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私は戦うダンジョンマスター  作者: もちもち物質
終わりのダンジョン
123/135

123話

「お疲れ様。いえー……わぶぶぶぶ」

 MVPである水キメラドラゴンとハイタッチしようとしたら、抱き着かれて溺れかけた。

 水キメラドラゴンはハイタッチを知らなかったらしい。


 びしょ濡れになりながら、リザルトの確認。

 今回手に入った魂は、400,723ポイント分。これで11人分だから、相当多いと思う。

 ……そして、手に入ったものは、まず、9人の人間。これは『王の迷宮』に運んで、作業中のゴーレム達の経験値にしようと思う。

 それから、剣や鎧もたくさん手に入った。特に、ナイフは誰もが持っているみたいだから、20本手に入ってしまった。

 立派な杖も4本手に入っているから、リビングドールに持たせてあげてもいいかな。


 手に入ったスキルは、まず、《一所懸命》。

 ……できれば使いたくない。

 命を削って攻撃力に転化するなんて、できればやりたくない。

 でも、対物理にも対魔法にも強いみたいだから、いざとなったらこれを使おう。


 それから《フリーズ》や《キャタラクト》の他、《フレアフロア》や《ファイアフライ》、《ツイスター》といった魔法がいくらか。

 《一点突破》や《一刀両断》が8つずつ。

 それから、《心願成就》という不思議なスキルも手に入った。

 これは、『運の良さ』にボーナスがつくパッシブスキル、みたいなものだと思えばいいのかな。

 持っておいて損は無さそうなので、《一所懸命》と一緒に、私が習得しておくことにした。




 さて、これで、オリゾレッタの精鋭らしき人達から『濁流の洞穴』を防衛したことになる。

 おそらくこれで、『濁流の洞穴』に来る侵入者は当分居ないだろう。

 そして何より……オリゾレッタの都で、動きがあるはずだ。

 派遣した精鋭が駄目だったとなれば、いよいよ、都を捨ててどこかへ行くか、治水工事を始めるしかない。

 彼らが川の水をためて浄化するような設備をそうそう簡単に作れるとは思えないので、多分、都を捨てることになるだろう。

 そうなれば、アドラットの町に人が増える。

 今の内から、アドラットに回す兵力をある程度確保しておいた方がいいかな。

 強化ゴーレムで包囲して、各部をクロノスさんやダイス君や水キメラドラゴンで補強していく形が一番いいかな。

 空からブラッドバットで爆撃して町を焼いたり、毒物を散布するのもいいかもしれない。ああ、そうしよう。毒物いいな。ちょっと悪性ブドウ球菌を育てておこうかな。

 王の動向だけはなんとも分からない。

 都に残るのか、それとも、王もアドラットに逃げるのか。

 ……できれば、王も捕らえて殺しておいた方が安全だから、うまくあぶり出して捕まえたい。




 それからまたしばらくは、テオスアーレで土木作業をしながら時々アドラットのお屋敷ダンジョンに行って様子を見る、という日々の繰り返しになった。

 そして、それと同時に強化ゴーレムの量産も随時行っていく。

 レイナモレのダンジョン群は流石、人が住んでいるだけあって、『ホロウシャドウメーカー』からぽこぽこぽこぽこホロウシャドウが生まれてくる。今まで量産のネックだったホロウシャドウがこうもたくさん生まれるようになったので、強化ゴーレムの量産も捗っているのだった。

 ……そして、生まれたばかりの強化ゴーレム達は、随時、土木作業に回されていった。

 穴を掘り、土を掻き出し、運び、山にして固め、壁を作り、石を敷き、或いは草を植え……。

 順次完成させつつはあるのだけれど、やはり、ダンジョンを自力で作ろうとすると凄まじい作業工程数になる。

 人手はあればあるほどいい。そして、一緒に作業をしている内に、ゴーレムと装備モンスター達の連携が深まっていくし、ゴーレム同士の連携も深まっていった。

 モンスターにも、個体差みたいなものがあるらしい。

 その個体差をモンスター同士が理解し合う事で、より連携の強度が増していく。

 ある意味、人間と同じだね。




 延々と土木工事を続けていたら、アドラットの町が大分大きくなっていた。

 一度、『濁流の洞穴』から様子見の為に都へ向かって様子を見てきたけれど、すっかり人が減って寂しい雰囲気の街並みになっていた。

 そして、近くの川から流れ込む腐臭が町を覆い尽くしているものだから、益々『ゴーストタウン』の印象が強い。


 これはそろそろ頃合いかな、ということで、生産した強化ゴーレム達を一度『王の迷宮』に集めて、『濁流の洞穴』で捕らえた人達から得られる経験値を分け合った。

 これでLv1の状態ではなくなったし、何もしないよりはずっと良くなったわけだ。

 ……あとは、この強化ゴーレム達を連れて、アドラットの町を攻め落とすだけでオリゾレッタの国の精霊の魂が手に入る。




 オリゾレッタの様子見を続ける傍ら、ブラッドバット部隊に散布してもらう毒物の準備を行った。

 用意したのは大量の卵と大量の塩。それから水と砂糖と、お酢。水晶もたっぷりと。

 卵は『王の迷宮』やレイナモレ城で摂れた。塩と砂糖とお酢はレイナモレ城と『元・グランデム城』の厨房からたくさん持ってこられた。水は『水石(小)』でいくらでも手に入る。水晶は『濁流の洞穴』が『清流の洞穴』だったころにたくさん摂れていたから、それをそのまま使う。


 まず、お酢をスライムメーカーに注いで、お酢スライムを大量生産する。

 次に、卵の中身を全て大きな器に入れる。殻は全て、お酢スライム達に食べさせる。この時、卵の殻の内側についている膜はそのままにしておいてもらう。

 卵の中身は培地にして、そこで黄色ブドウ球菌を育てる。

 最終的には培地ごと破砕して撒けばいい。


 卵の膜は、集めて合成。

 少しばかりの魂を消費して、巨大な1枚の膜にした。

 大きな卵の膜ができたら、また合成。水晶の大きな水槽を作って、箱を卵の膜で2つのスペースに区切る。

 ……できたら、念のため箱をダンジョンの外へ運び出した。


 建設地に箱を設置したら、濃い塩水を水晶の水槽、卵の膜の両側に注ぐ。

 並々と塩水が湛えられたら、卵の膜で区切られた2つのスペースそれぞれに、適当な金属を突っ込む。

 金属同士を金属線で繋いで、金属線の真ん中に『雷石(中)』を繋いで、電気分解を始める。

 電気分解の基本的なケースの1つだけれど、これで塩素を手に入れることができる。

 副産物として水酸化ナトリウムもできるので、これは建設中のダンジョンで使おうかな。




 塩素をひたすら集め続けて、塩を大量に消費した。

 途中でグランデムの食糧庫から塩が消えたので、『王の迷宮』にあった『岩塩坑窟』をレイナモレ城に移設して、塩を生産した。

 その間もオリゾレッタの移住は進み、ダンジョン建設も進み……。


 ……そしていよいよ、オリゾレッタを落とす日がやってきた。




「いってらっしゃい」

 最初に、火の魔法を使えるブラッドバットと、火炎瓶を持ったブラッドバットを都に向けて放った。

 城も燃えたし、町も良く燃えた。

 人はあらかたアドラットに避難していたから、死者は少なかったみたい。


「いってらっしゃい」

 火が消し止められ、或いは、火が全てを燃やし尽くしてそれ以上燃えなくなって少し経ったら、今度は黄色ブドウ球菌を薄いガラスの甕に入れたものを持って、ガーゴイル達が飛び立った。

 ……ブラッドバットだと、ちょっと重すぎて運べなかったみたいなので、ここはガーゴイルを導入。

 結果、燃えた後の町を覆い尽くす勢いで、黄色ブドウ球菌を培地ごと撒いてくることに成功したらしい。

 撃ち落とされてしまったガーゴイルも居たみたいだけれど、ガーゴイルの何体かは城の窓を破って入って、城内部にも黄色ブドウ球菌をまき散らしてきたらしいから、とんとん、かな。


 ……こうして、オリゾレッタの都は2度に渡る戦禍に塗れ、人が住める状態ではなくなった。

 元々、川の汚染があって、人が移動していく状態にあった町だ。

 残っていた人達も、あっさりと移住を決めた。決めざるを得なかった、というか。

 ……そして、オリゾレッタの王も、それは同じだったらしい。


 黄色ブドウ球菌を撒いた2日後。

 ひたすら上空で張って観察していると、オリゾレッタの都からオリゾレッタの紋章が入った馬車が出立したのが見えた。

 どうせあれはダミーだろうから、火を放っておく。

 ……目を凝らしてみると、馬車が出た反対側から、人々の移動の中に混じって、粗末な馬車が数台出ていくのが見えた。

 あれの中のどれかかな。


 こちらはダミーじゃないような気がするけれど、とりあえず、目についた馬車全てに火を放つことにした。




 王様は守られるものだ。

 ということは、守らなくてはいけないような状況になれば、必ず守られる。

 そして、国王を守る人がそうそう弱いわけもないので、単純に火を放ったりすれば、自然と国王が浮き出ることになる。

 ……結果、粗末な馬車の1台から、粗末な服を着た男性が慌てて下ろされ、さりげなく守られながら馬に乗せられそうになっているのを発見した。

 あとは、馬の脚を《ゲイルブレイド》で1本切り落とし、すぐに国王らしい人をキャッチ。

 追手は《フレイムピラー》で止めつつ、《ラスターステップ》でまた上空へ退避。

 そうして待機しておいてもらったジョーレム君まで国王を運んで、アドラットまで輸送するのみ。


「貴様……何が目的じゃ!」

「だいじなものを取り戻すことです」

「川を汚したのも、都に火を放ち、毒を撒いたのも、貴様か!」

「さあ、どうでしょう」

 国王は気丈にも、私を睨みつつ、あれやこれやと言ってくる。

「……何故、儂を捕らえる」

「必要な事かもしれないので」

 そして、その質問があった直後。

「ならば、儂が死ねば、さぞ困るのじゃろうな?」

 国王は、舌を噛みきった。

 ご立派。


 王は春子さんがさっさと治してくれた。

 気絶したままの王を運んで、ジョーレム君も走り続けてくれている。

 ダンジョン範囲内で王を殺しさえすれば、あとは強化ゴーレムと塩素でかたがつくだろう。

 あと少しで、私の世界に手が届く。


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