12 登校ハプニング
「つばさっ、おはよぉー」
「あ、佳奈美。おはよー」
次の日、成瀬高校。
僕はいつも通りに登校していた。
「なんかつばさ疲れてる? へーき?」
「うん……なんか気疲れしたっていうか、そんな感じ」
「キヅカレ?」
「まぁね」
天宮佳奈美は中学校からの友達で、僕とは正反対の可愛い女の子だ。明るいブラウンに染め上がった髪と、ばっちり化粧がしてある顔、それにプラスして下着が今にも見えてしまいそうなくらい短いスカート……。とても僕には真似することが出来ない。
「ねぇねぇ知ってる? 噂なんだけどさぁ、三年の前田ひかりって人がね」
「ええぇっ?!」
「まだなんにも言ってないよ」
『前田ひかり』に過剰反応を示してしまった。
そっか、ひかりさんってここの高校だったんだ……。
「で? そのひかりさんがなに?」
「なんかぁ、メイド喫茶で働いてるとか働いてないとか。まっ、噂だけどねン」
また噴出しそうになる。
それはバレたらひかりさん、厳しいよね?! というか僕まで厳しくなるじゃん。
「どーしよ……」
「どしたのつばさ? またキヅカレ?」
「いやいや」
メイド喫茶もとい『淑女育成教室』は、キャバクラとかの水商売として捉えられるのだろうか?
だとしたら、非常に危ない。
ましてや、僕やひかりさん、多分まりあさんもあずきさんもありささんも、高校生だとして、バレたらきつい処分が待っているんじゃないだろうか?
もしや、退学とかも……ありえる?
「うぅー……」
賑やかな教室の中で、僕は頭を抱える。
冷や汗が止まらなかった。
「つばさちゃん」
耳元で、優しい声が聞こえた。
僕はばっと顔を上げ、声の主を確認。
「えっ、あ」
そこにいたのは、
濃いグレーのスーツに身を包んだ、
「あずきさん……?!」
可愛らしい童顔の、穂村あずきさんその人であった。




