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忍務開始

『時間よ。シノブレイブ。

 特急列車がゴアに到着するわ。ゴアは手つかずの砂漠と遺跡が残る美しい街よ。あいにく観光を楽しむ余裕は無さそうだけど。

 今回の暗殺対象ターゲット元依頼主クライアントのフェリア・ホワイト。

 魔生物工学の権威スペシャリストで今はゴールデンエレクトロニクス社に雇われているわ。

 魔生物狂化研究で高い評価を受ける彼女は恐ろしいプロジェクトを任されているの。

 それは特定の種族を選んで感染させることの出来る狂化型呪詛の開発よ。

 あらゆる方向に撃つことが出来て標的だけを確実に仕留められる銀の弾丸を想像したら分かりやすいかしら。

 しかも通常の魔術障壁では防げず、対処もできない代物よ。

 もしもホワイトを止めなければ、全ての種族が根絶やしになる呪詛戦争が行われるわ。

 依頼主クライアント地底ドワーフ族のウィードマン。

 GE社の大手株主でこのプロジェクトを中止させたがっているけど、ゴールデン自体が潰れることは望んでないわ。

 依頼内容だけどフェリア・ホワイトの始末とプロトタイプの未完成術式の破壊。それとホワイトの傀儡助手、クオーツ・クリスタリアも破壊する必要があるわ。

 この魔導式傀儡にはホワイトの研究データを保存されていて、ホワイトの死後、プロジェクトを続行させる恐れがあるの。

 もう一つの依頼主クライアントリーゼロッテの姉、アンリエットの捜索及び保護も今回の重要な忍務の一つよ。

 この研究所では非人道的な生体実験が行われているという話もあるわ。もしアンリエットを保護出来たら迅速に帰還して。精霊回線を通じて連絡をして頂戴。

 それと最後に気をつけて欲しい事があるの。

 GE社の研究所は魔導探知機が至る所に配備され、魔導を使用した者の魔導炉を記録するわ。もしここで足がつくと貴方が勇者である事がばれてしまうの。だから研究所内での魔導の使用は不可能だと覚えておいて。

 シノブレイブ。これは今までのどの忍務とも違う。この術式は世界平和を脅かすだけで無く、倫理にも大きな影響を与えるわ。

 けれど失敗は許されないのはいつも通り。でも全力で支援するから安心して。

 さあ、シゴトを始めましょ』


 暗殺対象ターゲットのプロフィールを確認し、アビゲイルの精霊回線による忍務概要を聞き流す。


 ミス・ホワイトの件は『ついで』の忍務だと聞いていたが、どう考えても最重要案件だ。そんな術式が完成すればどうなるかは想像もしたくない。はぁ~、頑張らないとな。さて作戦を考えるとし――


「次はゴア、ゴアに到着します。ヱルモイ中央魔導鉄ご利用のお客様はお乗り換えです。お忘れ物のございません様お気をつけください」と車掌のアナウンス。


 ……考える間も無くゴアに到着しまった。もう少し時間がかかるものだと思ったが、それは十年以上前の話だったか。


 道理でダイアグラムが大幅に変更されている訳だ。作戦は行動しながら組み立てないとな。


 列車を降り、改札を出ると舞い散る砂ぼこりが出迎えてくれた。クソッ、この街に来るのは二度目だが、何度来てもこの砂ぼこりには慣れない。


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