出会い、そして分かれ道
出会いとは突然である。
理由は様々。行動を共にし会話をし、トラブルを経て、
それがベストマッチしたり、超絶バッドマッチになってしまったり…
今回の任務の内容は神域の浄化。熊野古道、そのとある場所に、かなり昔に生じたとある妖怪が封じられている。神域を外部から守るために、そして内部の悪しきモノを封じるために張られた結界。にもかかわらず人間の出入りは可能という規格外の結界。そのおかげで現在まで何も問題なくきたのだが、どうやら異常が発生したらしい。結界内部に妖怪の出現、そして存在しない道の存在。発覚してから数日ではあるが、その侵攻速度は幹部6人を派遣するには十分な内容だった。
協会より
霊滅師筆頭 四天流霊術道道士 皇クニサダ
総務長 死霊魔術師 アナスタシオス・ステファノプロス
渉外兼結界班長 結界術師 ジョナサン・グレイ
同盟より
黒縄地獄 呪釘亡 長墓ヨシノ
叫喚地獄 女王蜂 蜂ヶ崎ミモリ
焦熱地獄 イタコ 浦屋敷トメコ
噂には聞くも、会うのは初の三対三。一筋縄ではいかないだろう。それはこの時点で確信に変わった。
「………ぽっ」
「いや、ん… ごほん」
見つめ合う二人。青白い肌を赤くするヨシノ。年甲斐もなく照れるクニサダ。他は呆れたり喜んだり…
「いや、何をやっとるのかね! 広大な聖域が今にも崩壊しようとしてる目の前であるぞ!?」
思わずいつもの調子で突っ込んでしまうアナ。その肩をトメがポンと叩く。
「ほほ。そうカリカリしなさんな。カリカリ梅、食うかい?」
「ナンデヤネン」
半分呆れて雑に突っ込む。が、トメは逆に喜ぶ。
「ほほ。ちょいとは肩の力が抜けたかい? 初対面の者が多いが連携は取らねばならん。が、なにぶんうちらは同盟歴が長いからね。どうしても協会の者とは距離を取ってしまう。にもかかわらず、ぐっと距離が縮まる者がいるんだから、むしろ応援するくらいじゃないとね」
「う、うむ。いや、しかし」
「御婦人の意見はごもっとも。我ら二人は逆に在籍期間も短い異国の者。ここは年長者の意見に従うべきところ」
「かった~い。仕事は楽しくやれればい~んよ」
「それは軽すぎるのでは? そもそも貴女も我々同様短い方なのでは?」
「………」
「けっこういっとるぞ?」
「トメさん!」
「え!?」
と、こちらはこちらでズレた盛り上がり。とりあえずは会話のきっかけは得られたし、それぞれ人となりは確認ができた。キャラと能力がわかれば合わせやすくもなる。アナもひと安心した。
「ご、ご趣味は…」
「…人形作りを少々」
と藁人形を胸の前に出して見せる。
「これは… 藁の一本一本が揃っていて鑑賞用としても素晴らしい出来だ。愛情、ですね」
「…いえ、その… はい」
微笑むヨシノの顔は
「正直、不気味には見えるのだがね。というか藁人形に愛情て」
「あんたうるさすぎ。絶対モテないっしょ」
「それは否定せんがね。これを前によくもまあと思わずにはいられないのだよ」
アナの視線の先は結界の端。そこには彼らの声と呪力に引き寄せられた化物たちが群れを成していた。大蛇や亡者と様々いるが特に多いのは…
「主がアレだからねぇ」
「だろうな。伝承に間違いは無いようだ」
「それにしても…」
烏天狗、天狗と呼ばれる妖怪たちの中でも実働部隊として動くとされる妖怪だ。大天狗と呼ばれるリーダー各の命で動くはずの彼らが他の妖怪と共に理性の乏しい様子で人を襲うことが先ずは異常だ。
「一応、作戦みたいなのは考えてはみたんだけどさ、やっぱウチら二人で散らしてく感じ?」
「で、あるな。呪力は持ちそうかね?」
「どうだろうね~ウチとしてはアンタのが心配?とだけ言っとくわ」
アナとミモリが軽めに挑発し合い能力の底を探り合う。互いに界隈には知られた者同士ではあるが、ミモリに関しては暗殺者としての面が強く、こういう戦いでの立ち振舞いは未知数だった。だが、作戦を考えて、その上でアナと共に、と言うのだからそういうことなのだろう。アナも隣を気にせずに戦える。
「では結界を開くが、そちらの二人は準備はいいか?」
ジョナサンが聞くと、二人は既に臨戦態勢。札と釘を指の間にびっしり構えて気合い十分のようだ。そして、結界の向こうの化物たちも準備は整っているらしい。「早く来い」と言わんばかりに涎を垂れ流し地面を穢している。
「やれやれ。常在術師の対応が遅れていたらと思うとゾッとするね」
ジョナサンが結界に手を触れた。
「Bleach」
結界に穴が開き、結界に張りついていた亡者が倒れるも後続は気にせずにそれを踏み砕いて雪崩れ込む。
「邪魔だ」
アナが指を差すと、彼の喚び出した屈強なゾンビ兵が数体、突進して押し戻し道を切り開く。
「やるじゃん」
「行くぞ!」
「頼んだぞ」
5人が結界内に入るとジョナサンは結界の穴を塞ぎ、結界をさらに強固なものにすべく全体の解析と調整に入った。
一方、中は一気に大混戦。結界の端、外に近い現在地付近にいるのは力も知性も弱い妖怪。だが数が多い。アナが兵を十体に増やして自分たちを守るよう布陣するも、数の暴力で圧され始める。
「さすがにウチもやんなきゃだよね~」
ミモリが一匹の大きな蜂を喚び出す。人の頭よりも大きな雀蜂だ。
「いくら大きいとはいえ一匹では」
「黙って見てなさいって。クニサダさん?ちょっとこの子にバフかけてくんない?」
「うむ」
クニサダは言われるがままに呪符を取り出して雀蜂を強化する。ミモリが軽く礼を言う。と、ヨシノがちょっとだけムッとしているのに気づいて軽く謝罪。
「ブーストは十分。さぁ暴れてきなさい、マイベイビー!」
雀蜂がギチギチという鳴き声のようなものを発すると、腹が裂けて、そこから大量の普通サイズの雀蜂が現れて化物たちを攻撃し始める。高速で頭部を貫き、貫かれたモノは苦しみだしてその場に倒れた。攻撃からあぶれた蜂はその体を喰らっている。
「おお、これはこれは」
「ウチ特製の子供たち。頼りになるっしょ?」
ミモリの術は蜂の使役。だが、もちろんそれだけではない。使役した蜂を媒介として呪力を注ぐことにより複製蜂を生産する。さらには、この複製蜂には自身が呪力で作った特殊な毒を付与することが可能。このコスパが非常によい。生物兵器の一個師団。その気になれば国を滅ぼすことも可能な危険人物だ。
(突っ込みはほどほどにしておかねば)
そう思いつつサポートに徹するアナだった。
さて、戦局が安定したことで他の者は後衛にまわり温存。入口付近の集団を無事に蹴散らすと数がぐっと減る。ここで主力交代。蜂がサポートにまわる。数が減った分、個々の力が増してきた。蜂の毒は通じることは通じるが致命傷には至らず。屈強なゾンビ兵の出番となる。
「………」
「………」
ゾンビ兵は無言で亡者を掴み上げて、それを武器として振り回す。中には大蛇を鞭のように使うモノも。
「てか、ほぼマニュアル操作? 並列思考パないんすけど」
「ちょっと話しかけんでくれ。手元が狂う。あと烏天狗が地味に厄介だ」
「たしかに。ウチの子たちも回避されんだけど」
圧されているわけではないが、進撃の速度は落ちている。となると、中心にいるモノ、この結界に封じられた大物が準備万端で待ち受けるということになる。なるべくは速攻で進みたいところ。
「……私が」
「いや、ヨシノさんは要だ。ここは私が」
クニサダが装飾のある呪符を取り出す。明らかに数段上の呪力が込められた物とわかる。
「いけ!」
呪符が空を舞い、クニサダの真上に一枚、空中に四枚、地面に八枚が配置された。そして呪符同士が光で結ばれて簡易結界を生成する。
「バフ… とデバフ?でしたか、それを同時に全体にかけるものです。存分に暴れてください」
「っは~すんご!」
「助かる」
再び勢いを取り戻して進攻する。呪力残も十分。先を急ぐ。
「とはいえ、ここまでは序の口。ここからが問題だろうねぇ。ほれ、さっそく」
道が三手に分かれている。地図には無い分岐。
ここからが本番だ




