20話 Dランク昇格RTA
結果から言うと。
ロザリアのDランク昇格は、秒で成し遂げられた。
「なんと言えばいいのかしら…。ちょっと拍子抜けですわねぇ…?」
確かに、ロザリアはDランク昇格を目指して努力をしてきた。
とは言っても、せいぜいギルドの書庫で周囲の地形や生息する魔物に関する知識を蓄えただけ。実戦の経験だって、以前トリスタンのサポートとして魔物を狩ったのが最後。
だというのに、こうもアッサリと昇格条件を満たせるほどの魔物を倒してしまったロザリアは困惑していたが、己の出自を考えればこの程度は当然と言えることを彼女は知らない。
ロザリアは公爵家の令嬢だった。つまり、貴族の中の貴族。
より美しい者、より強い者、より賢い者を選んで交配染みた婚姻を長きに亘って繰り返してきた貴族の中で最も高貴な生まれの娘なのだ。
それはもはや、平民とは一線を隔す別種の生き物と呼んでも過言ではない。
当たり前だ。極端な話。優秀な遺伝子を選別して交配したら優秀な子が生まれるんだから。
しかも、生まれた優秀な子達は厳しい貴族社会で淘汰され、より優秀な子だけが生き残る。
生き残った優秀な子が、また優秀な者を選び優秀な子を成し──。
その果てに生まれたロザリアが、あらゆる面で優秀でないワケがない。
美貌も頭脳も、そして今まで発揮していなかった身体能力さえ、平民を圧倒的に凌駕しているという事実を、ロザリアだけが自覚していなかった。
…まぁ、それも仕方ないことではあるけど。
なにせ彼女は、最も高貴な家で深窓の姫君として育てられた御令嬢なのだから。
頭脳労働など殿方の仕事だし、ダンス以外で身体を動かすなどはしたないこと。
生まれ持った美貌を磨き、高貴な生まれに相応しい礼儀作法を身につけ、未来の夫をそっと支える程度の技能を備えれば十分。己の力を発揮して出しゃばるなんてもっての外。
そんな教育を施されてきたロザリアなので、まさか自分が並みの冒険者よりも優れているなんて露ほども考えてもおらず、それゆえの驚きだった。
「昇格について色々と書かれておりましたけど、そう難しいことではなかったのですわね」
んなワケない。
確かにDランクは、それなりに長く冒険者を続けていればいずれ到達できるランクではあるが、それだってある程度の年月を掛けて様々な経験を積み、少しずつ知識や技術を蓄え、そのうえで使い物になるか否かをギルドで判断され、やっと手にすることが出来る地位なのだ。
ロザリアのように、こんなにもアッサリと得られるもんじゃない! と、冒険者の仲間でもいたら教えてくれただろうけど、ロザリアはソロキャンパー。
誰もいないので教えてもらえない。ぴえん。
EランクからDランクへの爆速昇格ランタイムアタッカーとして、トリン村の冒険者ギルドをざわつかせていることを知らぬはロザリアばかりなり。
こういう異世界系の王侯貴族って絶対、明らかに平民と違う身体スペックだよね~って話。
優秀×優秀で交配なんてサラブレッドの作り方だもん。




