01.村娘ハーレム
――ぱちり、と暖炉の薪が爆ぜた。
広い寝室は、冬の夜とは思えないほど暖かかった。
獣脂ランプの柔らかな灯りが、寝台の上に寄り添う女たちの影を、壁いっぱいに揺らしている。薪の煙と、甘い香油の匂い。くすくすと交わされる内緒話と、楽しげな笑い声。
村の女たちが十人近く、ひとつの寝台の上で、一人の青年を囲んでいた。
「ミナト様」
青年――ミナトの胸に頬を寄せて、その名を呼んだのは、村長の娘サリヤだった。
肩口で切りそろえた艶やかな栗色の髪。透き通るような白い肌は、暖炉の熱のせいか、それとも別の理由か、首筋までほんのりと桜色に染まっている。
一年前に出会った頃はほっそりと華奢だったサリヤは、ミナトの子を産んでから、見違えるほど女らしい柔らかさを帯びていた。それでいて、ひまわりのような笑顔だけは、少しも変わらない。
「今夜こそ……二人目の赤ちゃん、サリヤにくださいね?」
「ああ。リオに、弟か妹を作ってやらないとな」
リオ――初夏にサリヤが産んだ、ミナトにとって初めての我が子だ。
すくすくと育った元気な男の子で、近頃は麦粥などの離乳食も口にするようになった。サリヤの身体も、すっかり元に戻っている。
だからこそ今夜のサリヤは、いつにも増して一生懸命だった。
「……すき、です。ミナト様。だいすき」
囁きとともに、唇が重なる。
ミナトはサリヤの細い肩を抱き寄せ、その温もりを、まるごと腕の中に閉じ込めた。
「ふふ、勇者様……サリヤちゃんばっかり、ずるいですよ?」
「そうですよ! 私だって、ミナト様に口づけしたいのに……っ!」
隣から、波打つ金髪の娘が拗ねたように身を乗り出してくる。
背中には、豊満な若妻が甘えるようにもたれかかり、耳元でくすりと笑った。足元では、肩掛けを脱いだ娘たちが、頬を染めて互いにつつき合いながら、自分の番を今か今かと待っている。
――ランプの炎が、ふっと揺れた。
その先のことは、揺らめく灯りと、軋む寝台だけが知っている。
***
「はぁ……ミナト様……」
どれほど時が経っただろうか。
汗に濡れた額をミナトの肩に預けたまま、サリヤが幸せそうに目を細めた。その両手は、愛おしむように、自分の下腹にそっと重ねられている。
「なんだか……お腹のなか、ぽかぽかします。これなら、きっと……」
「ふふっ……お疲れ様、サリヤちゃん。さて――次は私の番ですよね、勇者様?」
「その次は私ですからねー!」
サリヤを抱き起こす間もなく、待ちきれない女たちが我先にとミナトへ殺到した。
先陣を切ったのは、さっきの豊満な若妻だ。ミナトの首にするりと腕を絡め、上気した頬で、悪戯っぽく微笑む。
苦笑するミナトの唇を、若妻の唇がふさいだ。
周りの娘たちが、きゃあっと声を上げて笑う。
誰かが満ち足りれば、すぐに別の誰かが手を伸ばしてくる。
夜明けの気配すら忘れさせるような、甘く賑やかな夜が、途切れることなく続いていく。
かつて『元の世界』で、誰からも感謝されず、過労死寸前まで使い潰されていたミナトにとって――ここはまさに、夢のような桃源郷だった。
毎晩のように村の女たちが訪れ、朝まで肌を寄せ合って眠る。求められ、崇められ、愛される喜び。
普通の人間なら数日で倒れてしまうような夜の連続だが、この肉体に宿る桁外れの体力は、どれだけ求められても尽きることがなかった。
(……そういえば、今日でちょうど……一年になるのか)
幾重にも重なる女たちの温もりと、穏やかな寝息に包まれながら、ミナトの意識は――あの日、この世界に『落ちてきた』瞬間の、凄惨な光景へと遡っていった。
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