運命の目的1
「訳が分からないわ!」
翠花は部屋に駆け込んだ。
碧龍は、なにを考えているのだろう。
海里の家で再会したときは、まさかとは思うが碧龍は翠花に本気で、翠花のために西の町まで来てくれたのかと思った。
だが、名前を偽り、視察の仕事で来ていると知った。
碧龍から翠花に、王都でのことを話題にすることもなく、周りに言っているのも作戦の一部だと思えば納得がいく。
青河も、碧龍が反省していると言っていたし。
翠花としては、あの書庫での衝撃的な求婚をとりあえず置いておいて、皇太子の仕事に協力しなければと思っていたくらいなのだが。
(なんでおばあちゃんに、皇太子だとバラすの?!)
祖母は、翠花がなぜここに来たか知っている。
あの質問に、普通に答えるなんて、訳が分からなかった。
(あー!もう、ホントになんなんだろう?分からない!)
こういうときは本に限る。
翠花は、今回の暗号に使われた本を開く。
そして、いつものように、本の世界に没入していったのだが。
「・・どういうこと?」
読み初めて半分くらいから感じた違和感は、読み終わったときには確信になった。
何かがおかしい。
「でも、なんで?」
謎を謎のままにしておくことは、苦手だ。
大抵の場合は本で解決するため、そうやって出会った本も多い。
でも、今回はそれでは無理だ。
(しかも、下手をすると、国の行く末に関わる・・んだよね?)
迷っている場合ではない。
翠花は、碧龍達がいる部屋に戻った。
その頃。
「翠花の母君にぞっこん?え?彼はこの町に来ていたんですか?」
意外な展開に、食い気味で聞いてしまう碧龍。
「ええ。そうよ。確かにその時に皇帝の弟だって言ってたわ。まあ、藍玉の方は全然でね。で、危うく強引に連れていかれるところだったのよ!!」
どうやら、そのあたりは翠花の父親も絡む事件だったようだが、全て聞く前に翠花が駆け込んできたため話は中断してしまった。
部屋に入ると、翠花は、言った。
「鳳白国の、暗号に使われた本を読みました。名前は変えてありますが、主人公は現、皇帝。ただ、この物語は・・。」
翠花は、どう説明したらよいか、悩む。
「鳳白国で読まれているなら、皇帝の活躍物語でしょ?」
気を利かせて青河が助け船をだす。
しかし、翠花は首を横にふった。
「違うんです。現皇帝は、自分の恋を叶えるためだけに、地位を得ることを決め、父である皇帝を暗殺し、その罪を叔父である皇弟に着せて投獄してしまう。主人公ではあるけれど、到底共感できないタイプのダークヒーローです。」
「あれ?でも、この本って鳳白国で、流行っているんじゃなかったの?」
碧龍が、海里の館で聞いた話を思い出す。
「そうです。確かにそう言っていました。そして、同じ人物は他にも『史実を上手く織り混ぜている』と言っていました。でも、ここに書かれていることを『史実』と呼ぶなら、皇弟殿下の投獄は無実の罪になってしまう。そんなことを言う人物は・・。」
「明らかに今の皇帝に悪意があり、皇弟の味方。もし『狼』を脱獄させるなら、関わっている可能性は高いね。で?それは誰?」
「本屋の若い店員さんです。」
翠花も含め、部屋の三人は、何とも言えない顔でお互いの顔を見た。
(分かってる。それが分かっても、彼がどこにいるかは分からないから、手掛かりはないに等しいのよね。)
「ねえ、暗号ってのはなに?」
その辺りをまだ説明されていなかった祖母に次第を説明したのだが。
「あら。その子なら今日来たんじゃないかしら?」
「「「え?」」」
「家にも出入りしている本屋がいるのよ。翠花のことも知ってて・・ああ、何か落とし物を預かったわよ?」
「「「なにを??」」」
思わず声をそろえた三人に祖母が出してきたのは、一枚の紙だった。
その紙には、数字が大量に、書かれていたのである。




