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幕間~数年前~
「父さん。これ頼めるかな?」
病院の個室。俺は父親と、言葉を交わしていた。
ベッドから身を起こす俺は、父親にひとつの便箋を手渡す。
「ん?なんだ諒。手紙か?」
「いつもの職員さんに渡せば、ドナーの家族に渡るんだろ?」
父はうなずきながら手紙を受け取る。
「わかった。これはきっちりとドナーの遺族に届くように手配しよう」
「諒。それにしても、ドナーが見つかってよかったな。しかも完全一致と来てる」
「ほんとだよ。俺がいろいろと願い事をしていた時期は、まったく上手くいかなかったのに、祈るのを辞めて数年したらこれだ」
「ははは。奇跡なんてそんなもんだ。忘れたころにふとやってくる」
「奇跡…… 。奇跡、だよな」