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第十三話 勇者、考える

 戦闘自体はあっけないもので、半刻程度の時間も必要としなかった。


 勇者組の者達は全員気絶したので、近くの街に転送して置いた。


 目の前で気絶する。それは、魔王に生殺与奪の権利を掌握されるという事。それは勇者達にとって耐え難い屈辱となるだろう。


 我は優しい魔王なので殺しはしないのだ。


 それは置いておくとして、ユイに戦わせるのは時期尚早であったな。


 ユイにはもう少し力の制御という物を教えてやらねばならん。


 言い換えれば今回のユイは、我慢はしていたが最終的にタガが外れ、訳がわからないまま事が済んでいた、というような勝利をしたのだ。



 何より今回は


「覚悟が足りなかったな」


 我は治療を終えベッドに横たわるユイに声を掛ける。


「覚悟……ですか?」


「そうだ。お前には魔王の仲間として勇者に立ち向かう覚悟が足りていたなかったのだ」


「ユイよ、お前にはあの者らはお前の目にどう映った?」


「はい。何かを勘違いしているような……」


「そう、奴らは勘違いをしている。と、言うよりは見識が浅いと言った方が正しいのだろうな」


 そう、勇者とは崇め奉られる存在。その美酒に酔いしれた者の胸の内には疑念という二文字が失われるのだ。


「しかし、奴らは立場を全うした。勇者として魔王に立ち向かう姿勢を終ぞ崩すことは無かった」


「そう、奴らには勘違いなりに、世界を救うと言う覚悟があったのだ」


「が、それを阻止する覚悟が足りていなかった。ユイよ、勇者に立ち向かう時、お前は本気じゃ無かっただろう?」


「はい……」


「お前の気持ちも分かる。お前は、人間だ。そして勇者だ。奴らの考えている事も分かる。が、此方側の考え方も分かる。それに挟まれ、お前の中に疑念が沸いたのだ」


「我はその疑念こそ、お前が大切にするべきモノだと思っている。しかしそれは時と場合だ。勇者と対峙する際にはその疑念を晴らさなければならない」


「勇者が魔王の仲間になるなど前例が無い話だが、それはさておき、お前は今は血を分けた我々の仲間なのだ」


 今にも泣き出しそうなユイであるが、それを振り切り覚悟を決めた顔をした。


「はい……!」


「よし、良い子だ」


 我はユイの頭をグシャグシャと撫でてやる。粗暴だがユイはそれだけで笑顔になった。


「それはそうとユイよ、お前、もう動けるか?」


「はい!魔王様に貰ったポーション、すごいです!一瞬で元気になりました!」


「そうか、それはよかった。ウリニンがとっておきのご馳走を用意すると張り切っていたからな。顔を出してみたら良いだろう」


「!!わ、わかりました!」


 ユイはそのまま布団を飛び出し、出口で我にお辞儀をし、一目散に駆けていった。


 なんと食い意地の張った娘であろうか。


 ユイの修行はまだまだ続くのであるが、今夜ばかりは祝杯をあげるとしよう。しかし、歳をとると説教臭くなっていかんな。


 我も反省しなければと思う所存であった。

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