約束しました〈完〉
ミランが持ってきた、大蛇の肉を加工していく。
フィーが刻んだものを双子とこねていく。
「感触がへん。」
「へんだね。」
でしょ?
やっぱりへん。
こね終えると、丸めていく。
それを、棒で刺していく。
「後は、焼くだけですね。」
「だが、焚き火の火が小さいな。」
「随分時間が立ちましたからね。」
あれから数時間は立っている。
木を継ぎ足す人もいないので、あとは鎮火を待つだけだ。
「まぁ、子供達もいるしこれぐらいで良いと思います。」
「そうだな。」
「始めて良いの?」
「良いの?」
「良いよ。始めてくれ。」
ミランが棒を刺していった団子を焼いていく。
焦げ目が付いたところで一口食べる。
「味もへん。」
「だね。」
「子供には無理だったか?」
「大丈夫だよ。」
「いけるよー。」
大丈夫なようだ。
美味しくない団子を皆で食べる。
「はーい、にゃんすけも食べて。」
「あ、私も。」
申し訳無い。
自分では持ちにくいのです。
ありがたやー。
「おーい。兵士が来たぞー。」
すると、村人がここまで来て叫んだ。
休んでいる村人達が、立ち上がった。
「あー、ようやくかぁ。」
「やっと寝れるぞ。」
各自、自分の家に戻っていく。
これで、作業も楽になるだろう。
「兵士か。思ったより早かったな。」
「兵士嫌いなの?」
「嫌なの?」
「そんな事は無いが。」
フィーが嫌そうな顔をしていると、双子が反応する。
兵士に存在を知られたくは無いのだ。
「もしかして、フィーさんって札付き?」
「違うっ。ただ、私の事をこの辺りに広められたくは無いんだ。」
「へぇー。良く分かりませんが、大変そうですね。」
これでも、元貴族だからね。
有名人の活躍となると、一気に広がっちゃうからね。
「なら、場所変えます?」
「そうして貰うと助かる。」
「じゃあ、私達が案内するよ。」
「良いね。隠れる場所なら得意だよ。」
焼いた団子を盆に乗せていく。
それを持って、その場所から移動する。
向かう先は、双子しか知らない。
「どこに行くんでしょう。」
「さぁな。でも、隠れれるならどこでも良いさ。」
双子について行くと、広場から離れていく。
そして、居住区より少し離れた家につく。
その家は、他の建物の二つ分はある。
「この家は何なんだ?」
「村長の家だった場所だよ。」
「年を取って買い物が辛いって、皆が住んでいる場所に移動したの。」
確かに、お店がある場所から離れているしね。
お年寄りには大変だ。
「さぁさぁ、こっちだよ。」
「裏に行こう。」
双子に連れられて家の裏手に行く。
そこにある木の椅子に腰を掛ける。
「ここなら大丈夫そうだな。」
「誰も寄り付かなそうですからね。」
これぐらい離れていたら、誰にも気付かれないだろう。
そもそも、ほとんどの村人は寝ているはずだから問題ないが。
「それじゃあ、朝ごはんの続きをしようか。」
二つのお盆を二人づつに分けて配る。
そのお盆の団子を食べていく。
「静かですね。」
「そうだな。でも、しばらくはこの村も忙しくなるだろうな。」
「失った分を取り戻さないといけないですからね。」
ゼロからのスタートって事だね。
「大丈夫だよ。私達が頑張るから。」
「お手伝いいっぱいするよ。」
「ふふっ、頼もしいな。」
うん、凄いね。
村の未来は安泰だね。
「それで、フィーさんはこれからどうするんですか?」
「もちろん、旅に出るよ。」
「え、いなくなっちゃうの?」
「いてくれないの?」
「うん、そうだな。」
まぁ、旅の準備で立ち寄っただけだしね。
いつまでもいられないよ。
「そっか。いなくなっちゃうんだ。」
「寂しいね。」
「大丈夫、いつかまた来るよ。」
「「ほんと?」」
「ほんとだよ。」
嬉しそうだね。
「じゃあ、約束してね。」
「あぁ、約束だ。」
「にゃんすけもだよ。」
にゃん。
自分もまた会いたいしね。
「なら、それまでは私が二人を見ますね。」
「良いのか?」
「はい、私も約束しましたし。」
「船!」
「絶対だからね!」
約束がいっぱいだね。
「じゃあ、皆さん団子を持って下さい。」
「何をするんだ?」
「私の村では、約束する時は乾杯をするんですよ。まぁ、飲みたい口実を作ってるだけでしょうが。」
なるほど、こっちの世界でもあるんだね。
「でも、面白そうだな。」
「面白そう。」
「やろう。」
それぞれが団子を持って掲げる。
俺も何とか棒を持つ。
「では、約束を守りましょう。と、いうことで。乾杯。」
「「「乾杯。」」」
にゃん。
乾杯。
一斉に団子を口にいれる。
いつかまた美味しくない団子の味を語り合う日が来るのだろう。
食事を済ませると、しばらく語り合う。
お互いの村の事、どんな生活をしているのか。
語り合うだけで日が落ちてきた。
「そろそろ帰ろうか。」
「そうですね。」
盆を持って立ち上がる。
もう帰るには良い時間だ。
「約束と言えば、一緒に寝る予定だったな。」
「覚えててくれてたんだね。」
「一緒に寝てくれるの?」
「あぁ、約束だからな。」
約束は守らなくちゃね。
「あ、私も一緒に寝ます。」
「うん。一緒に寝よう。」
「賑やかになるね。」
家を離れて、神殿の前に戻る。
神殿は、あらかた片付いているようだ。
その前にいる、村長とミランの父に挨拶をする。
「父さん、まだここにいたの?」
「あぁ、今後について話してたんだ。」
「今後?」
「あぁ、山が崩れたお陰で直通になっただろ? だから、一緒に商売しねぇかっつって相談してたんだ。」
「どうやら加工品に興味があるようでな。一緒にしようと声をかけられたんじゃ。」
保存が出来れば、商売の幅が広がるからだろう。
お互いの村にとって悪い話ではない。
「でも、そんな事勝手に決めて良いの?」
「俺達の村の村長には俺から言っておくさ。」
これからは、お互いの村で協力していくらしい。
マッチョが着いてくれるならこの村も安心だろう。
「では、そろそろ帰るよ。」
「父さん、私もこの村で泊まるからね。」
「おぅ。明日の朝、出るからな。」
二人と別れて今度こそ双子の家へ。
中に入ると、双子の母親がいた。
「あら、大勢ね。」
「お父さんは?」
「まだ外よ。私も少ししたら戻るわね。」
まだまだ、やることがあるのだろう。
兵士が来ても忙しいのは変わらないようだ。
「あ、ご飯炊けてるから食べちゃってね。」
「「はーい。」」
「じゃあ、娘達の事よろしくね。」
「もちろんだ。」
双子の母が去っていった。
残された双子が、調理場へ。
「ほんとだ出来てる。」
「じゃあ、さっそく作ろう。」
「手伝いますよ。」
食事の内容は、ご飯の握りと干物。
この村に来てから、朝晩食べたものだ。
「この晩餐も最後か。」
「今度来たときはもっと上手くなってるからね。」
「美味しいの食べさせてあげるから。」
「なら、私が美味しいご飯の料理を伝授しますよ。」
「楽しみにしてるよ。」
食事を済ませると、布団に入る。
二つの布団に四人が入る。
俺は、はしっこに丸まる。
「狭いですね。」
「もう少し寄れば、よし。」
何とか寄せあって布団に入りこむ。
無事、収まる事が出来た。
「温かい。」
「狭いけどね。」
ぎゅうぎゅうだ。
双子を潰さないでね。
「ようやく寝れるな。ミランもずっと起きてたもんな。あれ。」
返事はない。
フィー以外は寝たようだ。
やっぱりミランも眠たかったようだ。
「寝たか。にゃんすけはどうだ?」
にゃん。
起きてますよ。
限界だけど。
「旅に出るつもりが大変な目に遭ったな。」
にゃん。
「でも、良かったよな。」
にゃん。
「これからもよろしくな。」
・・・。
「寝たか。私も寝るかな。」
四人と一匹が夢の中へ。
外はまだまだ騒がしい。
村の立て直しも、まだまだだろう。
夜になり、周りが暗くなる。
翌日。フィーと俺は、村の入り口にいた。
村の入り口周りのゴブリンは、片付いたようだ。
「では、私達は行くよ。」
「船で送らないで良いのか?」
「あぁ、問題ない。」
俺達は、双方の村人の前にいる。
村を出ると言ったら、見送りに来てくれたのだ。
「食べ物もっと持っていくか?」
「必要ない。充分持たせてもらったよ。」
本当に色々持たせられたね。
食事や、金塊の一部。そして。
「お古だけど合って良かったわ。」
「ありがたい。大事にするよ。」
双子の母から新しい服を貰った。
前のは酷く痛んだので、用意してくれたのだ。
「「フィーお姉ちゃん。」」
「これあげるね。」
「にゃんすけも。」
双子が手渡してきたのは、二枚の布。
確か、母親から貰ったもののはずだ。
「大事なもんじゃないのか?」
「うん。でもお母さん帰ってきたから。」
「お姉ちゃんに覚えてて欲しいから。」
忘れないようにって事だね。
「じゃあ、ありがたく髪でもくくるよ。」
にゃん。
俺は、体に巻く。
旅人っぽくなったよね?
「二人とも似合ってるよ。」
「かっこいいね。」
髪を上げたフィーは、中々良いね。
後ろの物騒な槍で台無しだけど。
「じゃあ、行くか。」
にゃん。
いつでもどうぞ。
後ろを向いて歩き出す。
村の入り口から遠ざかっていく。
「またこいよー。」
「気を付けてな。」
「ありがとよっ。」
村人達が声をかけてくる。
「さようなら。」
にゃん。
それに手を振って前を見る。
「次は何処に行こうか。」
にゃん。
さぁ、分かんない。
でもそれで、良いんだよね。
村から離れて、ただ目の前の道を進んでいく。
何処に行くのか分からない。
何があるのか分からない。
自由気ままな放浪旅が待っている。




