仲間
「中々敵が来ませんね」
「味方の伝令もな……ゴルン殿がもう少し情報を教えてくれれば……」
「……ふん……」
港町の防衛から数日。
そろそろ一週間が経過するころ、未だに何の連絡もなく、動けずにいた。
そして相変わらずゴルン殿は協力する姿勢を見せてくれない。
執務室で頭を抱える。
「新たに行動を起こすとしても、こちらの動ける戦力は二千程。まだ負傷兵も多いし、ここに置いて動くことは出来ない……今は防衛に徹するしかないな」
「佐切殿の言うとおりだな。しかし、敵が攻めてこないのも、先の策のおかげだろう。ザルノール側の人間からすれば困ったものだがな」
天下三分の計、その第一歩が成功したことは確認済みである。
敵の内に疑心暗鬼を生じさせたことで、敵は動きを取りにくくなっている。
しかしこのままここで足止めを食らい続ければ天下三分の計を進めることもできない。
とはいえ、俺が抜けるとこの街の防衛が難しい可能性がある。
前回のような奇襲も何回も成功するとは思えない。
次は真っ当な策で防衛するしかない。
やはりこの街から離れることはできないな。
すると、ゴルン殿が口を開く。
「……まぁ、おそらくだがそろそろ伝令は来ると思うぞ。毎回、これくらいの間は空いていた」
「フィアナなら、この前の戦闘で俺だと気づいてくれると思うが……いや、期待し過ぎか?」
すると、鐘が鳴る。
街にある見張り台の警鐘だ。
敵の接近を知らせる鐘である。
「敵襲!? 斥候は何していた!? やられたか!?」
街の警鐘を鳴らせば敵にも気付かれる。
その為、見張り台の視界の外側に斥候を何人も配置し、警戒態勢をとらせていた。
その斥候からの報告がなく、警鐘が鳴ったと言うことは斥候がやられたと考えるべきだ。
そうなっても良いように複数配置していたのだが、今回の敵は用意周到なようだ。
「戦闘配置! すぐに……」
「その必要はないわ!」
すると、勢いよく扉が開かれ、そこから聞き慣れた声が聞こえてくる。
かつて共に戦った、多くを背負う同じくらいの歳の女性の声だ。
「やっぱりフィアナの推測は正しかったみたいね」
「まぁ、斥候の数から薄々わかってはいましたがね。スキルに頼らず、ここまで用意周到なのは彼くらいでしょう」
「私の『神速』が無ければ突破出来なかったけどね」
さらに聞こえてくる声に、全てを察する。
「……成る程……斥候が仕事をしないわけだ。味方なら通すからな」
とはいえ、報告はして欲しい所だが……。
いや、恐らく彼女が止めたのだろう。
カレン・ノージリアが。
「まず、久しぶりね。佐切勘助。そしてお帰りなさい。更には港の占領もお疲れ様。諸王国連合軍の事実的な盟主として礼を申し上げるわ。全く……行方不明だったというのにやる事は規格外ね」
そして、見覚えのある懐かしい顔はもう二人。
やはりこの二人はペアのようだ。
この二人が来てくれるのは本当に頼もしい。
「報告で聞いた戦果から私も推測したが、やはりか。久しぶりだな。無事で何よりだ」
「まぁ、流石と言うしかないわね」
「ジョバンニさん。ロームさんもお久しぶりです! 無事で良かった……」
仲間にやっと会えた。
彼等ならば無事だろうと思ってはいたが、やはり嬉しいものは嬉しい。
本当ならばこれまで何があったのかを聞き出したい所だが……。
その喜びを上回る衝撃が待っていた。
「ほう……元第六騎士団長と元近衛騎士団長か。どちらもあのドルーガ殿の弟子という……この援軍は嬉しいな」
エルロン殿は二人を見てそう言う。
そして、逆にエルロン殿を見た二人は驚く。
「な……何故エルロン殿が!?」
「いやいや大物過ぎるでしょ! 一体どうやって……」
「……二人とも、知ってるんですか?」
確かに名のしれた貴族らしいという認識はあったが一体どこまでの地位の人物なのかは全く知らない。
「知ってるも何も……このお方はな……」
ジョバンニさんはエルロン殿の顔を伺いながら言う。
「初代国王陛下の弟君の家系の直系にあたるお方だ! 貴族の中でも最高位のお方だぞ!」
「……は?」
エルロン殿は珍しく自慢げな顔をしている。
恐らく、このカミングアウトに期待していたのであろう。
しかしそのカミングアウトは、強烈なカミングアウトであった。
「改めて、エルロン・ドルグフォレストだ。よろしく頼む」
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