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閑話 未知なる世界その3

 とある龍が吠える。

 その咆哮はさながら火山の噴火の如し。

 とある龍が佇む。

 その迫力はさながら大地の威容の如し。

 とある龍が語りかけた。

「さあ、我が同志達よ、力を磨き、技を鍛え、その名を大地に轟かせよ。そして我を超えてみよ」

 その龍は求める。圧倒的な他者を寄せ付けない強さを。それこそが彼の存在意義なのだから。



 ◇



 リュウセイはブレスをテスタロッサにぶちまける。

 その蒼炎は前に立ち塞がるありとあらゆる物質を消し去る。

 ドッゴオオオオオン!という音ともに海底は削れ、大量の砂が舞い、ブレスに当たった海水が蒸発し周りの海水がテスタロッサだったものを圧殺せんとする。

 しかしリュウセイは動きを止めない。

 あの程度で死ぬならば我らが臣民達が殺されることなどなかっただろうから。

 例え自分たちとは違い言葉を話せずとも、気の良い奴らだったのだ。

 彼らが殺された怒りを力に変え、かつ冷静に追撃を加える。

 ブレスを吐きながら加速した体を勢いを殺さずに回転させるとその巨体をかなりの速度まで加速させテスタロッサを押し潰す。しかし


「いやー死ぬかと思ったよ。いや一度死んだのかもしれないけど。まあ、死の定義によるよね」


 ボロボロの灰が突如増え始め、人型になったあとテスタロッサになった。

 そのマナは先ほどよりも魔が魔がしいものを孕んでおり、リュウセイは警戒の色を深める。

 それと同時にゼロ達に連絡を取ろうとするも繋がらない。


「な、なぜ?」


「どうして俺が生きてるのかって感じだね。正確には生き返ったって感じだけど。あと、本気出した方がいいぜ?俺があんたより格下だからといって舐めてたらしっぺ返しくらうかもよ?」


 と飄々に返す始末。おそらく先ほど口走っていたアリスという存在が妨害したのだろう。そしてどういう原理かは知らないが何度でも蘇ることができるとするのなら今は圧倒していたとしてもマナがなくなり負けるかもしれない。それにこの男はどうにも危険な予感がする。灰すら残らぬよう消し去ってしまうのが吉だろう。


「ふん、もとよりそのつもりよ!」


 大声で叫び自分の身体を昂らせると同時に周りに危険を知らせる。きっと民達の避難は信頼できる部下達がやってくれることだろう。後顧に憂いはなし。自分の全てをこの男にぶつけるだけだ。


「我が名はリュウセイ!《永遠のリュウセイ・カイザー》なり!」


 そう言うとリュウセイは体を変化させる。その鱗は蒼く、そして燃え上がる炎と尾の大剣は全てを照らすパンドラの灯りとなる。彼こそが永遠なる平和を表す、パンドラ王家筆頭騎士、《永遠のリュウセイ・カイザー》なのだ。

 ガオオオオオオオ!と吠え、安寧を乱さんとする敵を全身全霊で殺しにかかる。


「我こそは騎士!我こそは壁!我は民を守る最初にして最後の壁なのだ!後ろにあるのは王家の、民達の、国の安寧!お前のようなものに踏み躙らせはせぬ!」


 リュウセイは自身の心に秘めた炎が燃え上がると同時にテスタロッサに襲いかかる。

 とてつもない水圧を起こし、それだけでもテスタロッサの体はみるみる削れていくも全くそれを気負わず言い返す。


「ははは、いいんじゃない?」


 さらに上がったボルテージとともにリュウセイから放たれたブレスに対して真正面からテスタロッサは突っ込んだ。



 ◇



 目の前に男達が倒れている。

 ……どうしてこうなったんだっけ。いや、現実逃避してもしょうがない。俺が柄頭でぶん殴ったんだ。

 いや明らかにこの男達が悪そうだけどどうなのか分からないしなんで休暇中にわざわざ問題に手を突っ込んじゃうかなあ!?俺は。

 しょうがないじゃん、危なそうだったんだから。

 うわ、よく見たらこの娘すごいマナ出してるし絶対手を出さない方が良かったじゃん。


「お主、助けてくれたことに礼を言おう。それとそこらにいるやつらから妾達を守る命を与えよう」


 絶対酒屋の集合時間遅れるなぁとか下手したら俺の分も飲まれているかもなぁとかくだらないことを考えていると小さい方の少女が言った。どうやら既に俺は巻き込まれてしまったようだ。

 ははあーとか言ったほうがいいのだろうか。そう考えている間に荒くれ者達がゾロゾロと集まってくる。

 大丈夫だよね、これマフィアの抗争とかに巻き込まれてないよね。状況で言えばスタンピートの時よりは遥かにマシだが相手は人だしできれば殺したくない。

 おっさん達は数にものを言わせて襲いかかってくる。

 結局これが一番厄介なのだ。あまりにも数に差がありすぎるから対処しきれない。


「早く逃げてよ!?」


 なぜか動こうとしない彼女らを守るために一番先頭にいたやつの武器ー棍棒ーを弾き、死なない程度に袈裟斬りにする。

 しかしこいつらは倒れた男を容赦なく踏み台にしてまるで親の仇を討つかのように切り掛かってくる。

 どうしたらここまで必死になれるのだろうか。《龍覇 グレンモルト》を憑依させ対抗するもどうしても一手遅れる。男達の一人が俺の脳天に長槍を叩きつける。そして俺は壁に叩きつけられた。


「ほれほれ、どうした、傲慢よ。例え貴様がそれだけの魂(欲望)を持とうとも覚悟が違うぞ。どうして敵を殺す覚悟もない奴が死に物狂いで襲いかかる敵に勝てようか。本気を出せ」


 少し興醒めしてような声が後ろから聞こえる。だが本気を出せって………今でも十分本気だ。一体どうしろというのだ。

 なんとか押し留めている俺に対して少女からまた声が聞こえた。


「お主は何をもって生きる?何を望む?言ってみろ、お主が心の底から望むものはなんじゃ?」


 俺は、故郷を滅ぼした奴らを殺したい。例え敵が自分たちより圧倒的に強くとも、どこにいるかも分からなくとも。

 甘い考えは捨てろ、俺。殺せ、敵を。迷うな、奴らは俺の敵だ。



 ◇



 一方ゼロとガモスは焦っていた。気が狂ったのかプリンとシャーロックが明らかに怪しい路地裏に入って行ったかと思った矢先にアウトレイジの連中に絡み、そしてガモスの監視対象がそこに乱入し、よく分からないことになったのだ。プリンにバカンス中は最低限しか干渉しないでくれと言われていたので2人に責任はない。

 ただそれでもプリンを護衛することが彼女らの最優先任務でありそれの失敗はメンツを潰すことになる。

 すると辺りに爆発音が響いた。その方向を見ると大きい建物が今にも崩壊しそうになっている。


「ガモス、ここは任せた」


 ゼロはものすごい勢いで駆け出し、あっという間に見えなくなった。


「あいつ………逃げやがった!バレでもしたら危ないのに!ふざけやがってあのバ」


 そこまで言った時背中から悪寒を感じたガモスは言うのをやめるのだった。




 屋敷がものすごい音を立てて崩れる。中にいた領主の娘とその召使い達は死を悟るもその予感は正しくはなかった。

 閃光が走り、その光は彼らを全員救い出したのだ。彼らは自分達を救い出したのだ存在が少女であることに驚くと同時に、その名を尋ねる。


「名乗るほどのものでもない。崩れ落ちかけていた目の前の命を拾い上げただけだ」


 そう言うと外にいた逃げ去ろうとしている。一人のスーツ姿の男に殴りかかった。


「ッ!じゅも」


 迎え討とうとしたその男はゼロの拳を腹部で受け止め、爆散した。

 しかし恐るべき再生力で立ち上がるも上段蹴りにより粉々になってしまった。



 ◇



 なんだこれはマナが俺の体から溢れている?いや、違う。巡っているんだ、俺の体を。これがマナか。


「惚けてんじゃねええ!」


 男が俺に殴りかかるもそれを受け流すと試しに腕に全てのマナを流し殺戮の意思を込めて叩っ斬る。男は真っ二つに割れ絶命する。なるほど、とてもいい。俺はまた一つ強くなった。


「コイツ!さっきとはまるで別人だ!殺意が違う!」


 さあ、来いよ。お前達は俺の糧となれ。

 男どもが俺に怯え始めた時かなりの、それも嫌なマナを纏った男が現れる。


「ほう、おいおい面白そうなやつがいるじゃねえか!俺と殺し合えや!来い!《武闘将軍 カツキング》!」


 そいつは異形の姿になるとその巨大な拳を振り下ろしてくる。厄介な、師匠ほどとは行かずとも俺以上にクリーチャーを憑依させている。だが俺は負けられない、立ちはだかるやつは全員撃ち倒す!

 敵に俺は斬りかかるも敵は体を恐るべきスピードで再生させながら襲いかかる。俺はだんだん押されてしまう。


「はは、ありがとよ。俺はお前の礎となれや!」


 その拳が俺を捉えるも


「まだじゃ!そこな男よ、起(・)き(・)上(・)が(・)れ(・)!」


 その声とともに動き出した俺の体はカツキングを跳ね飛ばした。



 ◇



「グフッ小賢しいわ!《俺の勝利だオフコース!》!」


 リュウセイの放った呪文がテスタロッサを跳ね飛ばすもテスタロッサはすぐに復活してしまう。


「どうする?どんどん効かなくなっちゃうよ?《炎乱と水幻の裁》」

「五月蝿い!《不敗のダイハード・リュウセイ》」


 リュウセイは《不敗のダイハード・リュウセイ》に変化するももはやそれは時間稼ぎにしかならなかった。

 どういうわけか目の前にいる男は何度爆殺しても消し飛ばしても切り刻んでも死に絶えないどころかみるみる力が増していっているのだ。


「うんうん、いいね。君との戦いは長引くけど楽しいよ。僕がちょうど倒せるレベルってところがいいんだろうね。君はとてもいいレベルアップ要員だったよ。じゃあ、バイバイ」


 嘲笑うようにリュウセイにそう答えるとリュウセイの首を切り落とそうとする。しかしリュウセイもただ無策に時間を稼いでいたわけではないのだ。


「『退け痴れ者が』」


 強い念話がテスタロッサに届くと同時に《魅惑のロイヤル・エイリアン》が参戦する。それは他者を圧倒するまさに王に相応しい覇気を放っていた。

 しかしテスタロッサはワクワクしたように答える。


「ここのボスの登場か!いいね、テンション上がってきた!」


 テスタロッサはリュウセイと戦っていた時を上回る速度で《魅惑のロイヤル・エイリアン》に殴りかかるも


「不敬な、余をなんと心得る。我こそがパンドラスペースの王であるぞ」


 《魅惑のロイヤル・エイリアン》から放たれた威圧はテスタロッサさえも動くを止めてしまう。


「王とは何か知らないようだな。歯向かうものを悉く蹂躙するものこそが王である」


 《魅惑のロイヤル・エイリアン》が徐に動き出したかと思ったその時いつの間にかテスタロッサは吹き飛んでいた。



 ◇



 それからなんだかんだで王城にこっそり帰ってきたプリン達は《魅惑のロイヤル・エイリアン》にお小言を言われながらも無事にバカンスを終了させた。


「楽しかったですか?姫様?」


 シャーロックが尋ねるとプリンは楽しそうに言った。


「うむ、特に興味を引いたのはあの男の闘いじゃな、やはり人間は素晴らしい、あれほど面白い生き物はいないぞ。だからこそあやつらのいう通りちゃんと保護してやらなくてはな」


 彼女らはあくる日も策略に耽る………

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