性意識
そんな小さな攻防が続いたあと、柳が戻ってきて今日のこれからについて話し合った
・2人はそれぞれ仕事と学校に行くこと
・一蘭は塾は欠席して、1日ここで預かってもらうこと
が決まったが当然二つ目で一悶着があった
一蘭は、この事故は自分の不注意が招いたことで柳に非はないこと、この道場に通うことが楽しいことを2人に説明した。けやきは『一蘭がやりたいなら』と、親として、また大人としての対応をした。一方で中本家のお姫様はそうはいかない。『柳の事は信頼できない』と敵意剥き出しで反対した。再び彼女が柳に襲い掛かり長い時間が掛かるかと思われたがしかし、これはすぐに撤回されることとなる。かくらにとって、最も恐ろしいことが起きたからである。かくらが柳に噛みついて反対した時、彼女は確かに見てしまった・・・・・・一蘭の目の遥か奥に、ほんの少し、一瞬だけ、面倒だと思っている色があったことを。一蘭は人間とは言えないが、それでも人間と同じ感情を持つ。いくら彼が大人びていても、達観的でも、負の感情が全くないわけではない。彼女がそれを見たのは本当に間が悪かった。ほんの少し、一瞬であったため本人すらその感情に気づいていない。しかしいつも一蘭の事を見ているけやき、かくらにはそれが分かってしまった・・・・・・それを見た瞬間、かくらは全身から血の気が引いた。隣で見ていたけやきでさえ手先が震え始めた。その次に彼女が行ったことは絶対の服従。自分が一蘭の決定に逆らうことはないと、ありとあらゆる言葉を使って自分の思いを伝えていた
『ごれがらはいい子にじまず! お兄様には絶対に逆らいません゛! だから、見捨でないでくだざいぃぃぃ』
一蘭はかくらが急に謝り始めて困惑したが、『怒ってないよ、道場の事を許してくれてありがとう』と頭を撫でて宥めた
その後、けやきとかくらは荷物をまとめて道場の門まできた
そこでかくらはあることを思い出した
「そういえば、お兄様。私にはお兄様に言うことを聞いてもらえる権利がありましたよね?」
「ん? ああ、そうだね。 1日にたくさんの出来事が起きたからすっかり忘れていたよ、ごめんね」
「いえ、構いません。でも、日付は変わりましたが約束は守ってくれますよね?」
「いいよ」
「やった! では、キスして下さい!」
「なっ! このメスガキ!」
一蘭とかくらの会話をずっと聞いていたけやきが、鬼の様な形相となって急に叫んだ。今までもこの様な光景は何度もあったが、今回はその内容が大きく変わった
”メスガキ”
実の娘に使うとは到底思えない言葉である。この変化は、間違いなく一蘭が倒れたことに原因がある
今回の件で、彼女達の中での一蘭という存在の大きさに気づいた。そこで彼女達は一蘭は何があっても手放してはいけないと今まで以上に意識し始めた。そして、他の誰にも触れさせずに独占したい。例え争う相手が肉親になろうとも・・・・・・
また、異性への意識が変わったのは彼女達だけではない
「かくら、髪をあげて首を出して?」
「え? あ、はいどうぞお兄様」
これが自分のお願いと関係あるのだろうか?かくらは不思議に思いながら一蘭の言う通りに首を出した
「「えっ!?」」
一蘭はそんな彼女を抱きしめて、出された首横にキスをした
かくらは己の性知識を超えた行動に頭がパンクした。けやきもまた、所詮は子供のお遊びだと思っていたため、一蘭の方から抱きしめ、首元を選んだ事を脳が受け入れずに固まってしまった
かくらの首元へ口付けをしている彼の姿は美しく、妖艶であった




