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泉岳寺浪人二人

まあ言い訳を聞いてください。

まずPCにドクターペッパーがこぼれました。これは大事には至りませんでした。一部のキーがやや重くなっただけです。

次にPCに紅茶がこぼれました。ご臨終です。

そしてスマホが半分タッチに反応しなくなりました。

あとは、わかりますね?

そういうことです。

慶長十七年(1612年)に徳川家康が今川義元の菩提を弔うため外桜田の地に門庵宗関和尚(今川義元の孫)を招いて創建した寺院、それが泉岳寺である。

寛永十八年(1641年)寛永の大火で焼失したが、徳川家光の命により、毛利、浅野、朽木、丹羽、水谷の五大名により高輪の地に再建された。

この再建の際にできた縁により、赤穂藩主浅野家の菩提寺となり浅野長矩の墓が建立された。

その長矩の墓前にて手を合わせる男が居た。

堀部安兵衛である。


「おや堀部殿、墓参りですか」


「これは和尚様、ごぶさたしています」


久方ぶりに会う和尚に安兵衛は頭を下げる。


「浅野殿は本当に慕われてますなあ。三日と置かず赤穂の方がどなたか必ず手を合わせに来ます」


それもそうだろうと安兵衛は思った。

江戸詰めの同士は主君の側に居ながら守ることができず、目の前で失う事になったのだ。その悔しさは皆同じだ。

月命日はもちろん、それ以外の日でも暇さえあれば墓前にてその悔しさを噛みしめ、仇討ちの決意を誓うのだ。

あるいは時とともに怒りが薄れ、恨みを風化させぬように。


「線香などより吉良の首をお供えした方が供養になるでしょうになあ」


去り際に和尚は聞こえるように独り言を口にした。

いつまでも仇討ちを行わない安兵衛を責めるかのように。

安兵衛は無言でその責めを受ける。

言われても仕方ないと思っているからだ。

仇討ちだと息巻いておきながら、結局今に至るまで何もしていなかったのだから、何を言われても甘んじて受ける。

だが、それももう少しで終る。


「それで、そこに居る奴は何か用か?」


安兵衛の背後、十歩以上は離れた場所に居た男はぎょっとしながら安兵衛に歩み寄る。

中山新三であった。


「驚かせようと思ってたのに、なんで気付くんですか」


「阿呆め。気配くらい消してから申せ」


「気配ってどうやって消すんだろう?」


首をかしげながら新三は墓前まで歩き、道中で摘んできたホトトギスをお供えし、今日まで来れず遅くなった事を主君に詫びながら手を合わせた。


「ずいぶん早かったな。あと五日はかかると思っていたが」


山科の大石内蔵助よりの文で安兵衛は新三が先んじて来ることを知らされていた。

表向きは内蔵助が江戸で泊まる場所の手配の為だが、真の理由は急進派への牽制だと安兵衛は見抜いている。


「走りましたので」


清水一学と道中を行くようになってからも新三の進む速度は早かった。

なにせ清水一学は夜盗の類に襲われて、返り討ちにしたいが為に裏道ばかりを歩き、それに付き合わされたからだ。

もちろん新三は吉良の家臣と仲良く江戸に来たと、素直に言うつもりはない。


「お前はもう飛脚にでもなった方が良いのではないか?」


「嫌だな安兵衛さん。僕は料理人ですよ」


「………」


「間違えました。武士です」


何か言ってやろうと思った安兵衛だが、これには何も言葉が出てこなかった。


「そのような旅装で殿の御前に出てくるな」


結局これくらいしか言えなかった。

もっとも小言をくれたところで、今さら目の前の阿呆が治るとは考えられないのだが。


「江戸に着いたその足で一番に殿の墓前に手を合わせに来たのは駄目なんですかね」


「その心がけは認めるが、墓は逃げん。お相手が主君なれば身なりを整えてから来るのが礼儀だ」


なるほどと頷く新三に嘆息し、安兵衛は主君に一礼してその場を後にする。

新三もそれに倣い墓前に頭を下げてから安兵衛の背中を追う。


「宿はもう決まっているのか?」


「いいえ。でもお師匠の部屋にお邪魔しようと思ってます」


そういえば江戸の長屋に住んでいたな、と安兵衛は新三の剣の師を思い浮かべた。


「あやつなら最近は見ていないので留守かもしれんぞ」


「それなら勝手に上がりますよ」


それで良いのだろうか。

盗人と間違えられて騒ぎになれば面倒だ。


「何か問題が起きても俺は知らんし、赤穂の名は死んでも出すなよ」


「大丈夫ですよ。何か問題が起きたらお師匠に罪を着せて逃げますので」


「お前は本当に師を尊敬しているのか?」


「まさか。いろいろと感謝はしていますけど、尊敬なんてしてませんよ。基本的に反面教師ですからね」


まあそうだろうと安兵衛は思った。

あの男はとてもではないが手本にして良い人間ではない。

特に赤穂の人間にとっては。


「まあいい、荷物を置いたら蕎麦屋に顔を出せ。俺達の行きつけの店は覚えているな?」


「はい」


「その後に道場で久しぶりに腕を見てやる」


「わあ、江戸に来てよかった」


新三は一学のように刀で命のやり取りをやりたいとは思っていないが、剣術そのものは好きだった。

特に強い者と竹刀を交え、その呼吸を読み合うのが好きで、それが高じて赤穂の国本では若手の中では上位に入る腕前となっている。

相手が江戸一と名高い安兵衛となれば断る理由はない。


「三本で良いな?」


「う、うわーい……」


三本とは三本先取という意味ではない。

お前を竹刀でぶっ叩いて竹刀が三本折れるまでという意味だ。

いくら好きでも限度というものがある。

だが相手が江戸一と名高い安兵衛となれば断れるわけがなかった。

この時代の竹刀は竹の棒に革袋を被せた袋竹刀です。

今の割り竹刀と比べて衝撃が抑えれる作りではないので折れやすいのですが、あくまで比べて折れやすいだけです。

竹の棒で折れるまで殴られるだけです。だけですよぉ

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