第三十一話 爆裂
頻出する堕天使による被害。しかし、その堕天使達の種類は、何故か現実の動物を模したものばかり。フューエル達はその謎に迫りつつ、堕天使を排除するのだった。
東京のあるエリアに現れた亀裂。その下には、ディアボロという決して開けられてはならない扉があると判明した。そして今、干支の動物を使った堕天使も殆どは出現し各個撃破され、残るは龍のみとなった。フューエルは三人が犬神を倒してから三日と経たずに手配を済ませ、隊員をかき集め亀裂付近に集まっていた。
《エデンさんの話によれば、この下には禁忌の扉がありそれを守ってるのが龍。最近出現している堕天使の傾向から、次狙われるのはこいつだ。そして、龍がやられた時が、カウントダウンがゼロになる時だろう。悪いがこの場で命令させてもらう。死守せよ、以上!配置につけ!》
《了解!》
各々が配置箇所に飛び、フューエルとストライク、そしてブリザードの三人が亀裂に飛び込んでいく。
しばらく落下した後、各々が氷を氷柱のようにしたり飛行ユニットを逆噴射させたりして広い空間に着地する。
《随分広いな…》
ヴァルキリーが自動でフューエルに暗視ゴーグルを装着させ起動する。そこには、左右で合計六つの柱が立ち、その中心に巨大な紫色の禍々しい扉が建っていた。
《…あれが…ディアボロ…。》
ブリザードが両腕に氷の剣と槍を纏い扉への道を進んでいく。一本道は狭く、その左右は地底湖が広がっている。
《おい、話にあった龍はどこにいんだよ。見当たんねーけど?》
[珍しいお客人だ。]
三人の頭上から声が響く。そこには、巨大な龍の頭が三人を覗き込んでいた。
《この扉の守護龍か?》
[そうだ。その扉は悪魔を封じ込めている扉。汝らの天敵は、その先にいる。しかし、そんな事をしにきたのではないのだろう?何の用だ?]
《…私達は貴方を守るために来ました。》
ブリザードが口を開く。しかし、その言葉に龍は顔を顰める。
[…なんだと?我を守るため?我が弱者だとでも?]
《違います。…えー…》
言葉に詰まるブリザード。それを補助するようにフューエルが割って入る。
《現在、私達が戦っている堕天使達の上級クラス達は第三者により堕天使化されたものだった。》
[ほう。それで?]
《はっきりとした見た目は記録できなかった。ただ、何か知ってるんじゃ無いかと思ってな。》
フューエルがスイッチを押すと、ヴァルキリーがスクリーンを展開して予想図を表示する。
《確認できただけの推測の見た目だが、こいつに見覚えはないか?》
[……その女は、知っている。]
フューエルの目付きが鋭くなる。
《教えてくれるか?》
[…その女は、はっきりとした名称を持たん。しかし…何故外に…。その女は、この扉の奥に悪魔と共に封じられたはずだ。いるはずが…]
《なんだと…悪魔と一緒に封じられたのに…私達の前に…?》
[その女は悪魔を従え、この世の理に縛られぬ女。我が悪魔よりも警戒するように拝命された存在だ。銀髪、お前は過去に何か現実を捻じ曲げるような存在に会ったことはあるか?]
《…ある。カオスという名だったはずだ。》
[恐らくそいつの影響だ。この女は本来もう出てこられないはずだった。それがそのカオスとやらの力により理が崩れ、戦闘力を持たない…いわば幽体離脱のように出てきているのだ]
《やはり…カオスは生きていたのか…》
[銀髪、青髪。汝らは天使の中でも強者だろう。我は一度狙いを定めた相手の所在地を探ることが出来る。カオスの力の影響が意図のあるなし関係無く、素早く殺害せねばこの世は]
「その必要は無いわ」
広い洞窟に声が響く。それとほぼ同時に、龍が血を吐き出してダウンする。
「はぁー…ここまで嗅ぎつけてくるなんて…」
《カオス…!》
「私に会えて…嬉しそうね」
倒れた龍の頭の上に乗っているカオスが髪をかきあげながら降りてくる。フューエル達と向かい合うカオス。その背後で音を立てずに龍が動き出し、その大きな口でカオスに噛み付くも、服に付いたパーツを硬化させたカオスに防がれる。
「あんなもんじゃ流石に死なないか…だてにでかい図体してないわね」
カオスが跳躍し口から脱出する。その着地を狩るようにフューエルが動き剣を振るうも、それも防がれる。そのままブリザードと共に連撃を仕掛けるも数多くのパーツを使い防がれる。ストライクは飛び立ち、自身の必殺技であるエアストライクを構える。
「いいのかしら?その技を今使ったら皆巻き込むんじゃなーーい?」
パーツを一纏めにしフューエルとブリザードを弾き飛ばし、龍の元へジャンプし、その体にパーツを突き刺す。龍の叫びが鳴り響く。その大きさにフューエル達は耳を抑えて動けなくなる。ヴァルキリーでさえカタカタと部品が揺れている。音声による警告は意味が無いと判断したヴァルキリーは、フューエルの前にスクリーンを出し文字列を映し出す。
[カオスの服のパーツが、カオスと一体化しています。このままでは、あの龍は乗っ取られる可能性が高いです。…それを使えば、使っている間ニューラルリンクは切断されますが、よろしいですか?]
フューエルが頷くと、ヴァルキリーがバラバラに弾け飛ぶ。そしてそれは次々と変形しフューエルの体に装着されていく。それは次第に鎧のようになり、エネルギーブレードで出来た羽が展開される。
[ヴァルキリー、フルアーマーモード。戦闘コード:イカロス。]
「私の目的は最初からこれ!!何をしようが無駄よ!!」
フルアーマーとなったフューエルが飛びかかり、フィストギアを更に強化した拳で何度も殴るも、カオスにも龍にも届かず、結界のようなものに防がれる。その途中で龍の叫びは収まり、完全に意識を失っている。その広い洞窟には轟音で動けなくなった二人の天使を置き去りにする様に、結界を破壊しようと殴りまくるまた別の轟音が鳴り響く。龍の傷から光が漏れた時、フューエルがパワーチャージを右腕に集め、結界を殴り付ける。しかし、結界がガラスの様に割れるのと同時に、カオスが姿を消した。フューエルは微かな揺れを感じ取り赤紫色に不穏な光の鼓動を放つ龍から離れる。ギリギリと言った様子で立ち上がる二人を飛行し抱え、入ってきた際の亀裂へ向かい脱出を図る。微かなものから巨大な揺れとなり、亀裂に近付くに連れて砂やコンクリートの破片が降ってくる。フューエルは二人に当たらない様にシールドを展開し地上への脱出に成功する。周囲は、既に夜になっていた。
《フューエル…龍は…》
《……残念だが、私達の負けだ。だがもうこうなってしまった以上…やるしかない。覚悟を決めろ、来るぞ!》
亀裂が急速に広がり、巨大な陥没が発生する。崩れる家やビルをものともせず、これまでに戦った堕天使の中でもトップクラスのサイズの邪龍が現れる。その体はまだ不安定なのか、カオスが使っていた四角い触手の様なパーツが全身を出たり潜ったりとを繰り返している。邪龍はブレスを放ったり、まだ耐えていた建物を破壊したりして大暴れを繰り返している。
《総員聞こえるか!これ以降許可はいらない!邪龍・カオスドラゴンを討伐せよ!!》
通信を切り、フューエルは羽のエネルギーブレードをファンネルのようにいくつも継続して飛ばす。その巨体の周囲にはいくつもの戦闘開始を知らせる様に爆発や銃の光が飛び交っている。しかし、邪龍は怯むことも無く暴れている。フューエルはアーマーを解除しヴァルキリーを通常形態へ戻し、自身を巻き込む様な形に変えエネルギーを貯め始める。
《フルチャージ…完了…!》
フューエルを囲う虫の足のように伸びたアームのエネルギーボトルから電気が溢れ出し、消滅するよりも前にチャージパーツに吸収されて行く。
《一気に決めてやる…!》
光の粒子が集まっていた銃口が強い光を放つ。現地にいたストライクがそれに気付き、大きく叫ぶ。
《全員離れろ!!!!!!》
それを合図に一気に飛び退ける。声の届かない場にいた天使はまだ避けていないが、フューエルは構わず邪龍の背中側上方部から発射の大きなスイッチを回し蹴りで押す。
《ディザスターキャノン!!!!!》
次の瞬間、赤と白の巨大なレーザーが邪龍に放たれる。その強烈な光と衝撃にまだ避けていなかった天使達も、邪龍を盾にするように回避する。
《ダメ押し!!》
発射エネルギーを上昇させるレバーを倒すと、レーザーがより太くなり邪龍が包まれる。数十秒間のレーザーの後、その光はどんどん細くなり消えてなくなった。その規模故に煙が立ち込める。戦っていた天使達が不安気に、煙の奥を見ている。
[警告。稼働可能推定時間:残り五分。]
《キャノンの耐久を上げても流石に削れるな…。》
フューエルはヴァルキリーを通常形態に戻しストライクの元に寄っていく。
《邪龍は?》
《まだわかんねぇ。だが、どうかな…。あれでくたばってくれると良いんだが…》
次第に煙が晴れていく。その奥には、全身に赤白い電気を纏う邪龍の姿があった。
《こいつ…何したら死ぬんだよ!》
《神の造った龍…やはり足りないのか…!》
フューエルが即座に剣を抜きガトリングを両肩に展開する。他の天使達も即座に戦闘態勢に入るが、邪龍の様子がおかしい事に気付いているのか誰も仕掛けない。
《なんだ…あいつ何を…》
何かをチャージしているかのように体を揺らしながら、赤白い電気は吸収された。そのまま、全身に残った傷からエネルギーが溢れ霧が覆う様に街を埋め尽くしていく。しかし、それは強風になっているとは言え人一人分程度の厚さしかなかった。邪龍から放出されたエネルギーの霧が出きった後、カオスのパーツを取り込みきったのか羽を生やし飛び立つ。
その巨体故にあっという間に天使達よりも高く飛び、先程放出した霧を急速に吸収し始めた。先程までの様子とは違い、エネルギーが全て口元に集まって大きな球体となっていっている。まるで高らかに己の力を見せつけるように、頭を空に向けている。
《なんだあいつ…何してるんだ…出したり吸い込んだり…》
ストライクが飛んで攻撃に行こうとした時、フューエルがそのマフラーを掴み止める。
《なんだよ!》
《あれはまずい…ディザスターキャノンを撃ったのは間違いだった…!!》
辺りの夜を昼のように照らす光がどんどん強くなっていく。霧のエネルギーを邪龍が吸収しきった時、巨大なエネルギー球が一瞬で収縮し、邪龍の口から落とされる。フューエルが真っ先に動き、即座に起動させたウォールコアを使いそこにストライクを放り投げ、通信機を取って全力で叫ぶ。
《総員てった》
その叫びは最後まで届くことは無く、エネルギーの塊が空中で大爆発を起こした音にかき消される事になった。
三十一話です。かつてない威力。




