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飼犬飼猿相容れず

お久しぶりです。

またですよ。

またPCが死にました。

もう絶対にT芝は買わない!

元禄十四年 十月十四日


吉良家の屋敷替えにより、大石内蔵助は少し困った事になっていた。

それまでは上方と江戸の急進派がばらばらに動いていたので、のらりくらりと意見を聞き流して適当にあしらうことができたのだが、屋敷替えによって好機と見たのか一致団結して内蔵助に立ち上がるよう談判してくるようになったのだ。

もちろん内蔵助も手を打った。

それぞれに説得の為の人間を送り込んだのだが、その説得に行った者が逆に説得されて仇討ちを主張するようになってしまったのだ。


上方は奥野将監に押さえもらうとして、問題は安兵衛ら江戸の急進派だ。

こちらは完全に勢い付いていた。


そんな事は知らんとばかりに近所の奥様方との井戸端会議に参加し、その帰りに新三は物売りの露店を見つけて寄り道することにした。

井戸端会議に付き合わせて退屈な思いをさせてしまった松之丞への御機嫌とりだ。


「何か面白いものはあるかい?」


「へい、鹿の睾丸があります」


「凄くいらない」


「精が付きますよ?」


「そりゃあ付くだろうさ。他には?」


「各地の塩があります。ああ、小売の許可は得てますよ」


塩の販売には制限があり、塩の生産者が直接売ることは許されていない。

まず産地から領外への販売が許された大問屋が仕入れ、そこから領内へ販売する小問屋へ卸され、そこから小売へと流通していく。

問屋は藩の監督の下、必要に応じて値段や販売量を調整している。


「他所買塩か。組合員かい?」


塩の小売は多くの場合組合に属している。

特に京では塩売屋は団結が強く、組合に属していない者は見つかると袋叩きにされる事もある。


「外部要員ってやつですよ。各地を廻ってますんで、色々ありますよ。十州塩田はもちろん、行徳に、珍しいのだと越後なんてのもあります」


十州塩田とは播磨、備前、備中、備後、安芸、周防、長門、阿波、讃岐、伊予の瀬戸内十ヶ所の塩田の事だ。

行徳は下総の関東最大の塩田である。


「へえ、越後は試した事ないな。ちょっと出してくれよ」


「へい」


物売りが薬箱の方へ向いた瞬間、新三は物売りの右肩を左手で押さえた。

そして右手は腰の脇差しの柄に添えられている。


「お、お侍さん!?」


「動くな。まつ、僕の後ろへ」


「おい新三、何を?」


戸惑いながらも松之丞は言われた通り新三の後ろへ下がった。


「下手な芝居は止めろよ、上杉の飼い猿。ただの物売りがそれだけ色々塩を取り扱ってるわけがない。ましてや越後なんて」


「そんな、あっしは本当にただの物売りでさぁ。組合の許可だってちゃんと取ってます!」


「ああ、本当に許可を取っているんだろう。でもそれが逆に怪しいのさ。許可取ってる奴がわざわざ薬箱背負って露店で物売り? 普通は出入りの行商をやるよ」


「……ちっ、正体を隠そうとしすぎたか」


観念したのか物売りは上杉の手の者である事を認めた。


「わかっていると思うが、お前は僕の間合いの内だ。妙な事を考える前に犬の餌になる覚悟をしろ」


「ふん、小僧に人が斬れるかよ」


「斬れるさ。魚捌くのも人を捌くのも大差ない」


まるでまな板の上の魚を見るかのような新三の眼差しに物売りはうすら寒いものを感じた。

本当にそう思っている。そう感じさせるだけの真剣味があったのだ。


「目的は聞いても答えないだろうし、察しはつくから聞かない。要求は一つだ。二度と現れるな」


右手は脇差しの柄に添えられたままだ。

物売りが何かするより速く抜刀して刺す事ができる。


「ご城代に仇討ちの意思はない。お家再興を目指して動いているだけだと少し調べればわかる筈だ。飼い主にもそう伝えろ」


それだけ言うと新三は物売りから手を離し、松之丞を連れてその場から去る。


「お前よく気付いたな」


しばらく歩いてから松之丞は内心の動揺を悟られないよう、冷静さを取り繕って口を開いた。


「まあ上杉が何かやってると親切な忠告があったからな。そうじゃなかったら気付かなかったさ」


幸之助に感謝し、新三は次に会う時に何か礼をしようと思った。

客になる以外で。




新三と松之丞からの報告で上杉の間者が周囲をうろついている事を知った内蔵助は、しかしどうするでもなく放っておけとだけ告げた。

それよりも問題なのは急進派の動きである。


「どうしたものかのう……」


「ご城代」


自室にて自問していた所へ新三が茶を持ってきた。

お茶請けは柿だった。


「柿か。まだ渋いのではないか?」


「さっき食べてみた物は甘くなってましたよ」


「そうか」


「それと、こちらを」


新三は懐から一通の文を取りだし、内蔵助に差し出した。

それは江戸の安兵衛からの文であった。

それに目を通し、内蔵助は苦笑を浮かべる。


「まったく、安兵衛め」


「安兵衛さんは何と?」


「もう同志の意見が一つになるのなど待てんので、来年の三月、亡き殿の命日に自分達だけで吉良邸に討ち入り、吉良を討った後は自刃するそうじゃ。上方と江戸の仇討ち派による決定事項との事らしい。やれやれ、困ったものよのう」


熱そうに茶に息を吹きかけながら内蔵助は言う。


「大変じゃないですか!」


「大変じゃのう」


「いやいや、何でそんなに落ち着いてるんですか!」


今までは仇討ちを主張する者は少数であり、しかもまとまっていなかった。

だから内蔵助がのんびりと茶を啜っていても問題はなかった。

だが、吉良の屋敷替えによって江戸と上方の急進派が手を組んで小数派だったものが多数派となってしまった。

そしてその数は流される者や取り込まれる者を得て、どんどん増えている。

その上で仇討ちの日取りまで決めた手紙を送り付けてきたという事は、事実上の最後通告だ。


「まあ慌てた所でどうにもならん」


新三によって剥かれて切り分けられた柿を取り、内蔵助はシャクリとかじった。


「渋いっ!」


半分かじった柿を内蔵助は新三に投げつけ、慌ててお茶を口に含むが、


「熱ちゃあああっ!!」


まだ熱かった。

踏んだり蹴ったりといった酷い状況に内蔵助は自身の現状そのものだと泣きそうになった。


「もうやだ……」


内蔵助が溢したお茶は新三が拭く。

気のきく男だと思いながら、内蔵助は一つ考えが浮かんだ。


「のう新三」


「なんですか?」


「お前ちょっと江戸に行け」


「はい?」

SSクリスマスモニカが10連一回で出ました!


なんの話しゆるんって?

SAGAじゃろがーーーーーーい!

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