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Monster PandemiX(モンスター・パンデミックス)  作者: 古賀丸マシカク
エピソード XII どっこい祭り

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第54話 ムーンサーベル! 朧月!

noteにて「Monster PandemiX」の裏話を公開中!


https://note.com/kogamaru_mp/n/na6350cefe825

 すると突然、背後のドアが凄まじい音とともに吹き飛んだ。


 ドゴォォン!


 蝶番ごと外れたドアが床を滑り、壁にぶつかって止まる。

 あまりに豪快すぎて、潜入作戦の「潜」の字も残っていない。


 見ると、シマシマとバロンがそこに立っていた。


「姫様、助けに参りました」


「バウワウ!」


「な、なんだ!? おまえたちは! この娘の仲間か!?」


 突如ドアをぶっ壊して入ってきたバロンとシマシマに、さすがのダークフロッギスも躊躇たじろいだ。

 悪の教祖とはいえ、ドア破壊からの突入は想定外だったらしい。


「シマシマ、バロン、ナイスタイミングだ! テンを引き離して」


 二匹がそれぞれテンの頭の触角を口で咥えると、一気に引っ張ってルナから引き離した。

 触角を抑えられてもなお、ジタバタと暴れているテンにルナが駆け寄る。


「テン、しっかりして!」


 テンの頬を思いっきりビンタした。


 バッチーーーン!!


「うわっ、痛そー」


 シマシマの顔が歪む。


 しかし——


「?*+@¥$$%&」


 まったく効いていない。

 それどころか、暴れ方が先ほどより激しくなっているような気がする。


「くそ~、ならばこれならどうだ……。テン、ごめん!」


 ルナは思いっきり拳を振りかぶると、今度は反対側の頬に左フックを炸裂させた!


 ゴッ!!


 鈍い音とともに横に吹っ飛ぶ。

 テンは白目を剥いてバタンと倒れると、電池が切れた人形のようにピクリとも動かなくなった。どうやら気絶してしまったようだ。


 ここに至るまでの状況がわからないシマシマにとって、テンがルナにボコられる意味は当然わからない。

 とはいえ、左フックはいかがなものか……。


「姫様、それはいくらなんでも……」


 ——などとシマシマが言うと思ったら大間違いだ。

 一ミリもテンのことを憐れんでいない。

 むしろ、おそらくは自業自得だろうと踏んでいる。

 それほどまでに、シマシマはルナに絶大なる信頼を置いていた。


「おい、小娘、これを喰らえ!」


 テンが使い物にならなくなったとわかると、今度はルナに照準を定める。


 先ほどテンに浴びせた光線だ。

 ルナの身体(からだ)に青白い稲妻光線が注がれる。


「ケロケロケロ。これでおまえも俺様の意のままだケロ」


 ダークフロッギスは、勝ち誇ったように次の指令を出した。


「ではでは、その場でタコ踊りでもしてもらおうか、ケロ」


「……」


「タコ踊りでもしてもらおうか、ケロ!」


「……」


「タコ踊りしろっ! ケロ!」


「……」


 ダークフロッギスのパワハラまがいの指令が発動されたが、当の本人にはなんの変化も起きない。

 ルナはただ腕を組んで立っている。ものすごく普通に。


「なぜだケロ! そんなバカなケロ!」


 ダークフロッギスは、黄色い目を見開き、縦に細長い瞳孔が丸くなった。

 明らかに動揺している。


「残念ながらあたしはフロッグジュースを飲んでいないのでね」


「ふふん♡」とドヤ顔を決める。


「なんだってケロ!?」


 そのとき、ルナの頭の中に誰かの語りかける声がした。

 耳で聴こえてるのとは違う。厳かな声音(こわね)が直接脳に届いてるような感覚だ。


(えっ? なに……?)


 戸惑いながらも、《《その声》》に意識を寄せる。


 そして——


「……よし、やってみるか」


 と呟くと、背に差してあるムーンサーベルを引き抜き両手で天高く掲げた。


 そして、声高に叫ぶ。


「ムーンサーベル! 朧月おぼろづき!」


 するとムーンサーベルがぼんやりと光を放ち始める。

 それはまるで、霞や雲に覆われて揺らぐ月光のような輝きだった。


「ケロ! ゲロ! ゲロゲロッ」


 突然、ダークフロッギスが気味の悪い声を漏らすと、口からドス黒い煙……、いや、まるで黒いエクトプラズムのようなものを吐き出した。


 しかも体が硬直しているのか、立ったままガクガクと痙攣している。

 スイカのような黒目はひっくり返り、白目……いや、黄色目を剥いている。

 見た目的には相当気色悪い。


 ムーンサーベルは、その黒いエクトプラズムもどきを次々と吸い取っていく。


「す、すごい……」


 その光景を目にしたシマシマが息をのむ。


 バロンは、警戒心マックスで唸っている。


 テンは……まだ気絶したままだ。


 やがて、黒い煙(エクトプラズム)がすべて消え去ると、ムーンサーベルの光も揺らめきながら消えていった。


 ダークフロッギスは、その場で膝をつき、ぐったりとうなだれた。


「ダークフロッギス、おまえの体内のデルモなんとかっていう物質と、謎の妖力はすべて抜き取ってやったわ」


 ルナが胸を張ってドヤ顔で言い放つと、ダークフロッギスは顔を引きつらせた。


「なんだって……? ……ケロ?」


「だからあんたはもう……ただのカエルよ!」


「ただのカエル!? ケロ?」


 一瞬、考えたあと……


 ガーーーーン!


 ダークフロッギスはショックのあまり、再び黄色目を剥く。


 すると、横で気絶していたテンがうつらうつらと意識を戻す。


「あれ……? どこや、ここ……?」


「テン、洗脳が解けたのね!」


 ルナは思わず駆け寄り、そのまま勢いよく抱きついた。

 さっきまで拳を振るっていた相手とは思えない抱擁である。


「……な、なんやねん、いきなり……恥ずいからやめ! やめれ!」


 テンは赤い顔をさらに赤くしてルナの腕の中でもがく。

 その様子を見て、シマシマはようやく胸をなでおろした。


「それにしても姫様……、先ほどの技はどうやって習得したのですか?」


 感動の余韻に浸っているシマシマが尋ねてきた。

 魔術というべきか、妖術というべきか、あんなものは見たことがなかった。


「習得とかじゃなく……、たぶんムーンサーベルが教えてくれたんだ」


(そう、あの時、頭の中に語りかける声がした。『ルナよ、ムーンサーベルを掲げ、朧月と唱えよ』と……)


 そのとき――


「なあ、ルナー」


 まだ腕の中にいるテンがルナの顔を見あげる。


「……なんや知らんけど……顔がめっちゃ痛いねんけど……特にこっちの右の頬が——」


 と、最後まで話し終わる前に、ルナが無言でテンを突き飛ばす。

 テンは後ろに三回ほどゴロゴロと転がり、最後はうつぶせで止まった。


「よし、スズカ村に帰るぞ! 撤収ー!」


 ルナはまるで何事もなかったかのように宣言し、そのままスタスタと出口へ向かう。

 テンは、ワケがわからないといった表情でシマシマとバロンを見つめる。

 涙で潤んだその目にいたたまれなくなった二匹は、無言でその場を立ち去った。


「なんなん!? えっ? なんなんいったい!」


noteにて「Monster PandemiX」の裏話を公開中!


https://note.com/kogamaru_mp/n/na6350cefe825

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