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通例vs例外

一蘭は皇居の中でもトップシークレット、天皇が普段祷を捧げている場所、人はまず入ることのできない絶対不可侵とされている場所にきていた


(人払いは完璧か)


案内してくれていた侍女は途中で外れてしまった。そしてそこからは人間だけでなく生物の気配を1つも感じられなかった。一蘭はそんな異様な雰囲気をのなか奥に進んで行った


(卑弥呼がいそうなところやな)


しばらく進むと祭壇が見えてきた


現代文明を全く感じさせないその場はどれを取っても歴史的価値がありそうだ


(なんて声をかければいいんだ? 膝つけた方がいい? 侍女さんとかに聞いとけばよかった。伊吹姫は・・・・・・ちょっと役に立たなかったなぁ。で、でも人には向き不向きがあるから)


『私は呼ばれた時はいつも隅っこに座ってる。適当に頷いていたら終わる』


(あの人23か24歳だろ? 見た目が童顔だから忘れそうになるけど)


「? ああ来てたんだね」


一蘭は簾の向こう側から急に声をかけられた


「初めまして一蘭と申します」


「うん。まあ年も近いしタメ口でいいよ」


(なんかフランクだなぁ)


「そう言われても困るだろうけど本当にタメ口でいいんだよ」


(すごいタメ口を押してくる)


「わかりました。僕はいつも丁寧語なのでこれが普通の口調です。これでいいですか?」


「うんうん。でもこの事は外には内緒ね?」


真っ暗な中に灯火が簾の手前側に2つ中に2つある。そんな中でも一蘭は相手の表情を読みとることができた


(なぜか友達認定されてる気がする)


子供が秘密を共有し合うようにイタズラな笑みを浮かべているのが分かった


「早速呼んだ理由なんだけど、実はあんまりないんだよね」


「えぇ」


一蘭は理由がないと言われて急に疲れがきた。ずっと感じていた緊張は無駄となった


(結局周りが正しかったな)


けやきやかくらは兎も角、ちとせや柳からも礼儀は要らないとの意見に一蘭は否定的だった。しかし結果は彼女達の言う通りになってしまった。一方の皇室側も失礼がなければ上々というくらいで多少の損害は覚悟していた。過去の中本家の行為と俗世の男の子が我儘な態度を取ることが普通であるからだ。しかし実際の一蘭は自分達の子供のお手本にしたいほど教養深く所作が綺麗だったので一蘭を見た人達は大層驚いた


「うんうん。元皇族の中本家相手ならば少し会うくらい力技で通らないかなあと思ってね」


(国の象徴はこれでいいんか?)


「でも本当になにもなかったわけではないよ? 一蘭くん」


!?


一蘭は正座の状態から即座に臨戦体制を取った


(殺意はない? じゃあなんだ?)


一蘭はその中でフル回転で頭を働かせていた。戦闘において思考を放棄するのはあまり得策ではない。一蘭の様な理詰めで行動するタイプは特に考えを巡らす必要がある


(ジジイの殺気でさえここまで絶望的な存在を認識したことがない。向こうにいる存在そのものが危険だと脳が判断して実態を認識しない)


実態を掴めないものをいくら考えて答えは出てこない。結論を出すにはあまりにもヒントが少なすぎた


そして


「君はどこから来たの?」


!?


一蘭はそこで2つの事に驚愕した

一つ目は自分が転生していること、少なくとも特殊な事情をもっていることがバレていること

そして二つ目は言葉と一緒に放たれたそのオーラ


柳や一蘭が持つ独特なオーラはこの世の理を外れた規格外の特異的なものである

一方、目の前の存在から発せられるオーラはこの世の理を凝縮したかのようなもの、言葉で表現するのならば正当の権化。柳や一蘭とは真逆の性質を持っていた


天皇から先に発たれたオーラに一蘭のオーラがぶつかる。と、その瞬間あり得ない事が起きた





その場の音がまるで時が止まったかの様に一切しなくなった


(ノイキャンか)


この事象を一蘭はいつも通り頭の中で計算して一つの結論を出した


<アクティブ・ノイズキャンセル>

音は目に見えない空気を振動させる波(音波)となって周囲に広がる。音を消すためにはいくつか方法があるが、なにもそれよりも大きな音を出して聞こえなくするのではなく、+と−を合わせれば0になるように、消したい音の波と真逆の形(逆位相)の波を発生させ、互いを打ち消す


これがイヤホンなどに使われているアクティブ・ノイズキャンセリングの仕組みだ

この場合一蘭と全く逆のオーラが重なり合って±0となりこの場は”無”が支配する結果となっていた


「ふぅ・・・・・・想定はしていたけど君の力は凄いね。僕からしたら死が目の前にある気持ちだったよ」


この状況で先に”気”を解いたのは天皇の方だ


「いや僕も同じ気持ちでしたけど・・・・・・」


「あはははは、いや本当に君は気がついてないかもだけど直視すると幻術にかかりそうなくらい綺麗でなおかつ恐怖を感じる赤い目がこっちを見てきてさ。僕が気絶してたら君は牢屋に入っていたかも知らないね」


(眼か、こと先生も同じように言ってたけど師匠に聞くのすっかり忘れてたな)


この言葉で一蘭が抱いた感想がこれである。自分が捕まる事など絶対にないという自信から天皇の後半の言葉に危機感が持てなかったのもある


「その僕の眼はどういった感じでした? 同じ事を知り合いからも言われて、自覚がないので詳しく知りたいんですよね」


一蘭はこの際に天皇に直接自分の眼について質問してみた。


しかし、


「うんうんいいよ。でもその前に僕の質問に答えてよね」


「あ」


「まあでもさっきので答えは大体分かったけどね。一応答え合わせはしときたいよね」


「どこまで推論を持っていってるかはわからないんですが、まず僕がこの世界のイレギュラーであることはほぼ間違い無いです。仮説も立てて一応の計算式も解きました。次に僕はこの世界に転生してきたという事です」


「ほへー、思ってた以上に話がぶっ飛んでた」


「・・・・・・あの失礼ですが、そんな言葉どこから覚えて来ているんですか?」


「確かに皇居は閉鎖的だけど日本で出版された全ての本が入ってくるからね。皇居の中の数少ない現代娯楽かな。僕は昼間は祈祷か外交で読む時間なんて全くないんだけどね、妃とにゃんにゃんするときによく俗世の流行りとか聞く」


(にゃんにゃん言うなし)


天皇のくだけた物言いに対して一蘭は純粋な疑問を投げかけた。その疑問の返答が想像の斜め上をいっていたので一蘭はリアクションに困ってしまった


「あ! そうだ妃といえば伊吹姫さんとは・・・・・・おっと話が逸れるところだった。じゃあ一蘭君は別世界からきたってこと?」


「そうですね」


「へぇ! もしよければその世界について話聞かせてくれる?」


「その前に1つだけ質問していいですか?」


「うん、いいよ。やっぱり眼のことが先に気になる?」


「いや眼のことは後ででもいいです」


「じゃあ分かった”何で自分の存在がバレたか?”でしょ?」


「はい」


一蘭は不思議で仕方がなかった。一蘭の情報が外に出ることはほぼない。そして皇居には外からの情報が最低限した入ってこない、さらに先ほどの言葉から天皇が娯楽を楽しむ時間などない。この条件でピンポイントに一蘭のことを知るなどあり得ない確率だ


「これだけ祈りを捧げているとね、この世の真理に近づけるもんだよ。っていったら納得する?」


「納得はできます。僕自身も一般常識とはかけ離れてますし」


「よかった。あと君と同じ様な例が過去にあって今は柳景辰って名乗っているそうだよ」


(ジジイやんけ)


一蘭はその話題に反応しなかった。伊吹姫の時もそうだったが、この皇室は娯楽に飢えている。下手に柳に師事していると言ってはそれについても根掘り葉掘り聞かれるだろうと一蘭は判断した


「柳景辰さんの事は文献にも載っていたし、僕も把握していたんだけどある日突然君の存在が現れたらしくてね。これは僕のお父さんから聞いたんだ。本当は自分で確かめたかったらしいから残念だっただろうね。まさか転生なんて言葉を現実で聞けるなんてね・・・・・・ぷふふふふ」


(天皇の崩御をここまで面白がれるのはこの方くらいだろうな)


一蘭は目の前の楽しそうな笑顔に少し引いた


「じゃあこれでこっちの話は終わりだね。次は一蘭君の話を聞きたいな」


「分かりました。では現代の方から遡って説明しようと思うんですがそれでいいですか?」


一蘭は日本史を現代の方から遡って勉強した。前世の経験をふまえてそっちの方が効率的だと分かっていたからだ。更にアクティブラーニングとして人に説明するつもりで暗記を楽しんでいるので、日本史の一連の流れを話すのは得意である


「僕の記憶で一番新しいのは2023年なんですけど・・・・・・」


こうして一蘭による前世の日本の話が始まった



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