11 ドジっ娘、つばさちゃん!
「い、いいいいいらっしゃいませご主じっんさまぁぁ」
「それでは全くだめですわよつばさ!」
静かな店の中で、僕はまりあさんに『メイドについての色々』を教え込まれていた。
どうやら僕のメイド・タイプは『ドジっ娘』に決まったらしく、上手な転び方や頬の染め方など、学校でこれっぽっちも教えられたことの無いものを次々と頭に叩き込まれていく。
「お茶、淹れましたから飲んでくださいね」
ありささんがカウンターの奥から現れた。彼女が持っているトレイの上には、ほかほかと湯気を立てているカップが二つ乗っている。
「ありがとう、ありさ。……あっ!そうですわつばさ!」
「な、なんですか……」
げっそりとした僕の顔を品定めするようにまりあさんが見つめる。少し気味が悪い。
「このありさが淹れてくださったお茶を、『ドジっ娘』っぽく飲んでみなさい!」
「はぁ? どうやるんですか?」
「それを自分なりに考えて飲むんですのよ」
まりあさんは腰に手を当てながらほっかほかのお茶を僕の前に突き出す。ほんのりとレモンのいい香りが漂ってきた。
僕は渋々カップを受け取る。
(ドジっ娘……割と昨日のあずきさんみたいな感じだよなぁ……)
考えながら、そっとカップに口をつける。ちらりとまりあさんを見ると、期待に膨らんだ目で僕をじっと見ていた。
勢いよくカップを傾ける。唇に、どばっと熱い液体がかかった。
「うっわぁぁあぁぁ! 熱いッッ!」
カップを投げ出してしまった。宙に放り出されたカップはくるくると回転し、着地。床に派手に飛び散った。
「あらまぁ。何しているんですの」
まりあさんがしゃがんで、割れたカップをつつく。店の奥からあずきさんやひかりさん、キミィまでもがやってきた。自分の頬が恥ずかしくて熱くなるのがわかる。
「ご、ごめんなさぁい……」
は、恥ずかしい……!
いけない、なんだか涙腺が緩んできた。視界が霞んで――僕、泣いてる……?
「それ、ドジっ娘ですわよつばさ!」
「へ……?」
突然まりあさんが嬉しそうに僕の肩を叩く。にこにこしていた。
「控えめな『ごめんなさい』にうるうるの瞳、紅に染まった頬――それこそ、ドジっ娘の他にあてはまるメイド・タイプなんてありませんわ!」
「は、はぁ……」
「よかったねぇつばさちゃん! まりあ様に認めてもらえたねぇ!」
隣であずきさんがぴょんぴょん飛び跳ねながら喜んでいる。
「つばさ、晴れてお前もこの店のメイドだ。よろしくな」
ひかりさんも僕の肩に手を乗せて、言う。
「ほらほら、つばさちゃんも喜んだらどう?」
キミィが僕の顔を覗き込む。
僕は皆に促されて、少し両手を上に上げる。
「う、うわーぃ……」
なんかさっきとは違う涙が出てきたぞ……。




