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呪人・廻《カースマン・カイ》  作者: さばみそ
第七章
83/86

正体

「む?」

「どうした?小僧」

洞穴内の社に取り残される形になったが、ヤマトと甕丸様、相性は悪くないようで世間話を続けていた。

「何か無性にあの猿を殴りたく… いや、まぁ向こうは大丈夫でしょう」

「ふむ。結界のせいで我は何も感じとれんが。ずいぶんと信用しておるのだな」

「それはもう。万事問題無し。僕のすることは、間違ってここに逃げてくるかもしれない敵を祓うこと。あとは…」

「あとは?」

「労いの言葉と、お茶の用意ですね」

そう言って本当にお茶の用意を始めるヤマトを見て甕丸様は声をあげて笑った。



「さてと」

タケトは構え、左手と左足に呪力を集中する。

「じゃ」

「ええ」

それだけ交わすと、タケトは一気に結界の端まで、障害となる狒々を捻切りながら跳び、障壁を砕いて外へと出た。

「よし」

「じゃないわよ! もう、ひどい土埃!」

「あ、ごめん!あとよろしく」

「まったく」

「了解。では…」

アイがそう言うと、正面が開いて砲塔がカメラのズームのように伸び出てる。そして

「アイちゃんビーム!!!」

と一際大きな音声で呪力を放出した。


ズドンッ!!


ビームと結界との衝突音が響く。ほんの一瞬、直線上の狒々が一掃された。タケトのそれと比較して遜色ないレベルである。

「結界の破壊には至らず」

「まだ調整が必要かしら?」

「先ずは結界内の敵の殲滅を優先します。余力で再分析し解除活動に移行します」

「よろしい」

アイの攻撃力の高さを見て狒々は慎重になる。が、知性はそこまで高いわけではないらしく、周囲を囲んでの一斉攻撃という単純な行動を取った。

「アイちゃん拡散ビーム!!」

アイは後ろ足を折り曲げて上を向くと、その技名の通り周囲に拡散する呪力砲を放つ。拡散されても威力は十分。狒々たちは撃たれて落ちる。運悪く一撃で祓われなかったモノは、残ったモノたちがやけくそで襲い続けるために引き続き苦しむこととなる。

「ねぇアイ? やっぱりその技の名前、変えない?」

「何故です? ビームはロマンです」

「え~と、うーん…」

ちなみに、このビームのような呪力の砲撃はミコトの技を参考にしているのだが、何をどう間違ってしまったのかネーミングセンスは娘であるツムギちゃんのものを取り込んでしまったようだ。心なしか口調も幼くなっている。

「アイちゃん流鎖鎌術ぐるぐる~スラーッシュ!」

アイの上部からキュインと円筒形の突起が飛び出て、そこから鎖鎌が出た。それを鎖を伸ばしつつ高速回転。触れれば真っ二つだ。が、いつの間にかアイの隣で正座をしているミサトのように身を屈めれば回避可能。狒々たちもさすがにそれには気づき

「ニンゲン アタマワルイ」

「ニンゲン ツクッタテツクズ モットアタマワルイ」

と罵りつつ身を屈めて近づいてくる。

「何故そう思うのか理解不能です。所詮は猿の思考回路なのです」

アイがそう言うと本体サイドから小さめな砲塔がいくつか出てきて、細かなビームを四方八方に照射。回避不可能な体勢になっている狒々たちを撃ちまくる。

「アイちゃんのスーパーセルフコンビネーションを見たですか! 名付けてぐるぐるフラッシュです!」

(うーん、本当にどうしたものかしら…)

ミサトは頭を抱えた。



ズドンッ!

「うおっ!? 始まったか。あのレベルなら余裕だろうし、逆に結界が強力なおかげで誤射による山林被害もないから安心だね」

「人の心配をしてる場合か?」

「うおっと」

タケトがアイの砲撃の音で振り向きながら呟く。その一瞬を狙って、狒々のボスが長い腕から長く鋭い爪を剥き出しにして切り払う。タケトはそれを上体を反らして躱し、勢いそのままにスライディング。からの体をひねって向きを変えてボス猿と向かい合う。

「なかなかの反応だ。少しは手応えがありそうだ」

「ベタな悪者のセリフだなぁ。他に言い残すことはある?」

「くくっ。ナマイキな小僧だ。肉は不味そうだが、呪力はそこそこ。いい補強になる」

「そこそこ、って程度の認識ね」

猿の挑発に挑発で返すタケト。その余裕ッぷりに猿の方が早くも沸点に達し、叫びながら突進してくる。

「人間風情が!この猿神に対して、無礼にも、程があるぞ!! 今なら、土下座の一つでも、して謝罪すれ…」

「嘘をつくなよ」

猿の攻撃を強めに弾いて間を作り睨む。

「お前、玃猿(かくえん)だろ?」

猿はギョッとした。攻撃の手も止まる。よもや自分の出自を見抜く者がいるとは思ってもみなかったのだろう。

玃猿とは中国に伝わる猿のような妖怪だ。一説には野人とも言われている。また、人間の女性を拐って子を産ませるとも伝えられており、日本にも類似の存在、もしくはそれらが渡ってきたという伝承が残っている。

「やっぱりそうか。他の猿とか全然違うから… でもそうだとすると、疑問があるんだよなぁ」

タケトは頭をポリポリと掻く。玃猿も自身を知る男の発言に興味を持ち、身構えつつも次の言葉を待っていた。

「ちょっと前からさ、この国は外部からの侵入に対してけっこう力を入れて警戒しててね。そんな中でお隣の国から妖怪が侵入、ってのはちょっと考えられなくてね。でも君、自分の群れじゃなくて地元妖怪の群れを率いてただろ? それって、まだ日本に来て間もないってことだよね?」

タケトは玃猿を見る。玃猿の顔からは先程までの興味は失せ、冷や汗が流れていた。

「君、日本に来たのはいつだい? てかさ、誰の… 何の助力で来た?」

少し強めに、少し低いトーンで語り、睨む。玃猿は明らかにマズイという顔になり、そしてゴクリと唾を飲んだ。そういうところは人間のそれに酷似しているらしい。

「ふっ… ふはははは!見かけに依らず頭の切れる男だ。どうだ?俺の部下にしてやっても…?」

玃猿が違和感を覚える。そして、その原因に直ぐに気づいた。タケトに向かって伸ばした腕の肘から先が消えていたのだ。

「な… ぐ… ぎゃあああ!!」

「聞かれたことに答えなよ。全部話すなら、そうだね、君を保護することも…」

「黙れ!」

玃猿は残ったもう一本の腕と両足を器用に使い、さしずめ先端に刃の付いた鞭のような波状攻撃を繰り出す。が、戦闘能力はタケトのが数段上。最小限の動きで躱し、必要な時だけ左腕で払う。出血もある玃猿は当然、徐々に押され始め

「ふんっ!」

タケトの掌底が鳩尾(みぞおち)にキマり、玃猿は崩れた。失った腕で腹を押さえ、もう一方の腕で失った腕を押さえて(うずくま)る。そんな玃猿にタケトは近づき、紅く光る冷たい眼で見下す。

「ひっ…」

訳もわからぬままに腕を失い力の差を見せつけられた玃猿は、ただただ怯えている。

「お前の目的は何だい?」

暫しの沈黙。


「… 俺の目的はこの地で、勢力を拡大し、俺の国を…」

「そんなわけないだろ? わざわざ警戒中の国で、その程度の実力で。てか、さっきの結界が答えな気もする…」

「俺の力をナメるな!」

玃猿は膝をついたまま爪と牙を剥き出しにして威嚇する。と見せかけ、地中を這わせた強靭な尻尾でタケトの背後から首を狙った。が、赤目の力を発動させているタケトに死角は無い。すっと躱して半回転し、尻尾を掴んで更に回転。尻尾と共に巻き上げた土砂を巻き込みつつ、玃猿をぶん回して木に叩きつけた。

「ぐはっ…」

「悪いけど、こんな見た目でもそこそこ修羅場はくぐってきてるんでね」

なんとか体勢を変えて背中で受けるもダメージは大きく、玃猿は今度こそ本当に動けず横たわる。

「で、どうする?」

再び詰め寄るタケト。対して、玃猿は観念したのか恐怖心は失せ、じっとタケトを見据えていた。


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