果樹園に囲われた村に着きました
竜車に戻ると中に乗り込む。
運転席を見ると、何処かに連絡をしているようだ。
恐らく、ギルドに死体の回収を頼んでいるのだろう。
終わったのを確認すると、運転手に声をかける。
「討伐完了した。進んでくれ。」
「ど、どうも。では、動かしますんで席にお願いします。」
「分かった。」
運転手に促され席に戻る。
すると、それと同時に馬車が動き出す。
馬車は死体の横を通り先へ。
目的の場所へと進んでいく。
「そろそろ終点です。荷物のお忘れが無いようお願いしますよ。」
そろそろ、例の村につくようだ。
あれからは、何事もなくのんびりとした旅路が続いた。
外を見れば、沢山の畑に囲まれている。
「さぁ、にゃんすけ。ここまで来ればお役目終了だろう。降りる準備だ。」
にゃん。
あいよー。
果物のパラダイス、いざ到着。
そのまま馬車が村へと入る。
村の入り口は豪華に飾られている。
祭りに来た人達を歓迎しているのだろう。
村の中も出店が並んでおり、いかにも祭りっぽい風景だ。
その中を進んでいくと、停留所にて馬車が止まる。
「ようやくついたか。」
にゃふぅ。
ついたねぇ。
体を動かすと気持ち良い。
馬車を降りて一伸び。
慣れたとは言っても、疲れは溜まる。
うんと体を伸ばして凝りを解す。
「ふぅ。言ってた通り賑やかだな。」
にゃん。
そうだね。
ほんとに有名な場所なんだね。
人通りはとても多い。
全員が、お祭り目当てなのだろう。
そう考えると、どれほど有名なのかが伺える。
「それに、匂いもそこら中からする。」
にゃー。
そうそれ。
先程から匂いが気になって仕方ないんだよね。
おっと、よだれが。
「ふふっ、そんなに楽しみなのか? にゃんすけ。」
にゃん。
どうやら見られていたようだ。
お恥ずかしい。
「早速と言いたい所だけど、まずは報告だ。行くぞ。」
にゃー。
仕事だから仕方ないね。
それぐらい待てますとも。
馬車の停留所でギルドハウスの場所を聞いて歩きだす。
まずは一度、大通りに出る。
そして、出店が並ぶ道を歩いていく。
美味しそう。
はっ、つい目が追ってしまう。
果物の匂いだけではない。
あちこちから、何かを焼いた匂いもする。
出店だけあって、料理も売ってあるのだろう。
「うーん。にゃんすけ程じゃ無いけど、匂いを嗅ぐとお腹が空くな。」
にゃー。
だよねー。
良い匂いが、お腹を刺激するんだよね。
「よし。何かつまみながら行こうか。時間制限も無いんだし、遅れてもいいだろう。」
にゃん。
良いんだよ。
遅れちゃっても良いんだよ。
そう言いながら、少しの立ち寄り。
手始めに、近くの出店を覗いてみる。
「ほう。果物を使った料理ばかりだな。」
「そうだぜ。ここは、果物で有名な村だからな。もしかして、祭りの客か?」
「そんな所だ。お腹が空いたから、何か買おうと思ってな。」
「そうか。じゃあ、サービスしとかないとな。安くしておくぜ。」
「おぉ、ありがたい。」
観光客への歓迎だろう。
早速、フィーが気になった物を包んでもらう。
店員の言う通り、値段は控えめだ。
「じゃあ、楽しんでな。」
「そうさせてもらうよ。」
じゃあね。
親切な店員さん。
満足のいく買い物が出来た。
嬉しい気持ちで歩き出す。
その時だった。
「おーい。こっちも見てくれよ!」
「えっ、今買ったばかりなんだが。」
「こっちもよ。どこよりも安くしておくわ!」
「いや、その。」
「んじゃ、こっちはもっと安くだ!」
あわわわっ。
なにこれっ!
困惑するフィーと俺に、熱狂的な声がかかっていく。
どの店も、お客を呼ぼうと全力なのだ。
その結果。
「買いすぎてしまった。」
だね。
嬉しいけど。
出店の列を抜けた時には、荷物で両手が塞がる程だ。
店員の熱心な呼び掛けに断る事が出来なかったのだ。
「まぁいいか。ほら、にゃんすけ。」
買ってしまった物は仕方ない。
少しでも荷物を減らそうと、取り出した料理を頬張る。
ふにゃあ。
旨い!
柔らかい小麦粉生地の包みと果物の触感が合っている。
パン生地と違うけどこれも良いね。
「へぇ。こんなのもあるんだな。面白いな。」
フィーも味わっているようだ。
様子からするに、食べた事がないのだろう。
それを食べながら、歩くのを再開する。
「食べながら歩く。実家にいたら怒られていただろうな。」
まぁ、誉められたものじゃ無いよね。
お嬢様なら尚更なのも当然か。
でも折角のお祭りだし、多少行儀が悪くても良いと思うよ。
そう言いながら、食べ物を味わいながら歩いていく。
それからも、気になった物を見つけては買っていく。
どれも果物を使った料理だ。
更に歩くと、広場のような場所が見える。
広場の真ん中には、何かの舞台が組み立てられている。
「あれは・・・。ちょっと寄ってみようか。」
にゃん。
よく見るために広場に向かう。
そこにあるのは、どう見ても何かを披露する場所だ。
一段上にあって、それを見上げる形になっている。
「馬車でおじいさんが言っていた奴か。確か、見せ物をするんだったな。」
言ってたね。
すると、ここが会場という事か。
雰囲気もそれっぽい。
「立派な物だ。これを建てるのは大変だろうな。」
にゃー。
そうだね。
運ぶだけでも大変だと思う。
屋根だけでも一軒家の屋根よりも大きい。
これを組み立てるには、一日や二日じゃいかないだろう。
それほど大きい舞台なのだ。
「おーい。そっち確認してくれー。」
「おう。こっちは問題ねーぞ。」
「んじゃあ、全体の強度確かめっか。」
舞台の周りで人が行き交っている。
舞台を作っている人達だろうか。
「邪魔になる前に去った方が良いな。」
にゃん。
そうだね。
迷惑かけたくないし。
まだ、作業中のようだ。
このままいると、邪魔になってしまうだろう。
確認だけすると、そそくさと引き返す。
「じゃあ、今度こそ行くか。」
にゃん。
そうだね。
腹も膨れたし満足だ。
もう晩御飯を食べた感覚だよ。
「確か、この辺りから横道に入るはずだけど。」
しばらく歩くと横道に入る。
目的の場所は、この奥にあるようだ。
匂いが離れていくのが名残惜しい。
ふと、とある建物に目がいった。
「どうした? にゃんすけ。」
にゃー。
あれ、宿屋だよね。
そういえば予約してないよね。
しなくて大丈夫なの?
「何を見て・・・。あー、宿屋か。後で取らないとな。」
にゃ。
本当に取れるかな。
こういう時は、大抵満杯なはずだけど。
不安になってきた。
「その前に、報告が先だ。お金も無くなったしな。ギルドハウスが締まる前に、さっさとすませてしまおう。」
そう言われるとだけど。
まぁ、あくまで俺のいた世界の話だからね。
異世界では違うのかもしれない。
それからしばらく歩いてギルドにつく。
受付に向かって依頼の報告をする。
「はい、フィーさんと・・・相方さんですね。確認しました。報酬を渡すよう言われています。少々お待ちください。」
猫です。
でも相方でもあります。
受付の人が奥の部屋に入っていく。
必要な物を取りに行ったのだろう。
その間に、ギルドハウスの中を見渡す。
「誰もいないな。」
にゃ。
だね。どうしてだろう。
人通りは多いのに。
「それは、出払っているからですよ。」
「出払ってる?」
奥の部屋から戻ってきた受付の人が教えてくれた。
何処かに行っているようだ。
「人が多いですから。警備も、衛兵だけでは足りないんですよ。」
「なるほど。こっちに手伝いの依頼が来ているのか。」
「はい、その通りです。後、祭事に行われる戦いの儀の準備をしている者もいますね。」
そんなのもしてるんだね。
気になるかも。
「祭事か。ハンターも出るんだな。」
「えぇ、ハンターや衛兵。更には一般人も。腕に自信がある片なら皆出てますよ。あなたもどうですか?」
「いや、私は出ないよ。大人しく観戦させて貰うよ。」
「そうですか。まぁ、見るのも楽しいですからね。」
そもそも、目立ちたく無いもんね。
下手に勝とうものなら、実家にばれるだろうし。
すると、受付の人が書類を取り出す。
依頼完了の書類だろう。
「では、書類に名前をお願いしますね。」
「分かった。」
フィーが書類に名前を書く。
これで契約完了。
受付の人が、お金が入った袋を渡す。
「確認しました。では、契約は無事完了という事で。」
「あぁ、それではこれで。」
「はい。あと、出店には気をつけてくださいね。どこも客を集めようと必死なので。」
「うむ。もう少し、早く教えて欲しかったがな。」
フィーが手に持った袋を見せる。
既に、手遅れなのだ。
それを見た受付が気まずそうに笑う。
「あ、あはは。では、楽しんでいって下さいね。」
「あぁ、ありがとう。」
受付の人が手を振って見送りしてくれる。
それに軽く振り返して外へ出る。
気付けばもう日が落ちかけている。
少しばかり寄り道し過ぎたようだ。
「さて。用事も済んだし、宿を取ろうか。」
にゃん。
そうだね。
取れると良いね。
多分大丈夫でしょう。
と、思ってた時が俺にもありました。
「埋まってる?」
「はい。申し訳ありません。」
ですよねー。
この人の数だもん。
異世界とか関係無いよね。
宿屋の人が申し訳無さそうに頭を下げている。
しかし、悪いのはこちらの方だ。
こうなると分かっていたはずの事なのに。
「他に空いてそうなのは。」
「無いですね。はい。」
はい。あるわけ無いよね。
いや、直前まで気づかなかった自分も悪いけど。
これ以上は無理と宿を出る。
周りはもう薄暗い。
新しく探しても無駄だろう。
「さて、宿無しだ。」
宿無しだね。
じゃ、無いんだよ。
どうするのさ。
泊まる場所は無い。
もう野宿するしか無いだろう。
日が落ちる中、ただ立ち尽くすしか出来ないのだった。




