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書籍化決定!!したらS級美少女の先輩が通い妻になった  作者: アライコウ
第一部 憧れの先輩が俺の妻になるまで

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3-1 真天先輩とドキドキデート

「……ハンカチよし、ティッシュよし、パスケースよし、財布よし、スマホよし」


 俺はリュックの中身を何度も確認しては、心を落ち着かせていた。

 大丈夫だよな。もう忘れ物はさすがにないよな。


「そうだ、櫛を一応持っていくか」


 洗面所から櫛を持ち出し、ついでにヘアスタイルをもう一度チェック。特にカッコつけてはいないのだが、跳ねていたりしたら様にならない。


 今日はゴールデンウィークの最終日。真天先輩とのデートの約束の日だ。

 この大型連休中、真天先輩に毎日家に来てもらって、甲斐甲斐しくお世話をしてもらっていた。俺が作るよりもずっと彩り豊かで美味しい低糖質高たんぱく質の料理で活力を得て、挽き立ての豆から淹れたコーヒーでリラックスした。おかげで小説の執筆はすこぶる順調だった。


 そんな俺は今日、かつてない難題に直面する。

 人生初めての、女性との本格的なデート。相手は学園一のS級美少女、聖川真天。

 はたして失敗することなく無事に乗り切れるのだろうか? ワクワクよりも心配事のほうが多いというのは情けない限りだが……。


「よし……行こう!」


 両の頬をパンッと叩き、張り切って家を出立した。

 最寄り駅に到着すると、すぐに彼女の姿に気づいた。

 その麗らかな黒髪と凹凸著しいスタイルが、あまりにも目立つ。通りすがる人は男性も女性も視線を投げかけずにいられない。


「あっ、唯人くん!」


 大きく手を振ってくれる真天先輩に駆け寄る。


「すいません、待ちましたか」

「いえ、唯人くんは時間通りですよ。わたしが早く来すぎてしまったみたいです」


 すると真天先輩、クスクスと笑う。


「こういうやり取り、現実に本当にあるんですね。デートで待ち合わせの時の定番じゃないですか」

「あ、ああ……そういえば」


 そこまで意識する余裕はなかったが、昨夜参考に読んだラブコメ小説でも似たようなやり取りがあった。

 ……しかし真天先輩、本当に俺とデートするって気持ちでいるんだ。俺なんかと違って、失敗しないかと恐れていたりはしないのだろうか?


「今日の唯人くん、スタイリッシュなファッションですね!」

「そ、そうですか?」

「今まで制服と、おうち用の服しか見ていませんでしたから」


 青系のストライプのワイシャツに、ぴっちり目のアイボリーのパンツ。手持ちの中で一番まともそうなのを選んだのだが、本当にスタイリッシュかどうかはわからない。


「わたしのは、どうでしょう?」


 今日の真天先輩は黒の半袖ニットに白のロングスカートだ。……やっぱり結構お高いのだろうか? 一瞬、庶民らしいつまらない興味が首をもたげてしまったがすぐに追い出す。


「なんだか……モデルみたいです」

「まあ! それは褒めすぎです」

「本当ですって。スカウトされてもおかしくないですよ」

「そういうのは全然興味ありませんから。本当にスカウトが声をかけてきたら、唯人くんが体を張って守ってくださいね?」


 ……そうだ。真天先輩ほどの人なら、しょっちゅうナンパされてもおかしくない。

 俺はただのデート相手じゃない。ボディガードにならないといけないんだ。彼女を魔の手から守らなければ!


 まずは電車に乗って、数駅離れた繁華街にやってきた。真天先輩が目的の方向を見やる。


「じゃあ……最初に映画館ですよね」

「はい。きっと混んでますよ」


 先日からWEB小説発人気ホラーの映画化作品が公開されている。『東北地方のとある廃村について』というタイトルだ。モキュメンタリーというやつで、最近ホラージャンルでは一大ブームを形成している。

 ホラーは俺にとってまったく範囲外なのだが、時にはそういうものこそ積極的に触れて、何かしら創作に役立てればと考えたのだ。


 映画館に到着し、予約していた二人分のチケットを発券する。全体の真ん中らへんの見やすい席だ。……もちろん真天先輩とは隣同士で。


「真天先輩、ドリンクとかはどうしますか?」

「わたしはドリンクだけでいいです。唯人くんは?」

「ポップコーンセットにします。やっぱ映画館はポップコーンでしょう」


 真天先輩はオレンジジュースを、俺はコーラのポップコーンセットを購入した。

 開始の十分前に上映スタジオに向かい、並んで座る。


「唯人くん、原作小説は読んだことが?」

「いや、実は読んでなくて。評判だけは知ってるって感じで」

「わたしもです。内容は知らないですけどすごい人気ですよね。今のWEB小説のホラーブームは、この一作が作り上げたと言っても過言じゃないみたいな」

「作者にとっては、生涯の代表作だろうな……正直、うらやましいです」

「唯人くんも、そのうち映画化されるような大ヒット作を書けますよ」


 他のお客さんも続々と入ってきた。ざっと見たところ八、九割くらいの席は埋まったみたいだ。やはり人気なんだな。


 やがてスタジオ内が暗くなり、スクリーンが明るくなる。

 他作品の予告映像が流れる中、ほのかに照らされる真天先輩の横顔をチラッと覗く。


 一心に前を見つめる彼女は……とても綺麗だった。

 今まで明るい場所でしか見ていなかったけれど、上映中の映画館という暗いけれど特別な空間で、むしろ真天先輩の美しさは際立つようだった。


 ――いけない。まずは映画に集中しないとな。終わったら感想を言い合うに決まってるんだから。

 俺は内心気合いを入れ直し、まっすぐに前を見据えることにした。

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