21話 ロザリアの夜と冒険者達の夜
「うぅ~~~んっ! やっぱり塩焼きは最高ですわ!」
今日も今日とてロザリアは魚の塩焼きを食す。
晴れてDランクへ昇格できた彼女は、さっさと父の影響下から逃げるべく国境を目指していたが、そろそろ夕暮れかというときに丁度いい川原を見つけたため、そこで野営することにしたのだ。
川原で野営。ならば今晩のディナーは決まったも同然。
釣った魚から内臓を取り除き、枝で作った串に差して火で炙る手つきも慣れたもの。塩の塩梅や焼き加減の調整だってお手の物だ。
「はぁあ…美味しい…。ソロキャンでなければ、こうはいきませんわ」
トリスタンのときみたいに、誰かと旅をするのもそれはそれで楽しいが、それでは遠慮なく塩焼きにかぶりつくことができない。
ノー塩焼きノーライフな彼女にとって、それは考えるだけでストレスが溜まる。
ゆえにソロキャンこそ至高である、と言って憚らないロザリアであった。
小さな口を精一杯大きく開けて塩焼きに齧り付きながら、満点の星空を見上げる。焚き火の煙が立ち昇ってはきらめく星達の合間に溶けていくのを、ロザリアはのんびりと眺めた。
「神様、オオツカ様、感謝いたします…」
だって、今まですべてが順調なのだ。
そりゃあ途中で思いがけない二人旅をしたり、兄に見つかったり父の影にビビったり、それなりに色々とあったけど、結局は何事もなく乗り切ることができた。
普通の令嬢ならば、家を勘当されてしまえば身の破滅が待っているばかりだというのに。
もう身分は失ってしまったけど、その代わり手に入れた「自由」は何にも替え難いものだし、おかげで貴族社会には存在しない「開放感」を思う存分味わえる。
それもこれも全部、途方に暮れたあの日に出会ったヨシノリ・オオツカという男の一生と、なぜかロザリアのもとに現れてくれたキャンピングカー、この2つと巡りあわせてくれたであろう神のおかげだ。
ロザリアはそう信じているし、だからこそいつも感謝を忘れない。
朝起きたとき、夜寝る前、美味しいものを食べたとき。
ことあるごとに彼女は祈るのだ。
◆◇◆◇◆◇
「おい、聞いたかよ」
「ああ…信じらんねェよな」
最近話題の可愛いあの子が、超短期間でDランク昇格だなんて!!
「どぉー見てもどっかのお姫様だったじゃねぇか!!」
「真っ白い肌! ほっっっそい手足!」
「でっかいおっぱい!! 折れそうな腰!!」
「「「あんな子が、たった3日で魔物20匹討伐だなんてッ!!!」」」
その事実を信じられない野郎共がギルドの受け付けカウンターに押し寄せて、さらに倉庫で討伐証明部位がミッチミチに詰め込まれた麻袋まで見せてもらったのだ。
そもそも、この話を持ち込んだのは他でもない、受け付けカウンターから離れた彼女をストーキングしていた冒険者パーティなのだ。
爆走するキャンピングカーという名のゴーレムを必死になって追いかけ、辿り着いた森の中で高火力な魔法を放ち大暴れする彼女の姿を目の当たりにし、討伐部位を袋へ詰め込むまでの一部始終を目撃した彼らが意気消沈してギルドへ戻り、酒を飲んだくれ、呂律の回らない口で彼女の偉業を語り、冒険者として自信をなくしてしまったと泣き喚いたのだ。
信じがたいけど、信じる他ない。
「あのお嬢ちゃん何者だ?」
「オレぁ、あの子が戦女神だって言われても納得できるぜ」
「あんな美人なのに、とんでもなく強いなんて最高じゃねぇか」
本当は、どいつもコイツも彼女を自分のパーティーに…むふふ…、なんて考えていたのだ。
あの日、ギルドの受け付けでDランク昇格のため魔物を狩りたいと口にしていたのをその場で聞いていた全員が、きっと自分達の中の誰かを頼って声を掛けてくるに違いないと期待していたのだが、見事にアテが外れてしまったという苦い記憶を持っている。
「でもまぁ、そんだけ強けりゃ俺らなんてお呼びじゃねぇわな」
「違いねぇ。ガッハッハ!!」
誰からともなく、戦女神に乾杯だと声高に叫んでは酒を飲み干し、他の野郎共が我も我もと続き、大盛り上がりのままギルドの酒場の夜が更けていった──。
初投稿から早いことで3週間ですが、ついにブックマーク50人突破しました!
やったあああああ嬉しい! 今日はお寿司買っちゃおうかな!
これもご愛読してくださる皆さんのおかげです(*^∀^*)
これからもよろしくお願いします!




