姫様、国の内情を知られます。
「俺の名はユウタ。テナー王国騎士団長。おまえを倒しに来たんだ!」
ユウタはどこからか剣を取り出すと、
「待て!」
「命乞いか?」
「自己紹介文は家の中だ。取って来ていいか?」
「自己紹介文?」
「大事なことを言い忘れたら後で私が後悔するからな!」
「いや、そんなに大事?」
「安心しろ。言い終わったら貴様は用済みだ」
オカリナはそう言うと、背中から漆黒の巨鎌を引き抜いては歓喜する。
「それにしても。ようやく。ようやくだ! やっと戦える!」
「え?」
「私が人間を根絶やしにしようとすると姫様が怒るからな!」
「姫様って古の悪魔姫だよな?」
「そうだ!」
「その悪魔姫が人間を殺すなって言ってるのか?」
「人間だけではない。生きてる人を殺したらダメっておっしゃられている!」
「悪魔姫が? なんで?」
「死体の処理が面倒くさいからだ!」
「あー、なんとなくわかるかも」
「何っ、貴様は姫様のお気持ちがわかるのか!」
オカリナは少し驚くと鎌を背中におさめた。
「戦わないのか?」
ユウタはその様子を見て尋ねると、
「自己紹介が先だからな!」
「まさかのループ!?」
そんな話をしていると、
「オカリナ。夕張メロン持って来たけど食べる?」
千尋が訪ねて来ては、
「夕張メロンだと!? お前、転生者なのか!」
ユウタは思わず叫んだ。
「そうだけど?」
「よく、魔族の国で暮らしていけたな」
「だって、姫様も転生者だもん」
「あー......」
この一言でユウタは理解した。
村の景観。
ハローワーク。
生き物を殺さない文化。
道理で妙に日本っぽいわけだ。
「とりあえずメロン食べたい」
オカリナが言うと、
「そうだよね。中入っていい?」
「かまわんぞ。おい人間。貴様にもメロンを食べさせてやろう。うまいぞ」
オカリナの家の中。
「それにしてもオカリナさぁ。どんだけ姫様が好きなわけ?」
千尋は家のあちこちにある姫様グッズに呆れていた。
ぬいぐるみからはじまり、ポスター、肖像画、木彫り人形。
棚にはミナエの笑顔を描いた絵皿まで並んでいる。
「これはまだ一部だぞ」
オカリナは胸を張った。
「まだあるの!?」
「地下室に保管している」
「地下室!?」
ユウタも思わずツッコんだ。
「ちなみにこれは姫様がこの前使っていた記念水ボトル」
「空き瓶じゃねえか!」
「姫様が初めて毒キノコを収穫した時の光景のパズル十万ピースはこれから作成する」
「もっと簡単なのを買えよ」
「姫様がこの前昼寝した時の枕カバー」
「犯罪臭しかしない!」
ユウタは叫んだ。
しかしオカリナは真顔だった。
「何が問題なのだ?」
「全部問題だよ!」
「姫様の歴史的資料だぞ?」
「歴史的資料の範囲がおかしい!」
すると千尋が夕張メロンを切りながら言った。
「というか姫様グッズなんかどこに売ってるの?」
「女神がたまに家に来てな。教えてくれるんだ」
「多分、偽物だよ?」
「なにっ!?」
「このボトルにメイドインチャイナって書いてる。なんで姫様がそんな物持ってるのよ。そもそも姫様はガラスのコップ使ってなかった?」
「そう言われたら......」
「それに姫様の枕カバーはいつもふんわりタイプだよ?」
「そう言われたらこれはただの布だな」
「このパズル、多分ピースが最初から足りないんじゃない?」
「ぐぬぬ。女神に騙されたか」
オカリナが悔しがると、ユウタは千尋に聞いてみた。
「千尋さんも詳しすぎない?ってのと、女神が詐欺商売してるのか?」
「前回八犯ってこの前言ってたよ」
「つまり、ここは悪魔姫が善政を敷いて、神が犯罪を犯してる世界ってこと?」
「そうね。強いて言えば破壊神が毎日備品を壊してうどん屋の店主に怒られてるね」
「どんな世界なんだよ。ここ!」
「慣れるよ。ちなみに皆アレに出場するの?」
千尋の問いにオカリナは首を横に振った。
「あー、アメリカ横断ウルトラクイズ? 私は飛んでいけるから興味はなかったな」
逆にユウタが食いついた。
「何それ?」
「コンダクタ皇国の海岸線に漁業街作ったみたいなんだけど、うちには海ないじゃん。それで日本で人気あった番組を真似して、村のイベントとして企画したみたいよ?」
「なんでアメリカなんだよ」
「コンダクタ領の新名と漁業街の名前をどうするか相談されて、企画のためにアメリカとかニューヨークにしたみたい」
「そんなことあるの!?」
「他にアマゾンとか、メキシコとか新しい街を作ってるみたいよ?」
「とりあえず知ってる名前を、とりあえず街の名前にしておこうみたいな雑な考えはやめろ」
「だって姫様だもん。3個目くらいから適当につけてるに決まってるじゃない」
「千尋。姫様はそう見せかけて実は深い考えがあるに違いないぞ?」
「そうかなぁ? この前うんざりした顔をして群馬って命名しようとして七海に怒られてたよ?」
「まあ、名前はどうでもいいけど、旅費がタダで、さらにお小遣いがもらえて遠征できるのはおもしろそうなんだよなぁ」
「ちなみに、アメリカだかニューヨークには何かあるのか?」
「寿司が食べられるみたいよ?」
「いいなぁ。参加できるのかな?」
「で、気になっていたことあるんだけど」
千尋はユウタに聞いた。
「あなた誰?」
「俺はユウタ。テナー王国の密偵だ」
「えっ! 何、スターフィールドの内情探ろうとしてるのさ」
「あんたが勝手にしゃべってたんだろうが」




