。ありがとな。」

「いえいえ。では、私は両親と合流しますので。」

「あぁ。じゃあな。」


 じゃあねー。


 イルラートもまたイルラートで準備があるのだ。

 そんなイルラートを見送ってしばらくの事だ。

 言葉通り、両方の王族が部屋へと入ってくる。


「では、お座り下さい。」


 こちらの王に促され、隣国の王族が椅子へと座る。

 それを見届けると、こちらの王族もまた座っていく。

 そして、両者に挟まれるような場所でイオフィが座る。


「では、始めるとしましょうか。お互いのこれからについての話し合いを。」

「えぇ。いつでも構いません。」

「こちらも同じく。」


 イオフィの言葉に頷き合う両国の王。

 どちらも準備は出来ている。

 それを見たイオフィが頷き返す。


「では、まずは今回会談に至った理由ですが…。」

「その前に良いですか?」

「どうぞ。」


 この国の王がイオフィを遮る。

 そうして、許可を得た王が隣国の王を見る。


「まずは、謝罪をさせて頂きたい。今回の件、申し訳ない。全ては、こちらの落ち度だ。」


 そう言いながら、頭を下げる王。

 会談するにあたり、謝りたかったのだろう。

 それに対して、隣国の王が首を横に振る。


「いえ。きっかけを作ったこちらにも落ち度がある。それに、元は魔族のせいでもあるのだ。頭を上げられよ。」

「しかし、その魔族を信じて行動したのは事実。その結果、多くの被害を生んでしまった。まずは、それを謝らずして話は進められぬ。」


 魔族が原因とはいえ、従ったのは事実だ。

 それを謝らずして、公平な話し合いなど出来やしない。

 それでも、隣国の王は否定する。


「そうですか。とはいえ、被害が大きいのはそちらの筈。こちらは大変な思いをしただけに過ぎませんからな。」


 隣国の影響は、戦と大量の魔物によるぐらいなものだ。

 それでもと、身内の女王が呟く。


「その割には、泣き喚いていましたけどね。」

「おいっ。こんな時になぁっ。」


 笑顔で茶化す女王へと、こっそり突っ込みを入れる隣国の王。

 その横で、イルラートもまた笑顔で口元を押さえている。

 そんなやり取りを誤魔化すように隣国の王が咳払いをする。


「ごほん。ともかくだ。こちらは大変だったで済んだことです。なので、この事で心を痛める必要はないでしょう。それに…。」

「それに?」

「私が同じ立場なら、同じ選択をしていたでしょうから。」


 そう答える隣国の王。

 自身の国が危うい目に合うかもしれないのだ。

 ならば、同じく目の前の誘惑に乗っていただろう。

 それを聞いたこちらの王が目を閉じる。


「その言葉、別の者にも言われました。」


 そう言いながら、部屋の隅にいるフィーを見る。

 まさに、戦闘中にフィーに言われた言葉だ。

 すると、それを聞いた隣国の王が笑う。


「はっはっ。そうでしょうな。魔族だろうが、国を救えるのなら飛び付くのが王の役目。ただ、今回はそちらの番だっただけの事です。仕方のない事でしょうぞ。」

「そう言っていただき感謝する。」


 しっかりと、隣国の王の言葉を噛み締める。

 その言葉だけで、こちらの王の心は救われるのだ。

 そんな王に構わず、隣国の王が続ける。


「そういう事なので、こちらの事は気にしないで大丈夫。それよりも、その言葉は自国の者達に向けて下され。」

「そうか。では、巻き込んでしまった者達に深く詫びるとする。」

「それが良いでしょうな。そう言えば、こちらのハンターギルドがそちらの兵を預けていると聞いたのですが?」


 そう言いながら、当の職員であるイオフィを見る。

 ハンターギルドが回収した、元不死身の兵の事だ。

 話を振られたイオフィが頷く。


「はい。現在、ギルドにて治療中です。それが済めば、そちらに送るつもりです。ただ、人数ゆえに時間がかかりそうではありますが。」

「では、こちらで迎えに行こう。時間をかけてでも、元の居場所に戻すとしましょう。国王の名にかけて。」


 巻き込んでしまった者達を、いるべき場所へと戻す。

 それもまた、責任ある者としての役目だ。

 それを聞いた隣国の王は満足そうに頷く。


「うむ。では、これでお互いのいがみ合いは一旦止めにしましょう。大事なのは、これからなのですからね。そうですよね? ギルドの方。」

「はい。今回の事件を得て、重要な事が分かりました。それは、お互いの国が血の繋がりがあった事です。それに関しては、そちらの王女の方が詳しいでしょう。」


 そう言いながら、話を聞いているイルラートを見るイオフィ。

 全ては、イルラートが気づいたからこそ分かった事だ。

 そうして、話を振られたイルラートが頷く。


「えぇ。その通りです。我々は、元は一つの一族だった。そして、霊脈を奪い合っていたのではなく、強い力を分散して和らげる関係だったのです。それが、時代が進むにつれて廃れてしまった。」


 奪い合うどころか協力する関係だった。

 だというのに、廃れて忘れられてしまったのだ。

 それを聞いたイオフィが質問する。


「そうして、二つの国は争い合う関係となってしまったのですね?」

「えぇ。つまり、我らに争う理由など何処にもなかったのです。それは、そちらの王女もまた知る事です。」

「はい。発見した場に居合わせた者として証明します。」

「同じく。」


 イルラートの言葉に同意する、こちらの姉妹の王女。

 今まで争ってきた理由は、霊脈を奪い合う為だ。

 しかし、それは新たに見つかった資料によって否定された。

 それを聞いたイオフィが頷く。


「要するに、これ以上は争う必要はないという事です。その為の、今回の会談という事でよろしいですね?」

「あぁ。」「うむ。」


 イオフィの言葉に頷き合う両国の王。

 必要のない争いを止める為の今回の会談なのだ。

 それを確認したところで、隣国の王がこちらの王を見る。


「我が国は資料に書かれていたような、かつての関係に戻る事を望む。戦のない、お互いが協力し合うような関係にな。」

「こちらもだ。無駄に争い合うよりずっと良い。」

「そうだな。傷つくのはもう勘弁だ。」

「魔族に利用される事もな。」


 争う必要がないのなら、争わないのが一番良い。

 それは、お互いの国が思うところのようだ。

 争うより、協力する方が一番良いのだから。

 そんな両者を見て、イオフィが頷く。


「では、争いは本日をもって終結。これからは、お互いが協力して霊脈を管理し合う。という事でよろしいですね?」

「あぁ。」「うむ。」

「では、両者前に出て宣言をお願いします。」


 イオフィに促されるように前に出る両国の王。

 すると、一同が見渡せる場所にて並び立つ。


「我が国は、本日をもって争いを終結する事を宣言する。」

「同じく。我が国も争いを終結する事を宣言する。無駄に血を流すのは、本日限りだ。」

「これからよろしく頼む。」

「こちらこそだ。」


 そう言いながら、お互い握手し合う。

 これで、お互いが血を流し合う事はなくなるだろう。

 その様子を見て、部屋にいる者達が拍手で歓迎する。


「詳しい調停は後日するとしてだ。まずは、そちらの王女を助けないとだ。すぐに今の偏った霊脈を正した方が良いだろう。」

「あぁ。今は元に戻すとして、それによる影響を調査しないとだ。」

「ふっ。やる事が一杯だな。」

「でも、大丈夫だろう。我らが力を合わせればな。」


 影響があるからこそ今まで奪い合ってきた。

 それを戻すとなると、影響もまた戻ってしまうだろう。

 しかし、心配する事はない。

 これからは、力を合わせていく事が出来るのだから。

 しかし、問題はそれだけではない。


「これで、国の事は大丈夫だ。後は、国民が受け入れてくれるかどうかだが…。」

「難しいだろう。散々お互いを敵だと教えてきたのだ。それをいきなり、今日から仲良くしようと言ってもな。」

「混乱するのは間違いないだろう。」


 やはり、そこに直結するのだ。

 敵だった者といきなり仲良くは無理がある。

 いきなり感情を変えろと言うのは不可能なのだから。

 ならばと、リーグルが手を上げる。


「それについてなんだが、ちょっと良いか?」

「む? どうした?」

「おう…あぁ、丁度その事について話したばかりでな。俺達に任せてくれないか?」


 先程話したばかりの内容だ。

 なので、解決する為の手段はもうある。

 それを聞いたこちらの王が興味深そうに質問する。


「ほう。何か提案があるんだな?」

「あぁ。マーカス劇団で演劇するんだ。そうやって、両国の架け橋になってやれれば仲も良くなるってな。」

「皆で笑えば、いざこざもあっという間だもんね。」

「あぁ。劇団ならやってくれるだろうな。」


にゃ!


 劇団に任せてよ!


 マーカス劇団を通じて、お互いの仲を取り持つ。

 そうすれば、仲良く交流出来るとの話だ。

 しかし、こちらの王が悩み出す。


「そうか。しかし、受け入れてくれるものか。第一話す手段も持ち合わせていない。」

「俺達がいる。こうみえて、劇団の一員なんでな。」

「そうなのか?」

「そうだ。だよな? リリア、ディル。」

「うん、間違いないよ。お父様。」

「結構良いもんだぜ? 演劇。」


 リーグル達なら、マーカス劇団とも話し合える。

 なので、受け入れてくれるかも分かる。

 後は、国が認めてくれるだけだ。

 それを聞いたこちらの王が頷く。


「お前達が言うなら間違いないだろうな。では、頼もうか。力添えをしてくれるのなら心強い。ただ、そちらの国が良いのなら…だけどな。」


 そう言いながら、隣国の王を見るこちらの王。

 どちらにせよ、こちらの決断では出来ない事だ。

 すると、それを聞いた隣国の王もまた頷く。


「劇団に演劇か。楽しそうではないか。なぁ?」

「そうですね。ぜひ、我々も協力しましょうか。」

「はい。実は話を聞いてて興味があったんですよね。」


 隣国の王の提案に乗っかる女王とイルラート。

 どうやら、好意的に受け入れてくれているようだ。

 ならばと、こちらの王が頷く。


「では、交流の第一段はマーカス劇団に決まりだな。」

「うむ。早速場所や日取りを決めなくてはな。」

「そうだな。出来るだけ、お互いの国民が行きやすい場所が良い。」


 話が決まると、早速話が進んでいく。

 なんだかんだお互い盛り上がっているようだ。

 すると、リーグルが割り込む。


「出来るだけ早くで頼む。それとだ。」

「どうした?」

「今回の事件で協力してくれた奴らを招待してぇんだ。」

「もしかして、お礼の為だね?」

「そういうこった。丁度良い機会だからな。」


 シャルの言葉を肯定するリーグル。

 一度、お礼をしたいと思っていたところだ。

 ならば、演劇で返すのが良いと思ったのだろう。

 すると、それを聞いたこちらの王が頷く。


「良い考えだ。なんとかなるように手配しよう。」

「こちらもだ。すぐに兵をかき集めようぞ。」

「では、私はハンターの皆さんを集めますね。」


 隣国の王やイオフィもまた乗っかってくる。

 これで、思い残す事なく挑めるだろう。

 そうして、こちらの王が拳を上げる。


「では、早速霊脈の件とマーカス劇団の件に取りかかろう。」

「お互いの友好とこれからに向けてだな。」

「あぁ。我々の初めての協力だ。絶対に成功させよう。」

「「「おーーー!」」」


 意気込みを一つに、王達が拳を上げる。

 それに合わせて、従者達もまた拳を上げる。

 こうして、お互いの未来の為に両国が動き出すのだった。


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