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天下三分の計

「敵が引いたようです」

「そうか。それで、例のは? あったか?」

「はい。確かにありました」

「よし……うまく行ったようだな」


 港町に戻り今後の策を練っていると、アザミから斥候の情報がもたらされ、策が成功したことを理解する。

 例の、とはゴブリンの死骸である。


「ゴブリンの死骸があったと言うことは敵は仲違いしたということだ。この事実はザルノールと魔王軍の両方の本国にもすぐに知れ渡る。これは国際問題になるぞ」

「魔王はどういう判断をするでしょうか……」


 魔王か……。

 サティスが俺を信用せず、キサラの言葉を信用して俺を殺すように命じたとは思えない……。

 キサラの独断と捉えるべきかどうか……。

 しかし、それは自惚れか……。

 俺自身、サティスの事は嫌いではなかった。

 寧ろ、劣勢の魔王軍をここまで引っ張ってきていた事に尊敬すら感じていた。

 とにかく、現状は敵同士だ。

 ゴブリン軍も元は仲間だが、情けは無用、だな。


「どうかされました?」

「いや、魔王のサティスとはしばらく会ってないが、別に仲が悪い訳ではなかった。それに魔王軍の一員としてやってきた俺からすれば少し複雑だな、とな」

「そういうことでしたか……」

「あのゴブリンも、元は仲間だ。ザルノールと戦うために俺の指揮下だった奴もいるかもしれないしな。少し心が痛いな」


 魔王の……彼女の境遇も知っている。

 本音を言えば助けになりたいが……キサラの言葉を信じるのなら、サティスも敵になる。

 しかし、キサラは独断で行動を起こす節がある。

 魔王軍の四天王、その最後の一人として責任を強く感じているからこその行動だろう。

 様々な可能性が捨てきれない以上、後戻りが出来なくなるような軽率な行動は出来ない。

 だから、直接魔王軍に対して手を下してはいない。


「因みにですが、天下三分の計がなったあと、どうするつもりですか?」

「そうだな……策がなったら戦力は拮抗する、と言いたいが魔王軍とザルノールでは魔王軍が圧倒的に劣る。それに諸王国連合軍の軸とも言えるノージリアの首都を占領していることから魔王軍はどちらの陣営とも手を取り合えない。そこにつけ込む」

「一体どうやって……」

「魔王軍幹部、キサラの身柄の引き渡し、魔王派の無実の証明、ノージリア本国の返還を条件に魔王軍と同盟を結ぶ。戦局を前の状態に戻してザルノールを叩く。そうすれば魔王軍が主導する反スキル至上主義の世界が出来上がる筈だ」


 こうすれば魔王派は魔王軍の元へ戻れる。

 しかし、戦が終わってもスキル至上主義の世界に染まりきった諸王国連合軍との軋轢は生じる。

 もし仮に諸王国連合軍と戦になろうとも、俺達は魔王軍としてサティスに力を貸せる。

 無論、サティスがこちらに協力する姿勢を見せれば、だが。


「さて……魔王派の方針も改めて決めなくちゃいけないし、どちらにせよみんな合流する必要があるな」

「私も皆さんと会ってみたいです。でも、今は……」

「そうだな……今はこの戦に勝つことを考えなくては。本音を言えばフィアナの下へ行ってみんなの行方を探りたいが、この状況では前線を離れるわけにもいかない。俺達が魔王派と再会する、そのためにも力を貸してくれるか?」

「はい! 勿論です!」


 この戦、勝ちの目はある。

 俺の弟子とも言えるフィアナが全体の指揮を執っているのなら、スキルの質で劣ろうとも、兵の数で劣っていたとしても、相手があのドルーガだっとしても……圧倒的な敗北を喫することにはならないだろう。

 俺が前線で敵の目を引きつけ、フィアナが動きやすくする。

 後は、軍師であるフィアナが臨機応変に対応してくれることを願うとしよう。

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