16 私が戻ろう 先へ行ってくれ
「ニャンニャンー!ニャンニャンニャー!!」
(聖剣ー!!たいへんにゃー!)
『、、、ルリ、言葉に猫が混ざってきておるぞ。どうした?』
「おっ、ルリ。慌ててとうした?ウンコでも踏んだか?」
ゲラゲラ笑うジン。
「ニャーンニャ!」
(踏むかー!馬鹿ジン!)
『こいつはほっとけ。何があった?』聖剣。
瑠璃猫は先程見て聞いたシルビアの話を聖剣に伝えた。
『まあ、そんな事だろうと思っておったわ。あの女、隙のない訓練された動きをしておった。、、ジンを狙ってどうする?あの女は最初からルーファスを狙っていたぞ』
「ニャンニャニャ?」
(そうなの?じゃあ、ルーファスさんを守らなきゃ!)
『ま、そうだな。ジンにも伝えておくか』聖剣。
しかし、聖剣から伝え聞いたジンは。
「はぁ?シルビアさんがルーファスさんを?変な事を言うなよ。シルビアさんに失礼すぎるぞ!」
ジンは聖剣の言うことを信じなかったが。時々ルーファスから感じる寂寥感のある雰囲気と表情が、引っかかった。
翌朝、一行は祭りのあった街を出る。
宿屋を出る前に、ルーファスはシルビアに組紐をプレゼントした。
「祭りの露天で見つけた。幸福になる組紐と願いが叶う組紐だ。良ければ使ってくれ」ルーファス。
「ルーファスさん、ずるいですよー。俺からも、はい。シルビアさんへプレゼント!
嫌いなヤツから嫌われて近づかれなくなる組紐、だそうです!シルビアさんは美人だから、コレで変な奴は寄って来ませんよー」
ニコニコ笑顔のジン。
「、、、ありがたく、頂きます」シルビア。
「さて、行こうか!」ルーファス。
「あっ、ルーファスさんも組紐付けてる!オシャレですね!剣に付けるのって願いが叶いそうですね!何の組紐ですか?」ジン。
「ああ、これは『大切な人が幸福になれる』組紐だ」ルーファス。
「ルーファスさんは優しいですね。俺はルリに『食べても太らない』組紐をつけましたよ。いつも頭に乗られるんで、これ以上太られると困るんで」ジン。
「ニャニャー!ニャニャニャン!」
(なにー!騙された!キレイな組紐付けてくれたと思ったのに!)
瑠璃猫は朝、ジンからプレゼントされた組紐を、左前足につけてもらって喜んでいたのだ。
聖剣『良いではないか。太らなくなるのだろう?わはははは!』
「ニャンニャー、ニャンニャンニャン!」
(太りたくないけど、太るなと言われると、腹が立つ!)
でも瑠璃猫は組紐はつけたままにした。
一行は賑やかに出立した。
街道の途中で商隊と一緒になった。その商隊に護衛を請われ、受けて共に街道を走った。
夕刻、魔物の群れに遭遇した。
ルーファス達は、馬を降りて商隊に預けた。商隊を先に行かせ、魔物を自分達に引きつけた。
商隊護衛中、魔物に襲われた場合は、守るものが多く護衛しきれない。
馬を降りて囮となり戦う方が良策とされた。
「数が多いな!大丈夫か?ジン!シルビア!」ルーファス。
「俺は大丈夫です!」
『俺様は最強だからな!』
ジンの身体は聖剣が戦うので、全く問題無かった。
ジンの背中のカバンの中の瑠璃猫は震えていたが。
ルーファスも強かった。
魔物の急所をしっかり討ち取る。
ジンとルーファスが背を向け合い、中にシルビアを守りながら戦っていた。
シルビアも暗器で魔物を倒した。
横からジンを狙った魔物の爪が、瑠璃猫の入ったカバンをかすった。
カバンが裂けて中から瑠璃猫が転がり落ちた!
「ニャーン!!!」
(うそ!助けて!!!)
「ルリ!」ジンが慌てる。
瑠璃猫を踏み潰しかける魔物に、シルビアが暗器を投げて一匹倒した。
ルリを喰らおうとする魔物の頭にジンは聖剣を突き立てた。
瑠璃を抱き上げ、自分の頭に乗せた。
「シルビアさん、ありがとう!」
ジン。
ジンが体勢を崩し、空間が空いたせいで、シルビアに魔物が襲いかかる。
ルーファスがそいつを薙ぎ払った。
「シルビア!」
シルビアを背に守り、ルーファス
は戦った。
守られて、シルビアの冷たい青い目が揺れた。
魔物を倒してから、先で待っていた商隊を追いかけ、馬を戻された。
商隊は礼を言い、ルーファス達に護衛代金を弾んだ。
しばらくして商隊とは行き先が別れた。
ルーファス達は西の辺境へ向かった。
夜になり、ルーファス達は、街道近くの廃屋で夜明けを待つことにした。
ジンは疲れて眠りこけた。
「シルビアも寝て良いぞ。寝ずの番は私がしよう」ルーファス。
「はい、ありがとうございます」
少しして、シルビアがルーファスに悲しげに言った。
「今、カバンを見ましたら、露天で買って頂いた髪飾りを落としたようです。大切な物ですから、取りに行って来ます」
「危険だ。、、、、、私が行こう。待っていてくれ。、、、もし、戻らなければ、先へ行ってくれ、、後から追いつくから」
ルーファスは優しくシルビアに言った。何かを受け入れた淋しげな瞳で。
ルーファスはシルビアに微笑んで言った。
「荷物は置いていくから、戻らなければ運んでおいてくれ」
シルビアはうつむいて、黙って頷いた。
ルーファスは「聖剣」だけ持ち、馬に乗り、来た道を駆けていった。
シルビアはその背を見ながら
瞳を揺らしていた。
泣きそうな顔をしていた。




