表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
入れ替わったら戦争 行かなきゃならなくなっちゃった  作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
26/34

第25話〜共鳴の閾値(しきい)

――その日、二つの運命は一つに溶け合わざるを得なかった。

激しい雨が降り注ぐ廃港を舞台に、命の灯火を散らそうとする少年・アルトと、その親友の身体を借りて生き延びんとする戦士・ハンス。肉体と魂の境界が融解する極限の同調リンクがもたらすのは、絶望の終わりか、それとも新たな闘争の始まりか。

互いの誇りと執念が交錯する、緊迫の脱出劇が今、幕を開ける。

暗渠を抜けた先、廃港を覆う雨は容赦なく体温を奪っていく。

ハンスは、アルトの華奢な肉体を這わせながら、口内に広がる生暖かい鉄の味に顔を顰めた。喉を焼く熱い血。それは間違いなく、かつて己のものであった強靭な肉体が、今まさに引き裂かれ、血を流しているという「逆流する感覚」だった。

『ハンス……もう、いい……』

脳裏に直接響くアルトの意識は、今にも消え入りそうなほどに細い。己の肉体が死に向かう実感が、同調した神経を伝って泥のようにハンスの脳を満たしていく。

「ふざけるな、アルト……!」

押し寄せる罪悪感と、理不尽な運命への怒りがハンスの胸中で爆発した。本来あのアスファルトに沈むべきは、自分だったはずだ。親友に己の身代わりをさせ、その命を削らせてまで生き延びるなど、誇りが許さない。

「俺の身体を、お前の墓標にしてたまるか!」

叫びとともに立ち上がろうとした瞬間、異変が起きた。

激しい同調リンクの火花が火花を散らし、二つの魂の境界が完全に融解する。冷たい雨、激痛、そして「生き延びる」という執念が混ざり合ったその刹那、アルトの細い肢体に、ハンスが培ってきた「戦士の記憶」が流れ込んだ。

「あ……」

重心の置き方、筋肉の微細な制御、無駄のない立ち回り。アルトの貧弱な骨格が、ハンスの戦闘技術をトレースするように、最適のバランスで大地を踏みしめる。それは、二つの魂が極限状態で引き起こした、奇跡の同調だった。

ハンスは、懐のマイクロフィルムを強く握りしめ、雨の幕の向こうへと、かつてないほど鋭い踏み込みで地を蹴り出した

本作をお読みいただき、ありがとうございます。

冷たい雨が降り注ぐ廃港を舞台に、絶望の淵で交錯するハンスとアルトの魂を描きました。

本来であれば失われるはずだったハンスの「戦士の記憶」が、身代わりとなったアルトの華奢な肉体に流れ込み、奇跡の同調リンクを果たす瞬間。互いの痛みを脳裏で共有しながらも、「生きて未来を掴む」という執念だけで地を蹴り出す二人の姿が、少しでも皆様の心に響いていれば幸いです。

守るべきマイクロフィルムを抱え、極限のシンクロを遂げた彼らの戦いはここから始まります。

二人が紡ぐ過酷な運命の行方を、ぜひ最後まで見守っていただければ嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ