兄たちの思い
我が家は男ばかりの4人兄弟である。
が、我々次男と三男の存在感はほぼない。
うっっすいんだよおおお!
だってさ。一番上の兄貴は学園でも常にトップクラス。1番下の弟はなんだかんだ上手くやったみたいで気がつけば侯爵家に婿入り。それだけでも華々しいのに!
兄ちゃんに至っては、隣国の王族に連なる高貴なお方に気に入られて留学中だ。そのまま向こうでバリバリやってくの⁈そしたらこの家どうするの⁈オレ?オレの出番なのか⁈
と、思っていたらちゃんと帰ってきた。向こうでバリバリやってそのまま嫁さんもらって向こうの国に骨を埋めるのかと思ってたのに、なんだ。
いや、オレが伯爵になれなくて残念だとかそういう事ではないのだ。
…兄ちゃんの素晴らしい才能をこの伯爵家で埋もれさせるのが悔しいんだよ。平々凡々な領地運営で良ければオレにだってどうにかこなせるのに。
父ちゃんだってそう思ってる。いや、オレたちを蔑ろにしているって事ではないんだ。
「すまないなぁ。お前は私に似たのか、いや私よりはよっぽど優秀か。とはいえどこか突出している訳ではなく無難な人生を送ることになりそうだな。」
イヤイヤ父ちゃん!オレはそんなに波瀾万丈な人生望んでないし!
「父ちゃん、オレは自分に満足してるよ。成績だって、そりゃ兄ちゃんに比べられると困っちゃうけどさ。これでもオレさ、学年で15位から下になったことないんだよ。派手派手しい生き方は無理だけど、嫁さんもらって子供作って幸せに暮らしていくのには充分だよ!それに…」
「オレ、父ちゃんに似たからさ。」
ニヤッと笑って見せる。
「貰った子爵位でのんびりやりながら、余力で趣味に全力を注ぐよ。」
そう。父ちゃんはそもそも領地運営なんて柄じゃなかったんだ。学生時代から絵画の才能に目覚めて、一時はそっちの道に進ませた方がいいんじゃないかってくらい期待されていたらしい。
けど、嫡男を投げ出してまで我を通すことができず(なんたって父ちゃんは"誠実が服着て歩いてる"と言われるようないい人だ)家督を継いだのだ。
だからオレら兄弟の合言葉は
"とっとと自立して父ちゃんをのんびり楽隠居させる"
だったのだ。
※※※※※※※※
そんな我が家には、4人兄弟に対して爵位が2つ。
1つは嫡男が継ぎ伯爵に。残るもうひとつ、子爵位は3人で奪い合い!とはならずにオレが譲り受けることになった。
何故なら、下の兄ちゃんは学生時代に商家の娘に気に入られて婿に入ることになり、弟は侯爵家に婿に入ることになったからだ。
下の兄ちゃんは、オレとは違い母ちゃんに似た。
チャキチャキと物事を進めて、父ちゃんがあーとかうーとか言ってるうちに気がつけばほとんどのことが終わってるんだ。
父ちゃんは自分のことを不甲斐ないと言ってるが、母ちゃんは母ちゃんで
「こんなに何にでもしゃしゃり出る女なんて可愛げないわよね。」
なんて言って落ち込んでた。世間的には破れ鍋に綴じ蓋ってやつかもしれないけど、お互いを思いやるいい夫婦だよ。
そんな母ちゃんの性質を色濃く受け継いだ下の兄ちゃんは、貴族籍に興味がなかった。できることなら自分の手で稼ぎたいと常々思っていたんだそうだ。そして平民とはいえ大きな商家の娘さんが同じクラスだと知り、そのお父上に弟子入りしたいと懇願したんだそうだ。
その甲斐あって、学園の長期休暇などを利用して商売のイロハを叩き込んでもらうことに成功した。
そしてなかなかの商人っぷりにお父上が惚れ込んで
「わしの娘と結婚せい!」
と言われたのだ。娘さんの方も満更ではなかったらしいが、なんと、こんなに良い話を兄ちゃんは最初断ったというのだ。
なんで⁈兄ちゃんのやりたいことを考えたら、飛び上がって喜ぶべきご縁だろうに。
やっぱり貴族籍に未練があるんだろうか。
ぐるぐるといろんなことを考えていたが、理由はものすごく単純だった。
やっぱ俺の兄ちゃんはいいヤツだった!




