今、神話が始まる!
領域の隅々にまで、温かく神々しい光が染み渡っていく。
「な、なんだ……一体何が起きてるんだ!?」
「空が……水が、きれいになっていくわ!」
ガリガリに痩せ細った老若男女が、呆然と動きを止めた。天から降り注ぐ光に目を細め、信じられないものを見るように空を仰ぐ。
その時、一人の老人が、泥にまみれた裸足のまま天に向かって両手を突き上げた。
「神々だ! 我々の苦しみをお聞き届けくださったのだ! 邪神を打ち破り、ついに我らの元へ降臨されたのだぞ! 皆の者、神々を称えよ!!」
邪神なんてどこにもいなかったが、極限状態の人々にそんな理屈は関係ない。老人の叫びに呼応するように、戸惑っていた人々も次々と声を上げ始めた。
「「「神々を称えよ……!」」」
「「「神々を……称えよ!」」」
「「「神々を称えよ!!」」」
最初は消え入りそうだった呟きが、やがて地を揺らすような力強い唱和へと変わっていく。
その勇ましい声の塊は、街の周囲に潜んでいた貧弱な魔物たちを震え上がらせた。得体の知れない神威に恐れおののいた魔物たちは、一目散に森の奥へと逃げ出していく。
「ああっ、魔物たちが逃げていくぞ!」
「神様が、私たちを守ってくださったんだ……!」
魔物が去るやいなや、民衆のボルテージは最高潮に達した。
友人や家族と手を取り合い、喜びのあまり踊り出す者。
その場に崩れ落ち、祈るように拳を握りしめて涙を流す者。
荒廃しきっていた世界に、初めて「希望」という名の狂熱が灯った瞬間だった。




