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書籍化決定!!したらS級美少女の先輩が通い妻になった  作者: アライコウ
第一部 憧れの先輩が俺の妻になるまで

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2-3 真天先輩からの♥メッセージ

 昼休みが明けても、俺は何だかボンヤリと過ごしていた。頭がふわふわしている。

 そんな俺の様子は、クラスメイトたちから見ても気にかかるようだった。放課後になると男子連中がこぞって声をかけてくる。


「タダヒト先生、聖川先輩と一緒にメシ食ったってマジ?」

「何がどうなってそんなことになったんだ?」

「詳しく聞かせろって~」


 考えてみたら、弁当箱を持ってホイホイ真天先輩に付いていったのはみんなに見られていたのだ。


「……このまえ学園特別表彰ってので初めて顔を合わせて、なんか知らないけど興味を持たれたんだよ。別にたいしたことじゃないって」


 すると今度は女子が詰め寄ってきた。


「聖川先輩が男子をランチに誘うなんて、一度も聞いたことないよ!」

「たいしたことないなんて、そんなことあるわけないじゃん!」

「うんうん、脈ありだよきっと♪ さっすが将来の大作家サマは違いますなぁ~」


 囃し立てられる中、俺はなるべく冷静になって考える。

 そういう……ことなのだろうか。真天先輩は、俺に好意を持ってくれている?

 そもそも専業主婦になる練習をさせてほしいなんて、普通の思考回路からは出てこないのではないか。いくら以前から俺の小説のファンだったからって……。


 俺はそのままボンヤリしながら教室を出た。部活に向かう生徒たちとすれ違いながら昇降口へ。

 そのとき、スマホがピコンと音を鳴らした。

 真天先輩からのメッセージだった。昼休みの時、遅ればせながら連絡先を交換し合ったのだが、まるでひとりになるのを計ったようなタイミングだ。


【今日も一日お疲れさまでした。執筆がんばってくださいね】


 ごくごく簡素な、けれどありがたい文面。

 真天先輩は生徒会の仕事の最中のはず。それでもこうして俺に励ましの言葉を送ってくれたのだ……。


【ありがとうございます。がんばります】


 あまり凝った返事にするのもなんなので、俺もシンプルな文面にして送信した。

 すると、またすぐにメッセージが届いた。


【明日のお弁当、お楽しみに♥】


 ……こ、この♥マークはいったい何の意味があるのだろう?

 とにかく俺は真天先輩に応援されている。これが不変の事実なんだ。


 だったらやるべきことは、期待に応えて執筆しまくること。いつまでもドキドキしたままではいられないじゃないか。

 自宅マンションに戻り、制服を脱ぎ捨てて普段着に着替え、インスタントコーヒーを淹れて、パソコンに向かう。


「おっし……集中集中」


 カタカタカタカタカタ……無音の部屋にキーボードの音だけが響く。時折俺がコーヒーを飲む音。これだ。この音空間が、自分はいま作家なのだという気持ちを確かなものにさせてくれる。

 WEB小説家の中にはパソコンじゃなくてスマホで執筆する人も少なくないが、そういう人ならピピピッというフリック音で気分が高揚するのだろうか。昭和や大正の昔であれば、原稿用紙に直接ペンを走らせる音やタバコに火を付ける音が文豪魂を燃え盛らせていたのかもしれない。


「っと、時間か」


 全然キリのいいところまで書けていないが、俺は椅子から立ち上がった。執筆の際は、だいたい三十分おきにストレッチをすることにしている。

 SNSで先輩作家たちをフォローしていると、しょっちゅう流れてくるのが体調に関する話題だ。目が疲れるとか首肩が凝ったとか腰が痛いとか、座りっぱなしの小説家はその手の体調不良に見舞われることが非常に多いとのこと。


 まだ十代の高校生である自分は、そこまで不安になることはない? たぶんそんなことはないはずだ。思えば小学生の頃からあまりスポーツをやってこなかった。体育の授業以外で運動することがろくになくて、これが二十年後三十年後に悪影響があるんじゃないかと、わりと真剣に危機感を抱いている。

 中には積極的にスポーツジムに通っている人もいるくらいだ。お金もかかるだろうしそこまではしなくても、家の周りを毎日ランニングくらいはするべきじゃないか、そんなことを最近考えている。


「んんっ……! よし、ストレッチ終了」


 それからまた集中して執筆して、気がつけば夜七時をとっくに過ぎていた。そろそろ夕食の時間だ。

 キッチンに移動して、冷蔵庫からいつもの食材を取り出す。ブロッコリーをフライパンで蒸している間に、耐熱の器でレンチン卵を作る。次に豆腐と納豆を小鉢に開ける。弁当箱に詰める時は切り分けていたサラダチキンは、そのまま平皿にドンと。


 これが俺の毎晩の夕食。用意にかかるのは数分、そして食べるのも数分だ。


「ごちそうさんっと」


 毎日がこういう食生活だと知ったら両親は呆れるかもしれないが、今の俺にとって時短は何より大事なことだ。第一、栄養はこれでしっかり取れている。高校入学以来、風邪知らずなのはちょっとした自慢だ。

 けれど……ちょっとだけ、寂しさが胸をよぎっている。


 理由はもちろん、真天先輩の料理を味わってしまったから。

 土曜日に作ってもらったチャーハンと中華風スープ。今でもあの味と温かさが思い出されてしまう。何よりも側にいる彼女の笑顔が……。


 食器を洗ったところで、メッセージの着信音が鳴った。

 期待してスマホを取ると、やはり真天先輩だった。


【こんばんは。夕食を食べ終わった頃でしょうか。うちも食べ終わりました】


 写真が添付されている。

 それは、まるでレストランで注文するような豪華な和食だった。炊き込みごはんに、すまし汁に、ごろっとでっかい唐揚げに、野菜たっぷりの煮物に、カツオのお刺身に……。


「う、うおお……」


 思わず間抜けな声が出てしまう。きっと狩谷さんというメイドが作ったのだろう。料理上手と聞いていたが、ここまでとは。

 というか、結構食べる人なんだな。あの魅惑のボディは、どうやら日々の食事が大きな要因のひとつのようで。


【聖川家は毎晩こんな素敵なディナーなんですか?】


 返信すると、すぐに二通目が来る。


【狩谷さんはすごいでしょう? わたしもこれから狩谷さんにたくさん料理を習って、美味しいごはんを唯人くんに食べさせてあげますからね♥】


 また♥マークだ。あまりにもシンプルな……愛情表現。

 俺は熱に浮かされたように寝室に戻り、ベッドに仰向けに倒れ込んだ。


「真天先輩……」


 食事直後のお腹よりも、胸がいっぱいだった。


「好きだ……」


 彼女のほうも、同じ気持ちでいてくれているのだろうか? 待ってくれ、展開が早すぎて心が追いつかない……。

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