放浪旅再開です
馬車に揺られ外の景色を眺めている。
馬車での旅にはもう慣れた。
今や、景色を楽しむ余裕さえある。
「いい景色だな。」
そうだね。
周りには森しか無い。
でも、地球じゃないってだけで興味が湧くよ。
流石、異世界だね。
馬車は、どこに着くのか分からない。
どうせだからと、警護の仕事を受けたのだ。
行き先は聞いていない。
だからどこに向かっているかは分からない。
でも、放浪旅らしくて良いからとなったのだ。
どうせ行きたい所なんて無いからね。
旅のついでにお金も稼げる。
一石二鳥とは、まさにこの事。
そんなこんなで今に至る。
「はぁ。何か食べたくなるな。」
にゃー。
同じく。
景色を見ながらの食事も良いものだよね。
だけど、前貰った団子は全部食べてしまったんだよね。
「さっきの町で買っておけば良かったな。」
にゃん。
そうだね。
色々あったのに。
あー、お腹すいた。
「なんだい、腹減ってんのかい? 果物ならあるけどどうだ?。」
「良いのか?」
「まぁ、これからいくらでも手に入るしな。」
話しかけて来たのは、隣に座るじいさん。
荷物から果物を出したじいさんがフィーに渡す。
見るからに瑞々しい果物だ。
「ほら。えーと、あんたもどうだ?」
にゃん。
猫です。
ありがとーございます。
早速一口。
甘くて美味しい。
「うん、旨いな。甘みがしっかりしてる。」
「じゃろ? この辺の特産品だからな。かっかっ。」
じいさんが嬉しそうに笑っている。
誉められて嬉しいのだろう。
「特産品という事は、この辺で取れるという事か?」
「ん? そんな事も知らんのか? この馬車の終着地点がその村なんじゃが。」
「すまない。最近旅に出たものでな。右も左も分からないんだ。」
当然この辺りに来た事なんてあるわけが無い。
しかも、行き先も決めずに乗ったのだ。
知らないのも当然だろう。
「なるほど、そういう事じゃったか。どうりで、この馬車に乗っとるのに知らんはずじゃのう。この辺りの者はみんな知っとるはずじゃから驚いたわい。」
「そんなに有名なのか?」
「そうじゃよ。数日後に、豊作を祈る祭りが行われる。だから、この馬車にいるのはそれ目当てが基本じゃよ。」
「なるほど。だから、人が多いんだな。」
馬車の席は全て埋まっている。
この先でお祭りがあるのなら、それも頷ける。
それにしてもお祭りか。
沢山食べ物があるかも。
うん、楽しみだ。
「まぁそういう訳じゃ。旅人さんも楽しんで行くとえぇ。」
「うん、せっかく来たからね。そうさせて貰うよ。」
そう、せっかくだからだね。
もう戦いはこりごり。
今度こそゆったりとした旅にしたいなぁ。
「祭りかぁ。」
楽しそうにフィーが呟く。
フィーに取って初めての祭りだろう。
「嬉しそうじゃな?」
「王都の祭りをちらっと見たぐらいだからな。楽しみだ。」
「ほう、そうかいな。王都ほどじゃあねぇが、こっちもすげぇぞ? なにせ、巫女さんの舞いを見に多くの人が集まるからのぅ。」
こっちにも巫女がいるんだね。
舞って言うと、神様に捧げる的な?
こっちに神がいるか分かんないけど。
「よく分からないが、多くの人が見るなら相当なものだろう。」
「そりゃそうじゃ。大規模な舞台を駆け回る姿は圧巻じゃぞ? しかも、その後にある剣士達の戦いもド派手で腰を抜かすほどじゃよ。」
「なるほど。それは是非見てみたいな。」
うん、見てみたいね。
でも、大勢の中で踊るなんて大変そう。
まぁ、俺は関係ないからいっか。
大事なのは、果実がどれだけ食べれるかだし。
楽しみだなぁ。
そう期待を込めて次の目的地に向かって進んでいく。
それからしばらく経った時の事だ。
「っ! 敵襲だっ!」
「なんだと?」
にゃっ。
去らば平穏。
まぁ仕方ないか。
これも異世界だ。
先程の願いは何処へやら。
早速慌ただしくなってきた。
フィーが立ち上がる。
「ハンターさんっ!」
「分かってるさ。馬車を止めてくれ。」
「へ、へいっ。」
運転手が急いで馬車を止める。
すると、フィーが銛を掴み出入り口に立つ。
すると、じいさんがフィーを見上げる。
「行くのかい?」
「仕事だからな。にゃんすけ、行くぞ。」
にゃん。
俺もフィーの後に続く。
腹ごなしもしたし調子はバッチリだ。
「止まりましたよ。気を付けて下さいね。」
「あぁ。それじゃっ。」
馬車が完全に止まったようだ。
その瞬間、フィーと俺が馬車を飛び出す。
目の前には、二足立ちのとかげの群れ。
「リザードラだったか。まぁ、ゴブリンと変わらんだろうな。」
どちらも同じ二足歩行。
ならば、対処もまた同じだろう。
気付かれぬ内に距離を詰める。
「準備は良いな?」
にゃっ。
おうともさ。
このまま突っ込むよ!
全速力で突っ走る。
すると、一匹がこっちに気付く。
しかしその頃には、槍が胴体を貫いた。
「先手必勝!」
にゃ、にゃっ。
槍を刺したそいつに俺が乗っかる。
そのまま蹴って前に飛び出す。
すると、群れの視線が俺に集まる。
にゃっ!
遅いよっ!
群れがこっちを見た時には、前に飛んでいた。
前の敵に向かってポイントダッシュ。
両足揃えて蹴り飛ばす。
すると、後ろを巻き込みながら飛んでいく。
にゃっ!
まだだよっ!
ついでに火の玉を作って投げる。
すると、吹き飛び団子状になったリザードラに着弾して燃え上がる。
大きな炎の塊の出来上がりだ。
それに満足していると後ろから三つの影。
にゃん。
良いのかい?
後ろなんか見せて。
ここにいるのは俺だけではない。
真ん中の後ろに、銛を構えたフィーが現れる。
「にゃんすけっ、合わせろっ!」
にゃん!
フィーが真ん中を突き刺すと同時に前転。
その隙に、右のから左のへとポイントダッシュ。
二匹まとめて吹き飛ばす。
「よし!」
その片方をフィーが突き刺す。
そして、銛を振ってもう片方へと振り払う。
そのまま二匹が重なった所に銛を突き刺す。
「これで全部か?」
にゃ。にゃっ!
多分。いや、後ろっ!
「ん?」
フィーに向かって焼けたのが五匹迫る。
先程燃やした奴だ。
あれでもまだ死ななかったらしい。
「ふっ、来いっ!」
それに対して、フィーが銛を構える。
そして一匹を払う。
それからもう一匹も払う。
舞うように踊るように、残りのも払っていく。
流石っ、武器が合えば強いのよ。
武器が合えば、だけどね。
「今度はこっちの番だっ!」
踏み込んだフィーが前に出る。
一瞬の事で、相手は気付づく事なく貫かれる。
すぐに、近くの奴が対処するが。
「無駄。」
相手の顔を持ち手で弾く。
そして、首を突き刺す。
すると、そこにもう一匹が迫る。
「気付いてるよ。」
銛を蹴りあげ、後ろの奴の顎に当てる。
それにより、仰け反った相手を突き刺す。
今度は上から別のがくる。
「うん、凄いジャンプだがっ。」
相手は無防備だ。
そのまま叩き落として槍で突き刺す。
「ばれては意味が無いぞ?」
気付かれてしまえばただの的だ。
すると、残りの二匹が一斉に迫る。
「まとめて来たか。にゃんすけっ!」
にゃん!
呼ぶと思ったよ!
片方の後ろに俺が迫る。
そして、もう片方にフィーが迫る。
にゃっ。
そこっ。
二匹がフィーと接触する瞬間に火の玉を投げる。
すると、俺が追ってた方に着弾。
そのまま吹き飛ぶと、フィーともう片方の間に入り込む。
「丁度良い!」
二匹が一直線に並んだのだ。
そのまままとめて、フィーが突き刺す。
「・・・今度こそ、だな。」
動くものはもういない。
全員倒せたようだ。
それを確認すると、フィーが銛を引き抜く。
「さて、戻ろうか。」
にゃっ。
群れを全滅させたので、ここにいる必要はない。
馬車に戻ろうと歩きだす。
その時だった。
「ぐえっ!」
銛が足に絡んですっ転ぶ。
ポンコツ万歳。
これさえ無ければね。
はぁ。
「こんなはずでは。」
ハイハイ、馬車に戻りますよー。
来ないと置いてくよ?
「ま、待ってくれ!」
変わらぬポンコツの相棒を置いて歩きだす。
その後を、急いでフィーが追いかける。




