【番外編】美久子 学院祭 高校生編(8) 颯太の戸惑い
美久子に話し掛けられ、呆然としていた颯太は美久子を見た。
美久子は心配そうに颯太を見つめていた。
「あ、ああ。大丈夫。ありがとう。助かったよ」
颯太にお礼を言われ、美久子はにぱっと笑った。
「……っ!?……」
「よかった!大変だったよね。いくら男の子でもあんな奴に近寄られたらめちゃくちゃ気持ち悪いよね。ましてや今はこんな美女だし!」
「え?美女……」
「山田くん、大丈夫?美女過ぎて、キモいのに狙われちゃったねー」
「それだけ可愛かったらこれからも危ないわ。
健二から警備員さんに注意してもらうように伝えておくわね」
「えっ!?う、うん。ありがとう……」
普段殆ど女子とは喋ったことが無い颯太は、
美久子と、更に学年でも美少女で有名な七海や恵に自分の名前を覚えてもらっていた事に驚き、更に女装しているのに自分だとわかってもらった事に衝撃と戸惑いが隠せなかった。
颯太は居たたまれなくてソワソワし出した。
「山田くん、今日はコンタクトなんだね!
普段のメガネも良いけど、山田くんの目がこんなに綺麗だなんて知らなかったなー」
「えっ!?目がき、綺麗……!?」
ソワソワしていた颯太は、美久子の想定外の言葉に身体が固まった。
「ほんとだー!きのぴいみたいにちょっと茶色ですっごくキレイだねー」
「カラコンなの?山田くん」
颯太はギョッと目を見開いた。
颯太の目は日本人には珍しい、かなり明るめの茶色だった。
小さい頃はこの目の色のせいで苛められたこともあった。
いつの間にか長めの前髪とメガネで、目を隠すようになっていた。
両親以外でこの目の事を初めて誉められた。
胸がぎゅっと締め付けられて、言葉が出ない。
「颯太ー!大丈夫かー!?」
話し終わった部員が遠くから颯太に声を掛けた。
はっと我に返り、颯太は美久子達を見つめた。
「……あ、ありがとう。この目は自前、だよ。
……宇佐美さん、福田さん、木下さん。
……本当に、さっきの奴から助けてくれて、ありがとう」
颯太は美久子達に向かってぺこりと頭を下げた。
三人はにっこりと笑った。
「やだー!もう、山田くんめちゃくちゃ美女だから、
なんだかときめいちゃうよー!」
「わかる!山田くんって、すごくスタイル良いんだね!うらやましいなあ」
「記念に写真撮ろう!湊人が喜びそうだわ」
自動車部員に頼んで、四人で写真を撮った。
写真をもらうために颯太は美久子達とRINEを交換した。
とてもドキドキした。
「じゃ、山田くん頑張ってねー!無理したらダメだよー」と、
楽しそうに去って行く美久子の後ろ姿を、
颯太は見えなくなるまでずっと見つめていた。




