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8.「旧友」



昔のことを鮮明に思い出しすぎるくらいには退屈だった。


城島心はじめ悪友たちとの思い出はいいか悪いかは別にして自分の根幹を作り上げたものには間違いなかった。



ただその結果がいまのこれだ。



妹と元秘書の仕送りで、米にマヨネーズと醤油をかけてかき込んで、くだらないテレビを見て寝るだけの生活。


散々国が腐りきっているとか言っても一番腐ってるのは自分だな、なんて考えて嘲笑じみた笑みがこぼれる。



少し前までは自覚はなかったが慢心していたのだろう、やはり党首の自分、政治家の自分、みなに良くも悪くも注目される自分にある種の満足もあったのだ。




自嘲していると、メールが届いた。


前のアドレスにはマスコミからのインタビューの依頼やら知らない人間からの詐欺じみたメール、誹謗中傷の連絡が来まくったために、電話番号もアドレスも携帯電話ごと変えてしまった。




今のアドレスと番号を知っているのは妹の清華、元秘書の勇だけだ。



勇からのメールだった。


清華は家業を継いで、俺の悪いイメージを払拭するために会社の名前も変え、規模も縮小したらしいが細々と続けている。



それを隣で支えてくれているのが勇だった。



父親の秘書だった大槻さんの息子で兄弟のように育てられたことからあんちゃんと慕ってくれて秘書までやってくれたが、もう逆に頭が上がらないのはこちらの方だった。



清華と勇も頻繁に会いたがってはくれるものの、元秘書や、家業を継いだ妹が自分と会っているとなればどんな不利益を被るかわからないと思い、こちらから断っていた。



メールの内容を確認すると、



「シンさんから緊急招集、アサさんと3人で会いたいとのこと、明日の夜23時に迎えの車が来たら降りて欲しいらしい、あんちゃんよろしく」



相変わらず会うと饒舌なのに文面だと要点しか送ってこないなと勇に対して思わず苦笑いが出る。



シンとは2年以上前、「彼」と対峙する理由をシンが持ってきた時以来会っていなかった。



アサ、大野晁に至っては学生時代に彼が転校して以来、連絡をたまにとったりしてはいたものの、すっかり疎遠になってしまっていた。



もしかするとなんだかんだレールの上を走ってきてしまった自分自身に、暴走列車のように感情で生きるアサを対比したくなかったのかもしれない。


まぶしさすら感じさせる少年だった。


シンや俺のように、家柄が良かったり、将来がある程度約束されたようなものはまるでなかったが、俺たちにないものをたくさん持っていた。



俺たちのそれはたまたま偶然親や家系にもたらされたものだが、彼のそれは生来のものに、さらに生きていく過程で育まれたもので、無意識に俺は羨ましくて仕方がなかったのだろう。




正直断ろうと思った。純粋な会いたさよりも今の自分の境遇や、面倒臭さや、なんとなく打ちのめされそうな自分が勝ってしまいそうだったからだ。



悪いが断っておいてくれ。



そう勇にメールを打ち込んで、送信しようとしたが手が止まった。



スキャンダルや利益、嘲りの目的以外で自分に会いたがってくれる人間は身内を除いてあの2人以外今いるだろうか。


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